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調べ学習で積極的に年鑑を活用しましょう。
皆さんは、調べ学習をする時、どういった資料を活用していますか?
最近ではインターネットの普及により、学校でもiPadを使った調べ学習が盛んに行われ、紙媒体の資料の使い方に慣れていない生徒さんが多く見受けられます。調べ学習の時こそ、学校の図書室を利用してほしいと思うのが司書の性ですが、調べ学習にかける時間や、先生たちの都合上、残念なことに、なかなかそうは行かないようです。
以前書いた記事「小・中学生職業調べにおすすめ20選」の中でも言いましたが、ネットはあくまでも量、質は本であり図書館です。本は、ネットとは違い、私たちの手元に渡るまで、色々な人の目を通して誤りがないか確認をし、より正確な情報を私たちに発信してくれます。
そして、そんな紙媒体の資料の中で、特に信頼おける資料が「年鑑」です。
あまり、聴きなれない人もいるかも知れませんが、年鑑は、調べている事柄を、信頼度の高い統計データで裏付け出来る救世主と言っても過言ではありません。
ぜひ、この機会に、だまされたと思って、色々な年鑑を手に取ってみてください。
その時間は、きっと充実したものとなるに違いありません。
「年鑑」とは?
そもそも、年鑑という言葉を初めて聞いたという人も、中にはいるかも知れませんね。 そんな人のために、年鑑についてどういうものなのかを、少し説明をしておこうと思います。 私が愛してやまない『新明解国語辞典 第四版』よると、「年鑑」とは、
[一定範囲の事柄について]一年間の動きを図や表を使って解説した、年刊の本。
とだけ、説明が載っていました。これだけでは少し分かりづらいので他もいろいろ見てみると・・・『大辞林 第三版』と『日本大百科全書』(小学館)に、丁寧な解説を発見しました。
ある分野の一年間の出来事・統計などを収録・解説した、年刊の刊行物。イヤーブック。(『大辞林 第三版』)
ある国を中心として、政治、経済、社会、文化などを網羅する「総合年鑑」と、理科年表など特定の分野についての「専門年鑑」がある。(『日本大百科全書』)
つまり、簡潔に言えば、年鑑とは、「ある分野や組織、国や自治体などの、一年間の様々な出来事や統計をまとめた紙媒体の資料集のようなもの」と捉えてもらえれば良いかと思います。
年鑑を、調べ学習に取り入れることで、調べている事柄の裏付けとして根拠あるものとなり、信頼度の高いものになるのです。
中学生に利用してほしい年鑑7選
それでは、ここからは実際に、中学生に調べ学習等で利用してほしい年鑑をご紹介していきたいと思います。使い方によっては、大活躍する年鑑ばかりなので、ぜひ、参考にしてみてください。
『沖縄年鑑』 日本図書センター
こちらの年鑑の特徴は、写真と詳細な統計資料が豊富で、沖縄基地・返還問題など、沖縄戦後史を正確に知るための資料といった側面をもっていることです。 出版社のHPには、著名人から推薦の言葉が次のように並べられています。
ジャーナリストの筑紫哲也さん→「当時の様々な状況を知る上で極めて貴重な資料」
明治大学助教授の山田朗さん→「時代の臨場感を伝える「読める」データ集成である」
沖縄大学教授の新崎盛暉さん→「今では珍しくなった写真とともに、米軍支配当時の沖縄の時代的雰囲気を伝えてくれる」
この年鑑が、いかに資料として価値の高いものであるかがわかっていただけるのではないでしょうか。
写真や統計資料から、沖縄の基地問題について学ぶことができ、平和学習の授業に役立てることが出来ます。
『朝日ジュニア学習年鑑』 朝日新聞出版
こちらは、様々な分野の統計や資料を網羅した、小中学生向けに出版された年鑑です。 特徴としては、年鑑を見慣れていない人でも、写真やカラー、かみ砕いた説明により、わかりやすく情報を得られるという点が挙げられるでしょう。
統計や資料から、その年のニュースをわかりやすく学ぶことが出来るので、受験対策に役立てられる年鑑です。今さら聞けない、あのニュースのあれやこれやを、この年鑑で理解することも出来ます。
『〇〇県統計年鑑』
どの都道府県も、それぞれの都道府県の土地や人口、経済、教育、文化などのあらゆる分野にわたり、データ収集をして統計を出している年鑑が存在しています。一つの県について、多方面から詳しいデータが必要な場合に、これらを利用するのも一つの手です。
都道府県の詳しい情報を統計から得られる他に、それぞれの全国的地位などが載っている場合もあるので、例えば、その県の交通事故件数が都道府県内で何位であるかなど、自分が住んでいる自治体のことを客観的に知ることが出来ます。
『世界の社会福祉年鑑』 宇佐見耕一/小谷眞男 旬報社
毎年特集テーマが組まれ、社会福祉や社会保障について、国際機関の実践や、様々な基本データから世界基準の福祉を学ぶことが出来ます。また、経済、政治、社会、保健衛生など、いろいろな分野で活躍されている専門家が、社会福祉を分析・考察しているページもあり、読み物としても興味深く読める年鑑です。
福祉について、世界に視野を広げて理解を深められるので、福祉サービスやユニバーサルデザインなどの調べ学習に活用することが出来ます。
『日本子ども資料年鑑』 母子愛育会愛育研究所 KTC中央出版
こちらは、人口動態と子どもに関するデータや、子どもの生活に関するデータなど、子どもが関わる様々なデータを収録した年鑑です。特徴としては、子どもに関する巻頭特集が一年ごとに組まれていて、基本データ以外の情報も充実しています。例えば、2020年の巻頭特集は、「子どもとメディア」。
子どものインターネット依存や、ゲーム障害に関する概説などが掲載されていました。
子どもに関する統計を探しているのであれば、一度は開いてみることをお勧めしたい年鑑です。こういった、関係省庁や関係団体などから収集してきたデータを集めた年鑑を客観的に見て、身の回りの情報だけに縛られず、調べ学習に取り組むことはとても大切です。
『世界年鑑』 一般社団法人共同通信社 共同通信社
こちらは、共同通信社の海外全支局、編集局外信部などの記者が取材してきた情報から、一年の世界各国の情勢をまとめあげた年鑑です。
様々な国別データを見ることが出来るので、国際問題の理解を深める基礎資料として、調べ学習に活用することが出来ます。
『天文年鑑』 天文年鑑 編集委員会 誠文堂新光社
こちらは、一年間の主な天文現象、太陽と月の出没時刻、太陽系の星の位置や動きなどのデータが収録されている、天文に関する年鑑です。
その年の注目すべき天文現象は、こちらの年鑑を見れば一目瞭然。過去の観測結果と、これから起こるであろう天文現象の予報が解説されているので、主な天文イベントを事前に知っておきたい時に役立ちます。
【おまけ!】マニアックな年鑑
最後に、おまけとして、マニアックな年鑑をこっそりご紹介します。
これまでご紹介してきたような、自治体主体のものや、記者が取材を重ねてまとめ上げた、一般的な統計データが載った年鑑ではなく、ある一つの分野だけに焦点を当てた専門的な年鑑は、とことん奥が深いです・・・。
『きのこ年鑑』 日本図書センター
こちらは、キノコに関する一年ごとの統計・資料の他に、キノコ生産と流通動向、生産に関する制度からキノコそのものの成分に関するデータまで、あらゆるキノコ情報が収集されています。 キノコのことを調べる境遇にある方は、きっと、はずせない年鑑でしょう。
作ったキノコを売る勢いで、本格的にキノコ作りをされる際は、ぜひ、ご参考になさってみては??
調べれば調べるほどに、世の中には、本当にいろいろな年鑑があるのだと痛感させられました。
使い道はご自分でお考え下さい。
年鑑に慣れることから始めてみよう。
いかがでしたか? この記事を読んで、少しでも年鑑に興味を持っていただけたら、司書として、とても嬉しいです。
まずは、気になる年鑑を実際に手に取ってみて、目次を参考に、特に気になる項目のページだけを眺めてみると良いかも知れません。データがただひたすらに羅列しているタイプの年鑑よりは、ランキング形式で載っていたり、読み物として楽しめるタイプの年鑑の方が慣れるまでは見やすいかも知れませんね。
見ることに慣れさえすれば、年鑑は、調べ学習の心強い味方になってくれること間違いありません。