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朝読書におすすめの15冊



■ 読書は心の安らぎ ■



 

最近、朝の会前の10分を使って朝読書をしている学校が増えているようです。毎朝のことなので、何を読むか頭を悩ませている生徒さんもいるのではないでしょうか?私が学生の時にもこんな取り組みがあれば良かったのに・・・と羨ましく思う反面、学級文庫を手に取って、毎朝、嫌々ページを捲って読んだつもりになっている生徒さんを見ると何とも言えない気持ちになります。

みなさん、読書は心の安らぎですよ!学生の今だからこそ、朝なんて清々しい、すてきな時間に読書が出来るんですよ!

読みたくもない本を手に取って、ペラペラとページだけを捲る10分間は苦痛以外のなにものでもないでしょう。それで「読書が嫌い」、「向いてない」と読むことから避けるようにならないでほしいです。

朝読書の本選びの極意をここにお知らせします。

 



■ まずは10ページ読んで「合う」、「合わない」を見極める ■



なんの興味もそそられない本を嫌々手に取る前に、例えば、学校の司書さんや、先生、本をよく読んでいる大人に

「おすすめの本はありますか?」

と聞いてみてください。

そして、自分はどんなことが好きか、何に興味を持っているかなど、自分について話してみてください。担任の先生や自分に近い大人であれば、あなたの性格が良くわかっているので、あなたが好きそうな本を考えておすすめしてくれるはずです。そのおすすめしてもらった本の表紙が、例え地味であっても、

ページを開いて10ページは読んでみることをおすすめします。

10ページ読んでみて「合わない」と思ったら、読むのをやめていいのです。先程も言いましたが、無理をして読むのは、苦痛以外のなにものでもありませんから。

これから、朝読書の10分間にピッタリの本を15冊ご紹介します。皆さんの本選びのご参考になれば幸いです。まずは公共図書館や学校図書館で本を借りて、10ページ読んでみてください。その10ページでは物語の掴みにもならないかもしれませんが、自分の「読みやすい文体」か「そうでない文体」かは、10ページ読めば大体わかります。

ただし、間違ってもその10ページで、「面白くない本」とは判断しないでくださいね。ページ半分は読まないと「面白い」、「面白くない」の判断はつきません。

公共図書館にも学校図書館にも、「貸出期限」というものがあります。大体、二週間程度でしょうか。朝の10分間だけの読書であれば、この期限内に読み切れるか心配ですよね。今回紹介する15冊は、どれも読みやすい本ばかりです。おそらく、二週間あれば読み終えることが出来ます。

朝読書の時間を使って読んでみて、「面白かった!」「また読み返したい!」と感じられる本に出会えたなら、あなたも読書好きの仲間入りです。

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■ 朝読書におすすめの15冊 ■



SF、ファンタジー、ミステリーなど、全てのジャンルが詰まった名作!

『ボッコちゃん』星 新一/著 新潮社

短編集といえば、星 新一さん。「エヌ氏は・・・」と、物語の中に固有名詞は一切出てきません。出てくる登場人物はイニシャルで書かれています。一つ一つの話は5~6ページ程度でとても短いのですが、この短い話の中に起承転結がちゃんと収まっていて、大人になって読んで改めて凄いな~と思いました。最近は、「意外な結末」ブームで、少ないページで「そうきたかっ!」と思わず声が漏れてしまうような小説を店頭でよく目にしますが、星 新一さんの作品はそれの元祖といえるのではないでしょうか。

そういえば、一昔前にどこかのテレビ局で『東京ストーリーランド』という、面白いストーリーを募集して優れている作品はアニメにして採用する素人参加型の番組をやっていて、その番組にしょっちゅう星 新一さんの作品が採用されていたような…。『ボッコちゃん』の中にも収められている『殺し屋ですのよ』なども採用されていて…あれって、著作権とかどうだったのでしょうね。

せいとさんの声
せいとさんの声

意外に読みやすかった。小説をあまり読まない自分でも読めた。(生徒さん談)

 
 
いろんな登場人物の視点から物語が見えてくる!

『きみの友だち』重松 清/著 新潮社

この小説は、最後まで読むとその構成の素晴らしさにもう一度読み返したくなる作品です。恵美という少女とその周りの子どもたちを主人公に10の話に分けられていて、章ごとに主人公が違うので短い朝読の時間に読みやすく、内容も中学生にドンピシャです。「いなくなっても一生忘れない友だちが一人いればいい」というフレーズが印象的で、心揺さぶられます。いろいろな「友だち」の形があっていいんですよね…。

重松さんの小説は、堅苦しくない、とても読みやすい文体なので、分厚く見えても一度その世界に入ってしまえばサクッと読めてしまうものが殆どです。朝読の時間に『きみの友だち』を読破して、他の作品にもチャレンジしてみると良いかも知れません。

 

まるで「現代版アラビアンナイト」のような隠れた名作!

『不思議を売る男』ジェラルディン・マコーリアン/著 偕成社

エイルサは母親と二人で暮らしていますが、図書館で出会った男がひょんなことから母親の古道具店で働くことになり、生活は一変します。最初は怪しいこの男を不審に思っていたエイルサ達ですが、この男の巧みな話術が、客を古道具店にある品物のとりこにする様子を目の当たりにして、エイルサ達自身も男の話に引き込まれていきます。

連作短編小説であり、古道具店の品物の名前がそれぞれの章についています。

男が語るそれぞれの品物にまつわる物語は、嘘か真か…。品物によって、ファンタジーな話であったり、ホラーな話であったりと、章ごとの印象はがらりと変わります。世間では、この小説を『アラビアンナイト』の現代版と言われているとかいないとか。

 

美しい言葉が随所に散りばめられたファンタジーの世界!

『雨ふる本屋(シリーズ)』日向 理恵子/著 童心社

ルウ子が雨に降られてやってきた図書館で出会った不思議なカタツムリ。その動きはどこかルウ子を道案内しているようで…。

2018年11月現在、シリーズ4作品が出ているファンタジー小説です。これまで紹介してきた作品のように章ごとに話の内容が区切られているわけではありませんが、柔らかな文体で、頭の中でこの世界を想像しやすく、短い時間でも物語に入り込みやすい作品です。また、全シリーズ、吉田 尚令さんが挿絵を担当されていて、物語ととても合っていて可愛らしいです。

 

手短に騙されたい人はこのシリーズ!

『5分後に意外な結末(シリーズ)』学研プラス ※著者はシリーズにより異なる

この『5分後に・・・』から始まり、『5秒後に・・・』や『5億年後に・・・』なんていうシリーズまで出てしまっている人気シリーズです。タイトルの『意外な結末』の部分もシリーズによっては『恋の結末』であったりします。5分後という、そのタイトルからして朝読にはもってこいな匂いがプンプンしますが、ゴシック体のような自体で書かれているので明朝体で書かれた小説に読み慣れている人は若干読みづらさがあるかも知れません。どの話もちゃんとオチが付いていて、騙されたと感じる人もいるでしょう。手短に騙されたい人は、このシリーズを読むことをおすすめします。

 

読みだしたら癖になる、不思議な世界の入り口!

『ショートショート千夜一夜』田丸 雅智/著 小学館

現実世界から引き離されたい人にはこちらがおすすめ。

多魔坂神社で開かれるお祭りは、不思議なことだらけ。欲しいと念じたものが出てくる「ヒモくじ屋」、夜店ですくった人魚がどんどん成長していく「人魚すくい」、降り注ぐ雨を自分のものにする「雨ドーム」等、現実世界を一歩踏み外した先にある妖の不思議な世界の入り口。全20編のショートストーリーが収められています。

作者の田丸雅智さんは、2012年に『海酒』で樹立社ショートショートコンテスト最優秀賞を受賞している新世代ショートショートの旗手です。現在ではショートショート大賞の審査員長を務めるなどの活動もされている凄い方なのです。ショートショートでありながら、読み始めた途端に、魅惑的であり幻想的な世界に連れて行ってくれる作品ってそう無いと思います。この世界、読み出したら癖になります。

 

絵本では語り切れなかった二人の心情に涙!

『小説 あらしのよるに』きむら ゆういち/著 小学館

幼い頃読んだ絵本って、大人になってもずっと思い出の中にあって、大人になってからその絵本に出会ってページを捲ると、幼少の頃の思い出だったり、読んでもらった時のくすぐったい様な温もりだったり、その頃の空気感のようなものが一緒に思い出されたりしませんか?そんな絵本の小説版が出たとしたら、きっと一度は読んでみたいですよね。

絵本は絵で情報が伝わるので、文で多くを語る必要は無いですが(むしろ多く語ると面白くなさそう)、小説は語らなければ読み手に何も伝わりません。そんな、絵本ではあえて語らなかったエピソードであったりガブとメイの心情であったりがこの作品には溢れています。絵本を小説にした必要性に納得の一冊です。元が絵本なので、とても読みやすいです。

せいとさんの声
せいとさんの声

表紙に魅かれて借りました。まさか、動物が主人公の話とは思わず・・・。
絵本が基なので、文章がとても読みやすかった。(生徒さん談)

 
 
小説で読むことの良さにも気づいてほしい!

『小説 注文の多い料理店』宮沢 賢治/著 新潮社

都会から来た若い紳士が、山奥で一軒の西洋料理店を見つけます。その名も「山猫件」。彼らはそこで休憩をすることにしますが、何やらこの店様子がおかしいのです。やたらめったら、札で客に対して注文ごとが書いてあるのです。

『注文の多い料理店』は、宮沢賢治が生前に刊行した唯一の童話集です。絵本でも様々な出版社から多くの絵師によって描かれてきた作品ですが、中学生の方にはぜひ小説で読んでほしいです。絵本には絵によって感じ方が変わるところが面白かったりしますが、小説で読むと色々な気づきがあります。例えば、「色」。「い瀬戸の煉瓦で・・・」、「文字でこう・・・」、「いろのペンキ・・・」、「すぐ横にい台が・・・」、「い瀬戸の塩壺・・・」、「いろのフォークと・・・」この物語には沢山の色が出てきます。この作品における、この「色」の効果は絶大で、文字だけを追って読み進める小説だからこそ、この「色」を読み手それぞれが想像でき、物語にぐっと奥行きが生まれるのではないでしょうか。都会から来た若い紳士が滑稽に見えて笑えて、でも、この作品を通して実は宮沢賢治が伝えたいことがあるんですよね。

ぜひ、小説にチャレンジしてみてください。

せいとさんの声
せいとさんの声

先生に絵本と一緒に勧められた。小説はちょっと読みづらかった・・・。(生徒さん談)

 
 
読後感が良い!日常の中のミステリー

『晴れた日は図書館へいこう』緑川 聖司/著 ポプラ社

読書が大好きなしおりは、憧れのいとこである美弥子さんの働く図書館へ通うことが日課です。その図書館で起こる、本が絡んだ様々な事件が章ごとに綴られているこの作品。それらは大きな事件ではなく、日常の中に潜む謎ですが、どの話も本を通して人の温かさが伝わってきます。特に、60年も前に貸し出されていた本を少年が返却に来る話が、本と人のつながり、人と人のつながりを感じられて素敵でした。「どういうことかな?」と読み進めていくうちに、気づけば暖かな木漏れ日の中にいる。そんな作品です。近所にこんな図書館があったらいいのにな~なんて、読書後思いました。

せいとさんの声
せいとさんの声

図書館が好きなので、図書館が舞台の、この物語の柔らかい雰囲気そのものが好き。(生徒さん談)

 
 
昔話のあの人が法廷で裁かれる?!

『昔話法廷』NHK Eテレ「昔話法廷」制作班/編 金の星社

こんな裁判が未だかつてあったでしょうか。この物語の裁判で今まさに裁かれようとしているのは、三匹の子ブタの三男であるトン三郎です。裁判員の目線で話は進み、彼が有罪か無罪か現代の法律で裁きが下されようとしています。争点は正当防衛かどうか―・・・。章ごとに裁かれる被告人が変わりますが、昔話の登場人物が被告人であることはどの章も同じです。

NHKのEテレの人気番組が小説になったものですが、出てくる登場人物たちにププッと笑いながら、裁判員制度について理解を深めることが出来る、なかなか他にない小説です。朝読書の短い10分という時間で知識が深まればこの上ないですよね。2018年11月現在、シリーズは3巻まで出版されています。どの巻から見ても楽しめるので、目次を見て好きな昔話から選んでみるのも面白いかも知れません。

せいとさんの声
せいとさんの声

ブックトークで聞いて、借りてみた。視点を変えて見ることって大事!(生徒さん談)

 
 
まるで、味わい深い寓話集を読んでいるよう?!

『キノの旅』時雨沢 恵一/著 KADOKAWA

ライトノベルの中で一番朝読向けなのがこの作品ではないでしょうか。

キノと喋る二輪車エルメスの旅の物語です。一人と一台(?)は旅の途中で摩訶不思議ないろいろな国に立ち寄ります。「人の痛みが分かる国」、「多数決の国」、「大人の国」、「平和な国」など、それぞれ国名と呼べるものは無く、国の持つ性質で「〇〇の国」と表現されています。これらの中には、社会風刺したものなどもあり時にドキリとさせられますが、どの国でもキノが深入りすることなく次の国へと旅を続けているので、読み手側も色々な感情を持ったまま次の話(章)へ進むことになります。国と国の間には貿易や繋がりは一切なく、国の周りは城壁で覆われていて、先にも述べた通り、国はそれぞれ独自の性質を持っています。その為、例え前章の気持ちを引きずったまま、次の章へ進んでも、次が全くタイプの違った国だったりするので、いつの間にか先程の気持ちは払拭し新たな話(章)にのめり込んでいけるわけです。一話完結型なので何話から(何巻から)読んでも楽しめる作品です。

せいとさんの声
せいとさんの声

この世界観が好き!挿絵も可愛い。(生徒さん談)

 
 
3分間に一回、騙されよう!

『ラストで君は「まさか!」と言う(シリーズ)』PHP研究所/編集 PHP研究所

朝読書のために作られた?と思うほど短時間で読めるのがこちら。30話収まっていて、1話が3分程度で読み切れるように作られています。内容はゾクッと来る話があったかと思うとユーモアのきいたものやSF物もあり、この一冊でいろいろなジャンルの話が楽しめます。2018年11月現在、このシリーズは6巻まで出ていて、それぞれ収められている作品のタイトルがそのままサブタイトルになっています。自分の好きなジャンルがまだよくわかっていなかったり、短い時間で物語のオチを知ってスッキリしたい方におすすめです。自称「読書嫌い」の方は、小学校高学年や中学一年生の間にこういった、オチのあるショートストーリーからスタートして、中学三年生になる頃にはもっと深みのある作品を読められるようになるのが理想かな~と思います。

短編集なのでこちらも、どの話、どの巻から読んでも楽しめます。

 

児童書だと侮れない!全ての物語に、深みのある短編集

『タイムストーリー(シリーズ)』日本児童文学者協会/編 偕成社

5分間、1時間、1日、1週間といった、どの巻も時間にまつわる物語で構成されています。「どの時間にしようかな~」などと、中身を見ないで選んでも楽しいですね。先に紹介した『意外な結末』シリーズや『ラストで君は・・・』シリーズで書かれている字体(ゴシック体?)が慣れなくて読みづらい方は、明朝体なのでこちらの方が読みやすいかも知れません。一巻に5話程度物語が収められていますが、どの話もストーリーがちゃんとしていて、昨今の「衝撃的なオチばかりを求め過ぎている学生」にいい意味で媚びていない短編集だな~と感じました。最後の著者紹介ページを確認したところ納得致しました…書き手の方々、なかなかすごい方が揃っていらっしゃいます。どうりで・・・。

巻によって、表紙の絵は描いた方が異なるので、印象がガラリと違いますよ。

 

読むときっと胸が熱くなる!

『心に響く小さな5つの物語』藤尾 秀昭/著 致知出版社

泣けます。淡々と実話を綴っている文体が、なぜでしょう、余計じわっときます。本の薄さや1ページの字数から言って10分程度で読み切れる作品ですが、何度も読み返したくなる為、10分では読めません。特に5話目の小学生とその担任の物語である「縁を生かす」は、読んでいて心が洗われるようでした。イチローが小学生の時に書いた作文、一話の「夢を実現する」も、本気になることってこういうことを言うんだな…と読後、何とも言えない感情になりました。同著者の『小さな人生論』シリーズの中から、選りすぐって選び抜いた5話がこの中に収められているので、他の話もとても胸が熱くなる実話ばかりです。

 

一話ごとでも楽しめて、全話通して読めば、じんわり余韻も楽しめる!

『死神の精度』伊坂 幸太郎/著 文藝春秋

最後はがっつり小説です。近々死ぬ予定の人を「可」(予定通り死亡させる)であるか「見送り」(予定を変更して天命を全うさせる)であるか判断していく死神(千葉)の物語です。連作短編集ということで、どの話も一貫して「死神が死神という事実を隠して、死ぬ予定の人に接触する」という点は変わらないのですが、一話ごとに、恋愛要素がはらんでいたり、まるで推理小説を読んでいるかのような回があったり、話の軸は変わっていないのに全く別の物語を読んでいるような感覚にさせてくれます。しかし、そこは伊坂さんの作品。この作品も最後の「死神対老女」を読んで驚かせてもらいました。あまり言うとネタバレになってしまうので控えますが、「死神」だけに、時間の流れが人間と違うのです…。

この作品をきっかけに、他の伊坂作品にもチャレンジしてみてはどうでしょう。伊坂さんの作品は、Aの作品の重要人物がBの作品ではちょい役だったり、「あれ?この人、あれにも出てた!」なんて身内にあったような感覚になれて楽しいですよ。(この作品の主人公である死神、千葉も別の作品に出てきます。ぜひ、他の作品の中から見つけてみてください。)



この中に気になる作品はあったでしょうか?興味を持った本があれば、学校の図書室や近隣の図書館で、ぜひ、探してみてください。

(※記事を書きながら、あれもこれもと思い浮かんだこともあり、紹介した順番は特に意味ありません。)

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