目次
- 1 春にぴったり、花の絵本
- 2 花の絵本15選
- 2.0.1 『さくら』長谷川 摂子/作 矢間 芳子/絵 福音館書店
- 2.0.2 『じいじのさくら山』松成 真理子/作・絵 白泉社
- 2.0.3 『なのはなみつけた』ごんもり なつこ/作・絵 福音館書店
- 2.0.4 『たんぽぽ』荒井 真紀/文・絵 金の星社
- 2.0.5 『バナナのはなし』井沢 尚子/作 おいかわ けんじ/絵 福音館書店
- 2.0.6 『さいた さいた』とりごえ まり/作・絵 金の星社
- 2.0.7 『花のうた』シャンナ・オーテルダール/作 エルサ・ベスコフ/絵 文化出版局
- 2.0.8 『はなのしずく』椿 宗介/作 高畠 純/絵 フレーベル館
- 2.0.9 『サナのゆめのにわ』なりた まさこ/作・絵 ポプラ社
- 2.0.10 『皇帝にもらった花のたね』デミ/作 武本 佳奈絵/絵 徳間書店
- 2.0.11 『はるねこ』かんの ゆうこ/作 松成 真理子/絵 講談社
- 2.0.12 『なかないで なかないで』あまんきみこ/作 黒井 健/絵 ひさかたチャイルド
- 2.0.13 『野の花えほん 春と夏の花』前田 まゆみ/作・絵 あすなろ書房
- 2.0.14 『アサガオ たねからたねまで』佐藤 有恒/写真 中山 周平/文 あかね書房
- 2.0.15 『花の色のふしぎ』佐藤 有恒/写真 あかね書房
- 3 花の絵本から新たな発見
春にぴったり、花の絵本
近所の桜は全て葉桜となりましたが、チューリップ、ラベンダーにクレマチス・・・春はまだまだ沢山の花を咲かせてくれる季節です。
我が家でも黄色のモッコウバラが色鮮やかに咲き乱れて楽しませてくれていますが、花には人の気持ちを朗らかにする不思議な力がありますよね。今回は、この季節に合わせた素敵な花の絵本を集めてみましたので、ぜひ、春の陽気に身を任せ、ご家族で絵本を眺めてみてください。
花の絵本15選
『さくら』長谷川 摂子/作 矢間 芳子/絵 福音館書店
こちらは桜の木(ソメイヨシノ)の一年を通した様子がよくわかる一冊です。
桜と言えば、満開に咲いている春の様子だけに注目しがちですが、夏、秋、冬の桜も表情が違い、それぞれの良さがあってとても素敵です。四季折々の桜が美しい絵と文章で一つの物語としてまとまっているので、春の読み聞かせにピッタリですね。
すごい絵がリアル!
見てると花見に行きたくなるんだよね~。
『じいじのさくら山』松成 真理子/作・絵 白泉社
天気が晴れた日、じいじに誘われて、よく、さくら山を登ったちびすけ。それは、じいじが嬉しいことがあるたびに、こっそりと植えてきたじいじの大事なさくらの木々からなる山でした。
「ちょうしのわるいところはないかいな」
「ぐあいのわるい木はおらんかな」
じいじは、ひとつひとつの木に触って木の具合を確かめます。ちびすけも真似をして触ってみますが木は何も答えてはくれません。やがて、じいじは病気になり、ちびすけは一人で山に行き、じいじの回復を願います。
よく、子どもは親の背中を見て育つと言いますが、この物語は
じいじとちびすけの関係がとても素敵で、ちびすけは、きっと、じいじの生き方を見て、じいじとの思い出を胸にこの先成長していくのだろうなあ…と読んでいて暖かい気持ちに包まれました。じいじの「なんも なんも」という口癖に、すべてのことを受け入れてくれるような安心感を覚えるのは私だけではないはずです…。
このじいじ、うちのじいじによく似てるよね。
確かに。
じいじだ、じいじだぁ~♡(ハート)
『なのはなみつけた』ごんもり なつこ/作・絵 福音館書店
我が家の庭に植えた葉牡丹から、するすると茎が伸び、ちょうどこの本の裏表紙の絵のような、見事な菜の花が咲きました。菜の花って、白菜やキャベツ、小松菜などの葉野菜からも咲くんですね。恥ずかしながら、この絵本を読むまで全く知りませんでした。
菜の花に最大限のスポットを当てて、菜の花についてのあれこれを丁寧な言葉で紹介してくれているので、未就学児でも興味深く楽しめる絵本です。我が家では新小学3年生も「へ~。知らんかった~。」と新しい発見があったようで、興味深げに絵本を眺めていましたよ。
え!菜の花って、野菜からも咲くん?
知らんかった~!
『たんぽぽ』荒井 真紀/文・絵 金の星社
たんぽぽを主役とした作品は他にも数冊思い浮かびますが、私はこの上から見たような構図で描かれているたんぽぽや、色遣いが好きで、荒井真紀さんの絵本をチョイスしがちです。
荒井真紀さんの作品は、どれも丁寧にそのものを捉えていて、それでいてお洒落。『まどのむこうの くだもの なあに?』(2019年月刊絵本「こどものとも年中向き」7月号)では、その魅力が爆発していますので、ぜひ、そちらも合わせてみていただきたいのですが、どの作品も、書店や図書館で他の沢山の本と一緒に並んでいても、荒井さんの絵本は
表紙からグッと引き寄せられる魅力があります。
こちらは、たんぽぽの観察に役立つ情報がこの一冊に沢山詰まっているので、科学絵本としても申し分ありません。
絵がすごくきれいだと思う。
どうやったらこんなに本物そっくりに描けるんだ!
『バナナのはなし』井沢 尚子/作 おいかわ けんじ/絵 福音館書店
こちらは、この一冊でバナナのことがまるっと全てわかってしまう絵本です。
バナナはスーパーなどで簡単に手に入る果物ですが、この絵本を読むと案外バナナのことを知らなかった自分にきっと気づくはずです。
バナナを冷蔵庫に入れるとどうして黒くなるの?
バナナはどうやってなっているの?
そんな疑問に丁寧に答えてくれているのがこの絵本です。
今回、花の絵本を特集するにあたって、なぜかこの絵本が頭をよぎりました。なぜだろう?と、久しぶりにページを開いてみると、そこにはこんな一文が。
「これが、はな?」
つぼみのようにみえるけれど、はなではない。(中略)しろい はなびらが みえた!これが はなだ。
どう見てもバナナの花のように思われるものは、花ではなくて、本当の花はその花のようなものの内側にびっしりと並んでいるのだという驚き。これが、ずっと私の中に残っていて、花の絵本を思い浮かべた時に頭の中にこの絵本がよぎったのでしょう。
普段食べているバナナへのリスペクトが感じられる絵本なので、バナナ好きにも嫌いなお子さんにも読んでほしい一冊です。
バナナって私だいすき!
バナナの生り方がよくわかって面白いよね。
知ってるようで何も知らなかったんだな~。
『さいた さいた』とりごえ まり/作・絵 金の星社
こちらは「わくわく」や「ひゅーひゅるる~」など、絵に添えられた短い文章が楽しい作品なので、0歳さんから楽しめる絵本です。絵は全て朱色に近い、鮮やかなオレンジ色で縁どられているので赤ちゃんも目を引くかもしれません。
絵本のカバーで作者のとりごえまりさんがこの作品が出来たエピソードを語っておられますが、日常の中でふと見た光景からこんな楽しい絵本を作ってしまう絵本作家さんってやっぱり素敵だなぁと思わずにはいられませんでした。
また、ここでの小ネタが表紙と裏表紙の仕掛けに気づかせてくれるきっかけとなり、物語が一層深いものとなったようで子どもたちは嬉しそうでした。
子供向けかと思ったけど、意外に楽しめた。
あんたも子供や。
待って待って!これって、もしかして、ぞうさんがいた場所って・・・。
おおっ!娘ちゃんも気づいたか~。
『花のうた』シャンナ・オーテルダール/作 エルサ・ベスコフ/絵 文化出版局
エルサ・ベスコフさんの絵本が個人的に大好きなので、花の本を特集するにあたって一番に飛びついたのがこちらの絵本。やはり、エルサ・ベスコフさんの絵は、美しくて心に優しいですね。
この絵本は、詩人であり作家でもある、シャンナ・オーデルダールの詩にエルサさんが絵を付けたものです。当時は新しさがあることで受け入れられたようですが、現在は古典的で、そこがまた趣があって美しい詩であると親しまれています。
読み聞かせには少し難易度高めな作品ですが、それでも子どもの横で、そっと声に出して読みたい絵本です。
布団に入った子どもに寄り添って、こんな美しい詩を読んであげられる母親になるのが理想です。
絵はかわいいけど、よくわかんない・・・。
タイトルどおり、花の歌が絵本になってるんだよ。
ね。そうだよね?
そうそう。そんな感じ。
素敵な絵本だけど、ちょっと読み聞かせ向きではないかもねえ。
『はなのしずく』椿 宗介/作 高畠 純/絵 フレーベル館
けろのお母さんが病気になって、けろは、お母さんの病気に効く薬を探す旅に出ることを決心します。
ところが誰に聞いてもなかなか有力な情報は得られないまま。ようやく、ふくろうおじいさんから「夜の間につゆ草のしずくを集めて飲む」という方法を教えてもらいますが、いくら探してもつゆ草の花は見つかりません。そんな時、野原の向こうに真ん丸な月が登ってきて・・・。
高畠純さんの絵が大好きで、知らず知らずのうちに手に取っている自分がいます。こちらは『うし』(内田麟太郎/作・高畠純/絵)とはまた一味違ったタッチのゆるさで、見ていて和みますね。
作者のあとがきを読んで、「青い月の光」は、真っ暗な夜を照らしてくれる唯一の希望であるような気がしてなりませんでした。
→【2021年干支】ウシが出てくるおすすめの絵本15選
この絵本、話的にも面白いけど、なんてったって、かえるの表情が面白いよ。
つゆ草の青いしずくって、ほんとうにあるん?
娘ちゃん見つけたら、お母さんの花粉症を治してね。
『サナのゆめのにわ』なりた まさこ/作・絵 ポプラ社
タイトルに「ゆめのにわ」とある通り、こちらは、現実には到底あり得ない、けれどもこんなことがあったらいいなを形にした、子どもたちのワクワクが詰まったファンタジーな作品です。
もしも、自分だけの庭があって、好きなお花を植えられて、そこで自由に遊ぶことが出来たら?
大きく伸びたお花の茎のトンネルをくぐったり、お花の妖精と知り合って一緒に遊んだり、きっと子どもたちの想像する世界はこの絵本のような楽しいことばかりのはずです。
ぜひ、想像を膨らませて、お子さんと一緒に「ゆめのにわ」で、沢山遊んでください。
楽しそう~!!こんな庭があったら、ぜったいぜったい水やりする~!!
『皇帝にもらった花のたね』デミ/作 武本 佳奈絵/絵 徳間書店
皇帝がおよつぎを選ぶことになって、くにの子どもたちに少し変わったおふれを出しました。
それは、皇帝が渡す花の種を大切に育てて、一年後、再び皇帝に見せに来るようにというものでした。花を育てるのが大好きなピンもこのおふれ通り、皇帝からいただいた花の種を大切に育てるのですが、いっこうに目が出てきません。そうこうしているうちに、とうとう約束の一年後がやってきてしまいました。困ってしまったピンは・・・。
目先の利益に囚われ、嘘をつくことを選んだ大多数の子どもたちの目に、誠実でいることを選んだピンの勇気はどう映ったのでしょうか。嘘を平気でつく子にはなってほしくないな~と思い、子どもに読み聞かせた絵本ですが、何度も読んでいるところを見ると、子どもの心にちゃんと響いたようです。
最初は「どうして?」って、意味が分からなかったけど、そういうことだったのか~!
この話、おもしろーい!!
また読んで、読んで~!
お父さんにも読んであげようよ。
『はるねこ』かんの ゆうこ/作 松成 真理子/絵 講談社
〈春の種〉がつまった、きんちゃくぶくろを落としてしまった〈はるねこ〉の話を聞いて、あやのは折り紙で春を作ろうと提案します。花や、ちょうちょや小鳥・・・折り紙で作った沢山の〈春〉は、やがて本物の春のように心を温かくしてくれます。
折り紙大好きな娘なら絶対よろこぶに違いない。そんなよこしま(?)な考えから読み聞かせした絵本ですが、案の定、この絵本は、娘の好奇心をくすぐりまくったようでした。折り紙で〈春の種〉を作っては、私にプレゼントしてくれ、自分なりに絵本の世界を楽しんでいました。このお話には他にも、『なつねこ』、『あきねこ』、『ふゆねこ』もあるようなので、季節を通して読んでみるのもいいですね。
お母さん、これ。
ん?なあに、この折り紙のグシャッとなったやつ?
はるの、た、ね♪
いただきます。
もう10年分ぐらいは、春の種に困らないです。
『なかないで なかないで』あまんきみこ/作 黒井 健/絵 ひさかたチャイルド
えっちゃんと猫のミュウは、よもぎのはらでちょうちょを追いかけました。
二匹のちょうちょが上になったり下になったりしている様子が笑っているように見えたので、えっちゃんとミュウは、ついちょうちょに夢中になってしまい、どっちから来たのかわからなくなってしまいました。
堪え切れなくなったえっちゃんが涙を流した、その時、
「なかないで なかないで」
やさしい声が聞こえてきて・・・。
こちらの作品は決して花が主役な訳ではありませんが、たんぽぽの花や、白い花が咲き誇っているよもぎのはらが印象的だったり、紫色の花が咲いた木々が風に揺れる様子で、迷子になった不安な気持ちを表現していたりと、殆どのページに花が描かれています。ふんわりとした絵は温かみがありますが、えっちゃんが迷子になった時には、これが不思議と、霧に包まれたような、ぼんやりとした印象に変わり、不安な気持ちを掻き立てられます。
自分が小さい頃、迷子になった時もこんな感じだったよなあ…と遠い昔に思いを馳せることができた一冊でした。
ねえ。えっちゃん、ほんとうに私に似てるかなあ?
似てる似てる。クリソツ。
え~、ほんとに?
似てる似てる。モデルになってんじゃない?
『野の花えほん 春と夏の花』前田 まゆみ/作・絵 あすなろ書房
こちらは春と夏の野原に咲いている花を紹介した絵本ですが、まず、持った正直な感想は、「あの雑草、食べられるのか!」、「あの雑草、役に立つのか~!」という驚きでした。特に、庭の手入れを怠るとすぐに生えてくる忌々しい雑草の名前がわかり、実は銅などのさび掃除に役立つと知った時は目からうろこでした。
一ページごとに一つの花の詳しい情報が載っているのですが、どの花も道端に咲いているものばかりの上、描かれている絵が可愛らして、それぞれの豆知識も楽しくて、終始興味をそそられた、収穫の多い一冊でした。
食べられるものは料理方法まで載っているので、子どもと一緒に野草取りに出かけたくなります。
見たことある花がたくさん載ってた!
庭にもいっぱい咲いてるよね~。
抜いても抜いても生えてくるからねえ。
決して好きで植えてる訳ではないよ。
『アサガオ たねからたねまで』佐藤 有恒/写真 中山 周平/文 あかね書房
こちらはアサガオの写真絵本です。種をまいてから花が咲き、しぼんで再び種が取れるまでの様子を普通の観察では見えない土の中まで写真で丁寧に紹介してくれているので、大人でも沢山の気づきを得ることが出来ます。
肉眼では動かないように見える花も、実は土の中でぐんぐん根を伸ばして一生懸命生きているその様を目の当たりにすると、どこか別の生き物の成長過程を見ているようで、アサガオに愛着すら芽生えます。
種をまいた日付けや、花が咲いて枯れ、種になった日付も刻まれているので、大体の時期を知ることが出来るのもいいですね。本の最後にはアサガオの植え方も載っているので、自由研究や、お子さんと一緒に観察するのにも楽しめる絵本です。
アサガオ、学校で植えたことあるから(読んでて)面白かった!
また育ててみたくなった~。
いいなあ~。私も植えてみたい・・・。
『花の色のふしぎ』佐藤 有恒/写真 あかね書房
こちらは、花自体が持つ役目や仕組みの話から始まり、花の色に関するいろいろな知識を得ることが出来る写真絵本
です。
特に、花の色と関わる虫たちの話が面白くて、思わず誰かに話したくなります。紫外線を感じ取る目を持ち、花にやってくる虫たちの見ている花の色に合わせて体の色を変えるクモがいたり、紫外線が見える虫と見えない人間とでは花の色が全く違って見えたりと、その内容は大人が読んでも楽しめますよ。
未就学児のお子さんにはまだ少し難しいかもしれませんが、昆虫写真家である著者が撮った、美しいカラー写真がたくさん載っているので見ているだけで良い刺激になるかも知れません。
虫と人間、花の色が違って見えるなんて知らなかった。
人間には見えないものが虫には見えているんだね。
花の絵本から新たな発見
いかがでしたか?
一冊の絵本で一つの花の様々な知識が身に付くものから、物語の中で花を美しく描いたものまで、花の絵本は本当にいろいろな作品がありますね。
絵本を子どもに読み聞かせていると様々な気づきがありますが、特に、作者が実際に一つの花をよく観察して描かれているのではないかと思われる、繊細なタッチで花の細部まで描き上げているような絵本を読んでいると、そこには沢山の情報が詰まっており、子どもだけでなく、大人ですら、(大人だからこそ?)普段見慣れている花に新たな気付きを得ることが出来ます。
たんぽぽって、さくらって、近くで見るとこんな感じだったっけ、
そんな新たな発見を楽しみながら、読み聞かせをするのもいいですね。