秋は月が綺麗に見える季節。
秋は、一年の中で、月が最も美しく見える季節です。
特に、中秋の名月と呼ばれる十五夜は美しく、ススキや、月に見立てた丸い団子を飾ったりと、この時期に月を愛でることは、古くから日本の文化として根付いてきました。
十五夜は、旧暦8月頃の満月の夜を指していて、現在の暦に置き換えると9月頭ぐらいから10月頭ぐらいの間の満月の夜にあたりますが、実は、この十五夜以外にも、あまり知られてはいませんが、十三夜(じゅうさんや)、十日夜(とうかんや)など、名月と呼ばれる時期が秋にはいくつかあるようです。
また、月にはスピリチュアルな力があるとも言われていて、占星術では、命や母性の象徴として捉えられています。月が綺麗な夜に、窓から夜空を眺めて、なぜかほっと安らかな気持ちになるのは、ひょっとすると、そんな月の不思議な力が働いているのかも知れませんね。
今回は、そんな月の美しい夜にピッタリの絵本を10冊選んでみました。
月に魅せられながら、ぜひ、穏やかな気持ちで絵本をお子さんに読み聞かせてあげてください。
月を愛でながらの読み聞かせに、ピッタリな絵本10選
どうして月にうさぎがいるの?
『つきのうさぎ』いもと ようこ/文・絵 金の星社
「どうして、月にはうさぎがいるの?」と、お子さんに訊ねられたら、ぜひ、こちらの絵本を読み聞かせてあげてください。
道端でたおれて今にも死にそうな老人に、動物たちは、それぞれ自分の特技を生かして取ってきた食べ物を分け与えますが、何の特技も持たないうさぎだけ、食べ物を見つけることが出来ません。そこで、うさぎがとった驚きの行動が、なんとも切なく、読んでいて衝撃的なお話です。
尊い心を持つ、このうさぎの物語を知れば、きっと、眺める月の印象もこれまでとは少し違ったものになるかも知れませんね。
絵本ならこんなことも出来ちゃいます。
『カロリーヌつきへいく』ピエール・プロブスト/作・やました はるお/訳 BL出版
ピエール・プロブスト/山下明生 BL出版 1998年11月
こちらは、「カロリーヌとゆかいな8ひき」シリーズの4作品目です。しっかり者のお姉ちゃんカロリーヌと、愛らしい動物たちの冒険も、舞台はいよいよ宇宙となります。有名なエクリプス博士のロケットに乗って、カロリーヌと動物たちは、宇宙で無重力を体験し、月で博士が命じた任務を遂行します。そんな時、どこからともなく宇宙人が現れて・・・。
主人公カロリーヌのモデルは、作者であるプロブストさんの愛娘さんだそうです。動物と話が出来たり、いろんな場所へ行ったり、現実世界ではなかなか出来ない体験を、カロリーヌを通してたくさん味わうことの出来るシリーズです。
子どもがロケットを運転できたり、月へ行けたり、動物と話が出来たり、ありえないことだらけだけど、そこが面白い。
なるほど、月はそうやって丸くなっていたのか!
『おつきさまはまあるくなくっちゃ!』ふくだ じゅんこ/文・絵 大日本図書
夜空に細いお月さまを見つけたおばあさん。「おつきさまは まあるく なくっちゃ」と、スープを作ったり、ピザを焼いたり、せっせとお月さまに料理を作って食べさせます。そのかいあって、お月さまは見る度まあるくなっていくのですが・・・。
どこか外国の絵本を思わせるような絵柄で、子どもたちをあっという間に引き込んでしまう、こちらの絵本。読むところは少なめで、とにかく絵にインパクトがあります。個性的な絵と秀逸なオチで、読み方次第では、子どもたち爆笑間違いなしの一冊です。
おばあさんと月の表情が面白いよな。
最後の月の絵が、何回見ても笑える。ぷぷっ。
これぞ、日本版ハロウィン。
『おつきみどろぼう』ねぎし れいこ/作・花之内 雅吉/絵 世界文化社
ねぎしれいこ/花之内雅吉 世界文化社 2009年07月
十五夜に、おばあさんがお月見だんごを作ってお供えをしました。「さあて、みんなの おだんごは どんなかな」おばあさんは、他の家のお月見だんごが気になって出かけていきます。そして、こっそりこっそりお月見どろぼうをするのです。
この絵本で描かれている「おつきみどろぼう」は、日本の年中行事であり、現在でもこのように家々を回り、お菓子をもらう風習が各地に残っているようです。まるで、ハロウィンのようですね。
お恥ずかしながら、この本を読むまで私は、こういった風習が日本にあることを知りませんでした。知っている方はどのくらいいるのでしょうか。秋と言えば、日本はハロウィンに沸いていて、渋谷の街をコスプレした若者たちが闊歩したり、ハロウィンパーティーをしている家(うちもそう。)なども多くありますが、このような日本の年中行事も大切にしたいな~と読んでいて思いました。
ぼくも、お月見どろぼうしてみたい。
お月見、家でもやったらいいのに・・・。
楽しそう!
ねずみさんの家のお月見がいいな。
あの大きさなら、パクパク食べれちゃう!
10ぴきのかえるシリーズ、安定の面白さ。
『10ぴきのかえるのおつきみ』間所 ひさこ/作・仲川 道子/絵 PHP研究所
間所ひさこ/仲川道子 PHP研究所 2009年09月
10ぴきのかえるたちは、お客さんをお迎えしてお月見をするために、すすきを取りに行ったり、お月見だんごを作ったり、せっせと準備を始めます。途中にちょっとしたトラブルが起きるのが10ぴきのかえるたちのお馴染みパターンですが、今回もそのようで・・・。
季節の本を探したい時に、「10ぴきのかえる」シリーズは大助かりです。夏祭りをしたり、冬ごもりをしたり、お正月をしたり、10ぴきのかえるたちは、いつもその季節の行事を自分たちなりの楽しみ方で楽しんでいるので、子どもたちも絵本を通して、その行事の楽しみ方を知ることが出来ますよ。
「ひっくりかえる」とか、「かんがえる」とか、
みんな、名前どおりの性格なんだよ。
お月さまにプレゼントをあげるには?
『おつきさまにぼうしを』シュールト・コイパー/作・ヤン・ユッテ/絵 文溪堂
シュールト・コイパー/ヤン・ユッテ 文渓堂 2007年03月
サルとワニとメンドリが空を見上げると、空の高い所に、お月さまがいました。3びきは寒そうなお月さまを心配して、それぞれ、ぼうしと手袋とマフラーをプレゼントしようと考えますが、どうすればお月さまの元へ届けられるのかがわかりません。そこへ、雲がお月さまの方へ流れてきて・・・。
自分たちの事だけではなく、他人を思いやれる優しさがこのお話の軸となっているので、読むと優しい気持ちになれる作品です。お月さまにプレゼントを贈る方法を一生懸命考える動物たちが健気で可愛らしいですよ。
月を見つめて誰かを思う素敵さ。
『おつきみピクニック』いちかわ なつこ/作・絵 ほるぷ出版
お月さまがまるくてきれいな夜に、森のかめの親子はお月見ピクニックに出かけました。途中、いろいろな動物と出会ったり、少しドキリとすることもありますが、苦労のあとの月の美しさはやはり格別なようです。
月を眺めながら、かめのお母さんが、遠くの砂漠にすむかめさんに思いを馳せるところが何とも素敵なお話です。月を眺めて誰かを思うなんて、まるで平安時代の和歌の世界のようですね。
カメさんみたいに、お父さんとお母さんと行けば、きっとこわくないよぉ。
独特な質感で、温かい絵が印象的な絵本。
『お月さまってどんなあじ?』ミヒャエル・グレイニェク/文・絵セーラー出版 あかね書房
ミハエル・グレーニェツ/泉千穂子 らんか社 1995年09月
「お月さまってどんなあじなんだろう。」ある日、気になったカメは、一番高い山に登ってお月さまをかじってみることにしましたが、小さなカメには届きません。そこでカメはゾウを呼びました。お月さまがひょいっと逃げるものだから、またまた届かず、ゾウはキリンを呼んできて・・・。
どこか、ロシアの昔話『おおきなかぶ』を思わせる流れに、子どもたちはわくわくするようです。
何の材質で描かれているのか、少し和紙のような、ざらついたタッチの絵が、物語の優しい雰囲気にピッタリ合っています。
読み聞かせの後に、お月さまがどんな味かお子さんに聞いてみると、面白い答えが返ってくる可能性大ですよ。
この絵本、保育園にもある!
先生が読んでくれたよ!
ばあばが作ってくれたスウィートポテトの味か、
塩のかかった手羽先の味かな。
この絵は、チップ〇ターのポテトチップスみたいだよね。
ほんとだ!
ザラザラしてそうな質感、確かにポテトチップスみたいだね。
じゃあ、やっぱり塩味かコンソメ味・・・?
受け継がれていく技術と情熱の物語。
『満月をまって』メアリー・リン・レイ/文・バーバラ・クーニー/絵 あすなろ書房
メアリー・リン・レイ/バーバラ・クーニー あすなろ書房 2000年09月
”ぼく”のお父さんは、満月の日にハドソンへ行って、手作りのかごを売っています。ぼくはいつも、一緒に連れて行ってほしいと頼みますが、お父さんは「もっと大きくなったらな」と言って、ひとりだけで売りに行ってしまいます。そんなある日のこと、9歳の誕生日を迎えたぼくに、お父さんが一緒にハドソンへ行くことを許してくれるのですが・・・。
こちらは、今から100年以上前にアメリカのコロンビア群の山間で、かごを作って暮らしていた人たちのことを描いた絵本です。月と直接の関係はありませんが、物語を読んでいると、かご作りへの静かな情熱と、儚げな月明かりとがリンクしているように感じられ、月と共に、伝統工芸の素晴らしさに気づける絵本ということで、今回10冊の中に加えさせて頂きました。
物語の題材が実在していた人たちであり、伝統工芸ということで、読んでいて、ずっしりと重く心に響く作品です。
高学年くらいのお子さんに読み聞かせると、いろいろな感想を持ってくれるのではないでしょうか。
途中で怒鳴ってきた男の人に、腹が立った!
なんで、あんなひどいことを言うの?
人って、自分のよく知らないものは、気味悪く思ったりして、受け入れがたかったりするんだよ。
残念だけど、どこにでも、あんな人はいるよ。
しっとりお月見も、いただきバスとネズミたちがすればこうなります。
『おつきみバス』藤本 ともひこ/作・文 すずき出版
こちらは、軽快なテンポが特徴的な「いただきバス」シリーズの第五弾です。
赤い空に、白い月と、色使いが何とも斬新で、作者さんのコメントによれば、「花札」を意識して描かれたのだそうです。言われてみれば、色合いの他にも、山やススキの絵が、花札らしい雰囲気で描かれているように感じられます。
内容は、大人から見ればいささかハチャメチャ過ぎるようにも思えますが、子どもは案外このテンポがお好みらしく、「そんなバカな~」と終始笑ってみていました。
絵本選びは、大人が子どもに読ませたいと思うものを選ぶのも良いですが、いくら大人がピンと来なくとも、子どもが自ら手に取って「面白い」と思えるものを、一緒に選んであげることも大事なような気がします。
まとめ:寝る前に読み聞かせをする習慣
いかがでしたか?月を食べたり、月へ行ったり、月のうさぎの由来であったり、月にはいろいろな楽しいお話がありますよね。
家事や共働きなどで、お子さんとなかなかゆっくりと触れ合う時間が取れないご家庭は、ぜひ、寝る前の5分を絵本の読み聞かせに使うことから始めてみてください。
絵本の読み聞かせは、月同様に、読む者と聴く者の心を癒し、落ち着かせてくれる効果があると言われています。月の出る夜、寝る前に絵本を読み聞かせてあげることで、一日を穏やかな心持で締めくくることができ、次の日のモチベーションにも、きっと、繋げていけるのではないでしょうか。