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中学生・高校生必見!司書が選ぶ、10代が読むと心に響く本 10選

「10代のうちに読んでおけば良かった~!」と思う、大人の読書

大人になると、家事や仕事が一日の大半を占めてしまう為、なかなか読書の時間が持てませんが、だからこそ、読書をしている時間が貴重な息抜きの時間であり、楽しみであったりします。
そんな、気ままな読書人生を送っている大人から、10代である皆さんに言っておきたいことがあります。
それは、10代の今だからこそ、心に響く、心を揺さぶられる本があるのだということです。児童文学でも大人が楽しめる本は沢山ありますが、同じ本でも、多感な時期に読むのと、ある程度を経験した大人になってから読むのとでは、読んだ印象が全く違います。私自身、「この本、10代のうちに出会っておきたかったな~。」と思う本の多いこと多いこと。
日中はまだまだ温かく、冬がそこまで来ていることを忘れがちですが、暦の上ではすっかり秋になりました。
普段読書をしない人でも、ふらっと書店に立ち寄り、カフェや自宅で読書を楽しんでしまうのが、この季節の凄いところ。

この機会に、ぜひ、10代だからこそ、楽しめる読書をしてほしいと思います。

10代が読むと、心に響く本 10選

 

社会の荒波に揉まれる前に、読んでほしい!

『裏庭』梨木 果歩/著 新潮社

こちらは、「バーンズ屋敷」の秘密の裏庭に迷い込んでしまった少女の物語です。
後でご紹介する『西の魔女が死んだ』が、悩める少女の成長を描いたヒューマンドラマ的な作品なら、こちらの作品は、少女が抱える現実世界の問題とファンタジーの世界が交錯しながら、少女の成長を描き上げた、冒険ファンタジーの要素が強い作品です。
ファンタジーですが、13歳の主人公が抱える悩みや葛藤する姿が丁寧に描かれていたり、現実世界と裏庭世界との繋がりが物語に奥行きを与えていたりと、美しいだけではない重厚感のある話になっています。
『はてしない物語』『ナルニア国物語』など、外国のファンタジー文学が好きな人は、読み進めやすいでしょうし、物語後半、この作品で著者が伝えたいことが見え隠れするようになった頃には、すっかり梨木ワールドに引き込まれてしまっているのではないでしょうか。
同年代なら、きっと、読んでいて辛くもありますが、だからこそ、ずっと心に残る作品となるはずです。

せいとさんの声
せいとさんの声

がっつり「ファンタジーもの」で思ってた話と違ったけど、裏庭世界が現実とちゃんと関りを持つ部分があって面白かった。

 

せいとさんの声
せいとさんの声

ただ、わくわくするだけの冒険ファンタジーではないところが良かった。

 

悩める少女の再生物語

『西の魔女が死んだ』梨木 果歩/著 新潮社

こちらは、学校を不登校になってしまった少女が、自然に囲まれた祖母の家で、「魔女修行」として、ひと月余りを過ごすお話です。
自然と共存したり、規則正しい生活を送ることは、日々丁寧に過ごすことと直結しています。少女は「西の魔女」こと祖母とそうやって過ごしていく中で、生きるヒントを沢山学んでいくのです。
この物語の中には、精神的に張りつめている時に、心の支えとなる言葉が沢山散りばめられているので、ぜひ、悩み多き10代の皆さんに読んでもらって、それらの言葉を、忙しない世の中を生きていく上でのお守りにしてほしいと思います。

せいとさんの声
せいとさんの声

すごく、ためになることがたくさん書いてある話だった。
おばあさんとの別れは、読んでいて切ない・・・。

 

『西の魔女が死んだ』は、他の記事でも紹介しています。
司書が選んだ読書感想文におすすめの25冊

 

風のように過ぎ去るからこそ、全力疾走!

『一瞬の風になれ』佐藤 多佳子/著 講談社

こちらは、長年サッカー部に所属していた新二が、幼馴染みであり天才的スプリンターの一ノ瀬と一緒に陸上部に入ってインターハイを目指していく物語です。
スポーツものは苦手という人も、読まず嫌いはやめて、ぜひ、一度読んでみてください。どの登場人物もキャラが立っていて、読み進めていくうちに、まるで少年漫画を見ているようにサクサクと読め、どんどん面白くなっていきますよ。
たくさんある「中高生の部活もの」の中でも、この物語は、特に主人公の思いが前面に出ていて、読んでいると、まるで、新二がすぐそばにいるような感覚になります。一文一文が短い文章で構成されていることも、新二の独り言を聴いているようです。
社会人になると、学生の頃と同じような仲間を作るのはなかなか難しいものです。苦楽を共にして、同じ高みを目指して打ちこんできたからこその、友情なんですよね。
社会人になるとなかなか手に入らないからこそ、学生のうちに読んでほしい作品です。

せいとさんの声
せいとさんの声

せっかく部活に入っているから、心を入れ替えて頑張りたい!

 

せいとさんの声
せいとさんの声

とても読みやすく、3巻ともあっという間に読めた。

 

読むとわかる、「いちご同盟」の意味。

『いちご同盟』三田 誠広/著 集英社

こちらは、生きることを悩んでいた主人公・良一が、野球部のエースである徹也を通して、余命幾ばくもない少女・直美と知り合うことで生と死について深く考えるようになる作品です。
「可能性がある人がうらやましい。自殺のことを考えるなんて、贅沢だわ」読んでいると、直美のセリフが胸に突き刺さります。3人の若者たちが互いに「生きること」について一生懸命考え、関わり合う様子から、15歳の危うさであったり、煌めきを感じずにはいられません。
大人になると、どうしても親目線になって読んでしまうので、一度は10代のうちに読んでおいてほしいです。主人公たちと同じ10代だからこその、読んでいて溜め息が出るあの感じを、ぜひ、味わってください。
そして大人になって再読すると、きっとまた違った印象を抱くのではないでしょうか。
悲しくもあるけれど心が洗われる、そんな小説です。

せいとさんの声
せいとさんの声

とても考えさせられた話だった。
生きることを自分から投げてはいけない。

 

この物語に、桐島という人物は登場しません。

『桐島、部活やめるってよ』朝井 リョウ/著 集英社

こちらは、バレー部のキャプテンである桐島が部活を辞めたことをきっかけに、同じ高校の生徒たちへ静かに波紋が広がっていく様子を描いた作品です。ですので、桐島君は名前だけの登場であり、物語上では姿を現しません。
学校という狭い世界でのお話なので、大人が読むと、「懐かしいな~」で終わってしまうところ、現役10代が読めば、きっと感じることは多いはず。細かい心理描写が多く、スクールカースト的なものだったり、それぞれが抱く悩みであったりと、著者の視点が高校生そのものです。著者が10代の時に書いただけあって、高校生たちの心の内がとてもリアルに描かれているあたり、さすがだな~と思いました。
10代だからこその面白さがある作品です。

せいとさんの声
せいとさんの声

まるで、どこかの学校の日常を盗み見ているようなリアリティーだった。

 

せいとさんの声
せいとさんの声

高校生が書いた話と聴いて、驚いた。
でも、「だからかっ!」とも思った。

 

スポーツって、いいですね!

『バッテリー』あさの あつこ/著 角川書店

父親の転勤を機に、天才ピッチャーの巧は、祖父のいる田舎に引っ越すことになります。そこで心優しいキャッチャー豪と出会い、互いに認め合った二人はバッテリーを組むことに。
一巻には、自らの才能に対する自信に満ち溢れている、大人びた少年・巧と、優しさが溢れている少年・豪、この二人の出会いが描かれています。シリーズはまだまだ続くので、この一巻は物語のほんの序章に過ぎません。
物語を通して、巧の心が少しずつ変わっていく様子や、巧の周りにいるとにかく温かい人たちが、読んでいて心地よさを感じます。野球のことはさっぱりわかりませんし、学生時代にスポーツに魂を燃やした経験は一切ありませんが、それでも、「スポーツを通した友情ってなんかいいな~」と思う自分がいました。前の本の紹介でも言いましたが、やはり、苦楽を共にした友情は揺るぎないですね。

せいとさんの声
せいとさんの声

スポーツものは気が向かなかったけど、読むと、たちまちハマってしまった。
豪のような友達が欲しい。

 

杉原、あなたの青春はかっこいい!

『GO』金城 一紀/著 角川書店

こちらは、在日三世である主人公・杉原の青春を描いた作品です。
差別にもやもやしながらも、恋愛に悩み、仲間と青春を謳歌する様子がテンポよく描かれているので、読んでいて重過ぎず、爽快感すら覚えます。「暗闇を知らない奴に光の明るさは語れない」など、喧嘩が得意で、小賢しい主人公から繰り出される熱いセリフは、どれもはっとさせられるものばかりです。
メディアやSNSばかりに踊らされず、杉原の目や心を通して、10代のうちから広い世界を見てほしいと思います。
ちなみに、映画化もしていて、こちらも小説の世界観を崩すことのない良作なので、おすすめですよ。

せいとさんの声
せいとさんの声

この話をきっかけに、金城一紀さんの本を読破!
この爽快感は、クセになる!

 

剣道がしてみたくなる!

『武士道シックスティーン』誉田 哲也/著 文藝春秋 

勝ちにこだわる香織と、マイペースな早苗。こちらは、そんな、剣道に対する姿勢が正反対の二人が織りなす青春物語です。
剣道をやったことのない人が読んでも、出てくる登場人物や展開の面白さで、あっという間に武士道の世界へ引き込まれてしまいます。ライバル関係であった二人が、互いの思いを知ってわかり合っていく中で、心身ともに成長していく様は、とても爽やかに読むことができ、読後感も心地よいです。
大人になると、こういう青春がとにかく羨ましいので、まだ可能性のあるうちに、10代の皆さんには、ぜひ、わくわくしながら読んでいただきたいです。

せいとさんの声
せいとさんの声

二人の関係だけじゃなく、二人を取り巻く、周りの人たちのキャラも好き。

 

今、この時の友情を大切に。

『スタンド・バイ・ミー』スティーブン・キング/著 山田 順子/訳 新潮社

こちらは、12歳の少年たちが、それぞれの思いを胸に、死体探しの冒険に繰り出す物語です。
親から虐待を受けていたり、世間からの風当たりが強い境遇にあったり、実に重い悩みを抱える少年たちが、悪友の前ではただの馬鹿になれるのを見ていると、彼らにとってこの仲間は、とても貴重な存在なんだな、と思わずにはいられません。特に、主人公にとってのクリスの存在は大きかったのだろうと思います。主人公の小説を書く才能を褒め、自分たちと同じ職業訓練コースへ行くべきではないとクリスが説得するシーンは何度見ても心打たれます。
汽車に追われて線路を走る映像であったり、ベン・E・キングのテーマ曲であったり、今は亡きリバーフェニックスの熱演であったり・・・映画の印象がなにかと強すぎるこちらの作品ですが、小説は少年たちの心情が細かく描かれているので、また別の良さがあっていいですね。
わたしはこの十二歳のときの仲間たちのような友人は、その後ひとりももてなかった。」大人になった主人公の言葉がとても印象深いです。振り返ると、確かに、この時期の友達は特別であり、必ずしもずっと続いていくものではないのかも知れません。
歩む進路が違うだけで、休みが合わせずらくなり、そのうち疎遠になってしまうなんていうことは、よくあることです。
だからこそ、人は、戻れないあの頃に思いを馳せ、ノスタルジックに浸るのではないでしょうか。

せいとさんの声
せいとさんの声

こういう友情に憧れる。自分も友達と旅に出たい・・・。

 

張り巡らされた伏線を回収する時の、爽快感を味わって!

『穴HOLES』ルイス・サッカー/著 幸田 敦子/訳 講談社

こちらは、無実の罪で、強制収容所のような施設に放り込まれ、毎日ひたすらに穴掘りをさせられている少年スタンリーの物語です。穴を掘っている理由や、明らかになって行く過去など、物語が進むにつれてわかってきた頃には、もうページをめくる手が止まりません。様々なことが絡み合って伏線が張り巡らされているので、この場で多くは語れませんが、10代のうちに読めば、この小説が読書好きのきっかけになるなんてことも、あるかも・・・と思える秀逸な作品です。
後半の伏線回収のたたみかけが素晴らしいですよ。

せいとさんの声
せいとさんの声

と、とにかく凄いっ!読んだ後の読後感が半端なく爽快!

 

 

10代だからこそ、本を読もう

いかがでしたか?
どの本も、思春期の不安定に揺れ動く感情や、がむしゃらに走る10代を丁寧に描いているので、主人公に共感しやすく、大人が読むより感情移入出来るかと思います。
言葉にできない胸の高鳴りを、これらの本を通して感じて頂けたら嬉しいです。

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