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小・中学生職業調べにおすすめの本20冊

 

キャリア教育で図書資料を活用しましょう

いつの頃からか、中学生は職業について調べ、社会のマナーや働く姿勢等について学んだ後、地域の会社や商店へ職場体験へ行くようになりました。最近ではネットに頼った調べ学習から企業の人を招いた講演型の授業まで、キャリア教育の方法も学校により様々ですが、司書としては、こういった調べ学習の場でこそ、資料を自分で探して答えを見つける方法を一緒に学んでほしいと思うわけです。せっかく学校に図書室があるわけですから、どんどん資料に触れて、知識を手に入れてほしいです。

今回、小・中学生のキャリア教育(職業調べ)におすすめな本を20冊集めました。将来の夢に具体的なビジョンを持ちたい人は、ぜひ、学校の図書室や近隣の図書館で資料を探してみてください。

 

小・中学生のキャリア教育におすすめな20冊

就きたい職業がまだない人は、これ!

『新13歳のハローワーク』 村上 龍/著 幻冬舎

将来就きたい職業が、まだ決まっていない人は、そこから見つけていかなければなりません。そこで身近な「授業科目」から職業を絞っていけるのがこの『新13歳のハローワーク』です。誰にだって好きな科目、苦手な科目があると思いますが、今現在好きであったり得意であったりする科目の項目を引けば、その分野の仕事を見つけられるようになっています。

例えば、「国語」が好き・興味がある という項目を引くと、更に、

 

 1.随筆や物語を読む

 2.詩や作文など文章を書く

 3.詩や文章を朗読する

と分かれているので、その中から自分の好きなことのページを見てみます。

私を例にすると、どちらかというと読むより書く方が好きなので、2.の「詩や作文など文章を書く」という項目を引いてみます。すると、いろいろな職業が出てきます。作家、コピーライター・・・。どんな職業が自分に向いているか知ることが出来るので、この本を職業調べの始めに開いてみてください。

 

 
職種から仕事を選びたい&働く生きた声を聞いておきたい人は、これ!

『あこがれ仕事百科』NHKラジオ第1「きらり10代!」制作班/編 実業之日本社

こちらは、「接客・サービス系」、「専門・技術系」等、職種ごとに職業が分かれて載っています。大体どの分野の仕事に就きたいか定まっている人は、その職種に関係のある職業について理解を深めるのに調度いいかも知れません。

例えば、「接客・サービス系」の項目を開いてみると、ホテルフロントや看護師、バスガイド等、9種類の職業が紹介されています。各々の職業の紹介ページでは、実際にそこで働いている先輩たちの生の声を聞くことが出来るので、理想と現実との間にうまれるギャップを最小限に抑えられるかも知れません。この本のインタビューに答えている先輩たちにも、進路を迷った時期があったのです。もちろん、自分の未来をイメージ出来ている人だけでなく、全く将来のビジョンが見えていない人にも、こういった先輩たちから発せられる言葉はとてもためになります。本書にも、次のような記述が見られます。

君が、「何になりたいか、まだ決められない・・・」と思っているなら、何も無理に決めなくてもいいのではないでしょうか?この本で紹介した仕事人の多くも、君たちと同じように、10代のころは迷っていました。この本には、迷っていた先輩たちからのメッセージが載っています。ぜひ、そこを読んでください。これから何をすればいいのか、そのヒントに出あえると思います。(『あこがれ仕事百科』NHKラジオ第1「きらり10代!」制作班/編 実業之日本社 P.4)

将来を考え始めた時に、ぜひ、手に取ってもらいたい一冊です。

 

楽しみながら仕事のイメージを膨らませたい人は、これ!

『こどもおしごとキャラクター図鑑』 給料BANK/著 宝島社

こちらは日本の職業をゲームキャラクターのように紹介しています。職業のイメージから能力や装備を説明しており・・・と、ここまでの説明では何のことやら分かりづらいかも知れませんが、要は、視覚と短い文章で端的にどのような職業であるか分かるようになっています。

例えば、個人的に気になる図書館司書のページを見てみると、「図書館司書」の前にキャッチフレーズが付いていました。「10万冊読んでも人生は変わらなかったけど生き方は変わりました 図書館司書」。

この本によれば、司書の能力は、

  • 獲得できる平均報:220000G
  • まほう:ブックサーチ(すぐさま探している本を見つけることができる)、ブックリターン(たくさんの読まれた本を棚に一気に戻すクリア魔法)

装備は、

  • 検索の魔導書
  • 司書のエプロン
  • カテゴライズ樹形図

となっています。これらの説明の一番下に、「図書館司書のおしごと」という欄があり、詳しい仕事内容やなり方について具体的な説明が載っています。それぞれの職業のキャッチフレーズが見ていて楽しいですね。本を普段読む習慣がない人にはもってこいな一冊かも知れません。

仕事に就いた時のタイムスケジュールが知りたい人は、これ!

『大人になったらしたい仕事 「好き」を仕事にした35人の先輩たち』 朝日中高生新聞/著 幻冬舎

こちらの本は、下のような「好きなこと」から職業を調べることができます。

  • 機械やしくみが好き
  • のりものが好き
  • 自然や動物が好き
  • 食べることが好き
  • 人と話すのが好き
  • 人を助けるのが好き
  • 絵をかいたり物をつくったりするのが好き
  • 本を読むのが好き
  • 人を楽しませるのが好き

思い当たる自分の「好き」のページを捲ると、その「好き」を仕事に結びつけた先輩たちのインタビューが載っています。(一つの「好き」項目につき、職業は2~6個ほど紹介。)その仕事に就こうと思った理由や、仕事の楽しさ、大変なことなどが事細かに話されていて、その仕事の本質がとてもイメージしやすいです。特に、その職業に就く人の一日を大まかな時間に区切って紹介しているので、これを働き方の目安とすることが出来ます。具体的なイメージを膨らませやすいので、見ていてワクワクしてくる一冊です。

小学生にもおすすめなのは、これ!

『好きなモノから見つけるお仕事』シリーズ 藤田 晃之/監修 学研プラス

こちらは4冊からなるシリーズで、それぞれ、

  1. あそびから見つける
  2. 家の中で見つける
  3. 家の外で見つける
  4. 学校で見つける

と各巻でテーマごとに職種を分けて紹介しています。一巻の「あそびから見つける」を見てみると、

  • テレビ
  • サッカー
  • 絵本
  • 音楽
  • ゲーム

に更に分けられていて、それに関係した職業が数種類載っています。

例えば、この中の「テレビ」だと、章の表紙に、テレビに関係する職種を「番組を考える」側と「番組をとる」側に括って図(絵)で簡単に把握出来るようになっています。ここで気になった職業があれば、記載ページにとんで確認が出来ます。それぞれの職業ページは、仕事の様子をカラーの写真で紹介し、実際にその職業に就いている人達に「仕事をはじめたきっかけ」や「仕事の魅力」を聞いて載せています。こちらも大まかなタイムスケジュールが載っていたり、その職業に就くためのモデルコースが簡単に図で表されていたりとイメージがしやすくなっています。1ページの中に多くの情報がとても分かりやすく載っているので小学生にもおすすめです。

掲載職種655種類!あの百科事典から特化シリーズ!

『ポプラディアプラス仕事・職業 職業図鑑 上・下』ポプラ社

キャリア教育の資料として、絶対に外すことのできないシリーズがこちら。百科事典『ポプラディア』の「仕事」に特化したシリーズです。掲載職種は655種類。これを30のジャンルに分けて紹介しています。これまで紹介してきた資料と同じように仕事内容や、やりがい、その職業に就く方法、インタビューなどが載っていますが、違う点をいえば、職業紹介ページの右上に「興味・関心マーク」というものが表示されています。可愛らしい絵で描かれたマークの種類は、機械、チーム、コツコツ等、全部で10種類あって、このマークを見て自分の興味や性格に合った職業を探すことが出来ます。職業調べの参考にしてください。ちなみにそれぞれのマークの意味をいくつかご紹介しておくと・・・

  • ものづくりマーク→自分で何かをつくりだすことが好き
  • 人と接するマーク→人と話したりかかわったりすることが好き
  • チーム→チームで役割を分担して何かをすることが好き
  • コツコツ→コツコツと何かにとりくむことが好き 等

この図鑑で気になる職業をみつけて、大体のイメージを掴んでおくと、後の調べ学習がスムーズに進んでいきますね。

職業調べで、学習のモチベーションも高まってしまう?!

『5教科が仕事につながる!』シリーズ 松井 大助/著 ぺりかん社

最初に紹介した『新 13歳のハローワーク』のような、中学生に馴染みのある「科目」から職業を調べる本が他にもあります。こちらの『5教科が仕事につながる!』シリーズは、丸々一冊、一つの科目に注目して、この科目が職業でどのように役立っているのかを紹介しています。職業調べとしてももちろん効果ある一冊ですし、学習のモチベーションを高めることにも繋がります。『5教科が仕事につながる!社会の時間』を例に見ると、

  • 「公民」を活かす仕事
  • 「地理」を活かす仕事
  • 「歴史」を活かす仕事
  • こんな分野でも「社会」が活きている

の4章からなり、例えば、このうちの「公民」を活かす仕事としては、保育士や警察官、シナリオライター等が挙げられています。中身を見て感じることとしては、この本はこれまで紹介してきた本とは少し違い、見やすさ重視ではなく、完全なる「よみもの」であるということです。興味深い体験談が沢山載っているので、普段から活字に慣れている人はもちろん、読み慣れていない人にもチャレンジしてもらいたい一冊です。

働く姿勢を学ぶなら、これ!

『きらり10代!ワークメッセージ』 NHK「GOOD JOB!プロジェクト」/編 旬報社

同じく、楽しく読んでその職業の魅力を知れるのがこちら。いろいろな分野で活躍している8人のプロフェショナルな方たちが、自分の仕事について、ただひたすらに語っている一冊です。俳優、映画監督、映像人類学者、元プロ野球選手、ジャーナリスト、ダンサー、医師、写真家といった、ジャンルが全く違う8人の人達の話は、どれも仕事への情熱で溢れています。着実に歩んできた成功ストーリーではなく、失敗談もあるからこそ、ためになるのではないでしょうか。本気で語ってくれているからこそ、胸を打つものがあります。こちらを読んで、あなたの中に「こんな生き方がしたいなあ」という気持ちがメラメラと燃え上がってきたら、ぜひ、そのモチベーションのままで職業調べをしてみてください。

「仕事」そのものについて考えを深められる本

『子どもだって哲学⑤ 仕事ってなんだろう』 矢崎 節夫(ほか)/著 佼成出版社

こちらの本は、「収入を得る」ためだけではない、「仕事」における人の概念がいろいろと書いてあります。童謡詩人である矢崎節夫さん、絵本作家の五味太郎さん、女流棋士の石橋幸緒さん、探検家で医師でもある関野吉晴さん、専修大学教授(哲学)の神崎繁さん、この5人の方々の言葉によって構成され、前半に紹介したような「世の中にはどのような職業があるのか」を書かれたものとは少し違い、もっと深いところで、「仕事」そのものについて考えを深めることが出来る本です。一見、仕事とは無縁に思える、幼い頃の記憶であったり、感情が、実は今の職業に繋がっていたり、仕事をする上でのモチベーションになっていたりするんですよね。もちろん、この本で語っている方々と同じ職種に就きたいと思っている人にとっては、それぞれの職業に就くために参考にもなるとは思いますが、それよりも、仕事は、その人の生き方なのだということこの本を通して学ぶことが出来るのではないでしょうか。「収入を得る」、そのために働くことはとても大事ですが、どうせ働くなら、「就けてよかった」と思える仕事に就けたらいいですよね。

仕事にかける、プロフェッショナルたちの意気込みを学ぼう!

『NHK プロフェッショナル 仕事の流儀』シリーズ NHK「プロフェッショナル」制作班/編 ポプラ社

こちらは、NHKで放送された番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』を書籍にまとめなおしたシリーズです。全8巻で、どの巻も「働く心得」のようなもので溢れています。それぞれの巻は、次のようにサブタイトルが付けられています。

  1. 革新をもとめるプロフェッショナル
  2. 技をきわめるプロフェッショナル
  3. 創造するプロフェッショナル
  4. 命と向き合うプロフェッショナル
  5. くらしをささえるプロフェッショナル
  6. 食をささえるプロフェッショナル
  7. 表現するプロフェッショナル
  8. 信念をつらぬくプロフェッショナル

大体、一つの巻で5人のプロの仕事を見ることが出来るように収まっています。その仕事内容を詳しく理解できるようになるばかりか、仕事に臨む姿勢や考え方を通して、仕事の奥深さを感じることが出来ます。職場体験を前に、仕事への意識を高めるのに良いシリーズですね。

知りたいことがすぐに見つかる!

『キャリア教育に活きる!仕事ファイル』シリーズ 小峰書店編集部/編著 小峰書店

こちらのシリーズは写真や絵もカラーで見やすく表示されていて、その職業に就いている方に質問→解答という形で分かりやすい構成になっています。質問の内容は、

  • どんな仕事か
  • やりがい
  • 仕事上で大事にすることは何か
  • 仕事上で難しいと感じる部分はどこか
  • なぜこの仕事を目指したのか
  • 今までどんな仕事をしたか
  • 普段の生活で気をつけていることはあるか
  • これからどんな仕事をしていきたいか

といった感じです。分かりやすくまとまっているので、「仕事のこういうことを知りたい」と思う気持ちに答えてくれるシリーズです。シリーズは今のところ第2期まで出ていて、

  1. ITの仕事
  2. サイエンスの仕事
  3. 学校の仕事
  4. 住まいの仕事
  5. メディカルの仕事
  6. 動物の仕事

 (※第1期)

このように仕事内容で巻が分かれていて、一つの巻で6つの職業が紹介されています。小学生でも十分理解できる内容になっているので、小学生の職業調べにも活躍が期待出来そうなシリーズですね。

仕事現場の様子が、沢山の写真で伝わる!

『現場写真がいっぱい 現場で働く人たち』 こどもくらぶ/編著 あすなろ書房

こちらは、様々な現場を支える人たちにスポットをあてたシリーズです。現在、

  1. 事故現場
  2. 災害現場
  3. 救急医療現場
  4. 報道現場

この全4巻からなり、4つの現場で働く人たちを紹介しています。1巻の「事故現場」一つをとってみても、警察官、救急隊、山岳救助隊、海上保安官、フライトドクター等、一つの現場で多くの職業の人達が関わり合っていたり、場所によって出動する職業の人が違っていたり、現場の様子をいろいろ知ることが出来ます。職場体験では実際にこういった現場へ行ってお世話になるわけですから、どの現場で働く人であっても、信念を持って働いているということを忘れないでいてほしいです。沢山の写真で仕事現場の様子が伝わってきますよ。

生き残るための精神を大企業から学ぼう!

『見学!日本の大企業』シリーズ こどもくらぶ/編 ほるぷ出版

このシリーズは、日本の大企業を取り上げて、その成功の背景に見える生産、販売、経営の工夫などを紹介しています。現在、「大企業」と呼ばれるまでになった企業は、最初から山頂で胡坐をかいていたわけではありません。むしろ、大きく成長した後も、胡坐などかかず、様々な工夫をして今日に至っているわけです。そういった大企業の成長物語をこのシリーズで詳しく見ていくことは、働く姿勢であったり、精神論を学んでいるような気がします。「ローマは一日にしてならず」という言葉を思い出しますが、現在の姿になるまでの道のりは平たんなものでは決してなく、だからこそ、そこからは沢山のことが学べるのです。

結婚、出産、育児…先を見越した職業選びを考える!

『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』 華井 由利奈/著 光文社

こちらは、将来多くの人が通るであろう道を想定した職業調べの本となっています。ずっと自分ひとりだけの未来であれば、自分とさえ向き合えていればいいわけで、さほど職業選びに苦労はしません。ところが、人生の旅の途中で気の合う相手と出会い、結婚をし、出産、育児…となると、自分中心から一変、他人中心の生活が始まります。それはとても幸せに満ち足りたものであると同時に、これまでの生活サイクルは捨てなければいけないと言うことです。働く女性が多く活躍するこのご時世であっても、残念なことですが、女性はまだまだこの影響を受けやすく、結婚や出産を機に、退職や転職をする人が多くいるのが現状です。

この本は、育児や職場の両立に悩んで仕事を辞める前に、働く女性の現実を知っておくこと、そして、それを知った上で将来の計画を予め練っておくことの大切さに気付かせてくれます。まだまだ先の未来だと思っていますか?綺麗ごとではない現実を知っておくことは必ず自分のプラスになりますよ。

ちなみにこの本では、主に次のようなことに触れています。

  • どのような仕事内容か
  • 子育て中はどういう働き方に変わるのか
  • 大体の仕事データ(勤務場所、多い勤務形態等)
  • どのような人にあう職業か 等

各職業ページに、「資格が必要か」、「自宅で出来る仕事か」等が分かるサインも分かりやすく付いているので、とても見やすい作りになっています。女性には、もちろん読んでもらいたい本ですが、いづれ、大切なパートナーと共に人生を歩むであろう男性にも、ぜひ、読んで色々な事を感じてほしいと思います。

 

職場体験学習に特化した本の構成!

『職場体験学習に行ってきました。』シリーズ 全国中学校進路指導連結協議会/監修 学研教育出版

こちらのシリーズは、中学校で行なっているキャリア教育(生徒のみなさんがどのように生きていくかを学ぶ学習)として多くの学校で行なわれている職場体験学習に、スポットを当てています。1冊に2つの職場体験を紹介していて、沢山の写真や体験が見やすく載っています。本の構成を簡単に説明すると、

  1. 仕事内容の説明
  2. 受け入れ先の事業所での1日の仕事スケジュール
  3. 中学生の職場体験学習の紹介(体験したことによる、発見等)
  4. 職場体験に行く前に、事前に知っておくと理解が深まる事柄
  5. 体験した生徒の感想
  6. 体験先の責任者や働いている人のインタビュー
  7. 将来、その職場で働くための進路やポイント等
  8. 職場体験の事前学習・事後学習のポイントを解説

という流れになっています。職場体験学習に参加をする前に太字の部分に目を通しておくだけでも、ためになりますね。次々新しい巻が出ているので、自分が職場体験で参加する業種があるか、ぜひチェックをしてみてください。

仕事内容を分かりやすく説明した本は、これ!

『職場体験完全ガイド』シリーズ 小原 解子(ほか)/編 ポプラ社

先程とタイトルこそ似ていますが、こちらの本は、生徒さんが体験する様子ではなく、働いている人の一日や仕事内容にスポットを当てています。こちらも次々と新しい巻が出ているので、シリーズの中から自分の興味ある職業名を探してみてください。この本の構成は、

  1. 仕事内容
  2. 一日の流れ
  3. インタビュー
  4. インタビューに答えてくれた方の先輩や上司からの言葉
  5. この職業に就く方法

という感じです。この本が他の本に比べて特化している所は何と言っても、4ページに渡って(※一日の流れのページも入れると6ページ)詳しく解説されている仕事内容です。例えば看護師の仕事内容を紹介しているページでは、診察の準備から説明が始まり、治療や手術の準備・補助に関する細かい説明、患者さんへの対応、入院患者さんに対する看護の説明が写真と共に本当に事細かに載っています。仕事内容を詳しく知りたい人は、必ず開いてみるべき資料です。

動物園の獣医に興味があるなら、これ!

『どうぶつ園のじゅうい』シリーズ 上田 美弥/監修 金の星社

「動物園で獣医の仕事がしたい」、「動物園での獣医の仕事に興味がある」、そんな人におすすめしたいのが、この『どうぶつ園のじゅうい』シリーズ全3巻です。

  1. びょうきや けがをなおす しごと
  2. 赤ちゃんをまもる しごと
  3. ぜつめつから すくう しごと

となっていて、1巻では、動物への採血についてや、採った血を調べて病気がないか検査をする様子、色々な種類の動物たちへ手術をする様子等、動物の病気やけがを治療する内容が載っています。続く2巻では、動物の出産に立ち会う様子、人工哺育等について、動物の出産や赤ちゃんとの関わり方が載っていて、3巻は絶滅が心配されている動物たちの人工哺育や妊娠、手術、絶滅から動物を救う国境を越えた作戦についての紹介等、動物保護の観点から解説しています。この本の監修が長年、獣医として動物園に勤めてきた方というだけあって、この全3巻を通して見れば動物園の裏方でもある獣医の仕事の大部分が分かります。また、それぞれの巻のタイトルを見ても分かる通り、この本はおそらく小学生向けに書かれたものです。その為、1ページに沢山の写真が載っていて、その横に説明が加えられている構成となっています。見やすい作りになっているので、動物園の獣医に関心があるのであれば、ぜひ、手に取ってみてください。

仕事に熱中する姿が、働く楽しさを語ってくれる

『障がい者の仕事場を見に行く』シリーズ 小山 博孝/著 童心社

少し前までは、障害者は福祉施設で過ごすことが多く、社会に出て働く人の方が少なかったそうですが、現在では色々な障害を持っている人の多くがハンディキャップに負けることなく仕事に熱中していきいきと働いています。この本は、そういった障害のある方々の仕事場を40年近く取材をしてきた著者が、最近の10年間に見てきた仕事場の中から選りすぐって、全4巻に分けて紹介しています。1巻の「ひとのために働く」では、保育や介護など人と関わる仕事、2巻の「学校で働く」では、学校に関わる仕事、3巻の「伝統や先端の世界で働く」では、伝統に触れる仕事や先端技術を用いる仕事、4巻の「私たちのこと、もっと知ってほしいな」では、仕事場に収まらず、障害者の方たちの働き実例を紹介しながら、社会のあり方そのものを考えています。ひとつの巻には4つの職場で障害者の方が働く様子が収められていて、沢山の写真に紹介文が添えられています。

自分の存在が誰かに認められたり、誰かの助けになることは、誰にとっても嬉しいものです。「幸せ」の定義について考えた時、それはお金や地位ではなくて、誰かに必要とされることではないかと私は思います。本書の中で紹介されている方々の障害を持ちながらも、いきいきと働く様子を通して、誰かの助けになって必要とされることから得られる幸福感や、働く楽しさを見出してもらいたいです。

気になる職業について調べ倒したい人は、これ!

『なるにはBOOKS』シリーズ ぺりかん社

こちらは、ひとつの巻につき、ひとつの職業についてが紹介されているシリーズです。どの巻も、それぞれの分野にたけた方々が著者として名を連ね、仕事の魅力・現実から、なり方まで幅広く紹介しています。なんとこのシリーズ、発行元のぺりかん社さんのサイトには、「少年少女の夢を応援することを目的に刊行を開始し、現在150点刊行。現代社会のほとんどの職種をカバーする最大の職業ガイドシリーズ。」と謳われています。また、刊行したのは1971年ですが、以前出版されたものを最新の情報に改めた改訂版も多く出版されていて、常に時代の流れに沿った内容になっています。(※例えば言い回しも、看護婦→看護師、スチュワーデス→キャビンアテンダントへ変更等)

例えば、私の職業である『司書になるには』(森 智彦/著)を見てみると、構成はこのような感じです。

  1. ドキュメント:本と人をつなぐ仕事
  2. 司書の世界
  3. なるにはコース

1章の「ドキュメント」は、司書としてどこかの学校や図書館に、実際に勤めている方達の話、2章の「司書の世界」では、図書館の種類やあゆみ、詳しい仕事内容、生活と収入のこと等、幅広い情報を紹介、3章の「なるにはコース」では、適性や資格の取得方法、就職の実際等、司書になる為のかなり具体的な方法が載っています。

本書を読んで、これからの自分の進路と照らし合わせながら、どのような生き方がしていきたいかよく考えてみてください。

 

なかなか人に聞けない、給料(目安)の話が知りたい人は、これ!

『日本の給料&職業図鑑』 給料BANK/著 宝島社

最後に紹介する本は・・・実は、私が以前勤めていた学校で、「一年間で最もよく借りられた本ランキング」3位にまで登りつめた本です。生徒にとって一番手に取りやすかった職業調べの本として、今回紹介の20冊に加えることにしました。

日本の職業が271種紹介されていますが、職業の解説ページに描かれた豪華イラストに思わず突っ込みを入れずにはいられません。拳から炎(?)のようなものを出して鋭い眼差しでこちらを睨む海上保安官、弓矢に手紙をつけて、今まさに射ろうとしている郵便局員、背後にネコのスタンドのようなものを従えた劇団四季団員、トラック運転手の絵に至っては、改造人間みたいになっている始末・・・。思わず、「こんな世界で仕事がしてみたい」とつぶやいてしまいそうです。

肝心な、職業調べに役立つかどうかですが、仕事内容や採用に関する小ネタが各ページに載っています。また、タイトルにもなっている通り、その職業に就いた場合に得られる平均給料が年代別に載っているので、目安にしてください。(※ただ、手取りではないと思うので実際に自分の好きに使えるお金はこれより少ないと思ってくださいね。)

 

書籍を使った調べ学習のすすめ

なるべく、伝えたいことや伝え方の違う資料等、バランスを考えて20冊選んだつもりですが、いかがでしたか?この中から皆さんの将来に役立つ、人生を歩むガイドラインのような本が見つかることを願います。

冒頭にも書きましたが、昨今、インターネットの普及でiPadやパソコンのみに頼った調べ学習が増えてきたように感じます。学校の図書室へ生徒を移動させる手間や、本を探す時に騒がしくなって注意・・・そんなやり取りを考えて先生たちは、本を使った「調べ学習」よりも、iPadで手軽に「情報集め」を生徒にさせてしまうのかも知れません。ただ、情報収集能力をまだ鍛えている段階である皆さんには、覚えていてもらいたいのです。ネットはあくまでもは本であり図書館です。ネットの情報はその殆どが無料で手に入りますが、本は、図書館ならば図書館が、一般の人ならば書店を通して、お金を払って購入します。有料であるということは、その裏には責任があるということです。これは、お金を払って本を購入してくれた人に対して、本を書いた著者や出版社が負う責任です。この為、誤った情報ではないか、信ぴょう性があるか、色々な人の目を通して確認をし、本の品質は保たれています。

また、図書館は調べ学習の場に最適です。これは、本で調べられるから等という単純なことではなく、図書館の棚の並び、つまり本の並びから言えることです。日本にある図書館の殆どは、日本十進分類法に基づいて、本を分類ごとに細かく分けて並べられているので、目的とする本の辺りに行けば、芋づる的に調べたい事柄と関連した本に出会えることになります。ネットであればこうはいきませんよね。ネットの世界は沢山の情報が断片的に散らばっています。ネットで気になる記事を見つけて、調べ学習の突破口を開くことは良いかも知れませんが、全てをネットに頼ることは大変危険です。

一冊手に取って読んでみることで、一連の流れが理解でき、得たい情報がまとまって手に入る・・・やはり調べ学習で本に勝るものは無いと声を大にして言いたいです。

 

 

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朝読書におすすめの15冊



■ 読書は心の安らぎ ■



 

最近、朝の会前の10分を使って朝読書をしている学校が増えているようです。毎朝のことなので、何を読むか頭を悩ませている生徒さんもいるのではないでしょうか?私が学生の時にもこんな取り組みがあれば良かったのに・・・と羨ましく思う反面、学級文庫を手に取って、毎朝、嫌々ページを捲って読んだつもりになっている生徒さんを見ると何とも言えない気持ちになります。

みなさん、読書は心の安らぎですよ!学生の今だからこそ、朝なんて清々しい、すてきな時間に読書が出来るんですよ!

読みたくもない本を手に取って、ペラペラとページだけを捲る10分間は苦痛以外のなにものでもないでしょう。それで「読書が嫌い」、「向いてない」と読むことから避けるようにならないでほしいです。

朝読書の本選びの極意をここにお知らせします。

 



■ まずは10ページ読んで「合う」、「合わない」を見極める ■



なんの興味もそそられない本を嫌々手に取る前に、例えば、学校の司書さんや、先生、本をよく読んでいる大人に

「おすすめの本はありますか?」

と聞いてみてください。

そして、自分はどんなことが好きか、何に興味を持っているかなど、自分について話してみてください。担任の先生や自分に近い大人であれば、あなたの性格が良くわかっているので、あなたが好きそうな本を考えておすすめしてくれるはずです。そのおすすめしてもらった本の表紙が、例え地味であっても、

ページを開いて10ページは読んでみることをおすすめします。

10ページ読んでみて「合わない」と思ったら、読むのをやめていいのです。先程も言いましたが、無理をして読むのは、苦痛以外のなにものでもありませんから。

これから、朝読書の10分間にピッタリの本を15冊ご紹介します。皆さんの本選びのご参考になれば幸いです。まずは公共図書館や学校図書館で本を借りて、10ページ読んでみてください。その10ページでは物語の掴みにもならないかもしれませんが、自分の「読みやすい文体」か「そうでない文体」かは、10ページ読めば大体わかります。

ただし、間違ってもその10ページで、「面白くない本」とは判断しないでくださいね。ページ半分は読まないと「面白い」、「面白くない」の判断はつきません。

公共図書館にも学校図書館にも、「貸出期限」というものがあります。大体、二週間程度でしょうか。朝の10分間だけの読書であれば、この期限内に読み切れるか心配ですよね。今回紹介する15冊は、どれも読みやすい本ばかりです。おそらく、二週間あれば読み終えることが出来ます。

朝読書の時間を使って読んでみて、「面白かった!」「また読み返したい!」と感じられる本に出会えたなら、あなたも読書好きの仲間入りです。

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■ 朝読書におすすめの15冊 ■



SF、ファンタジー、ミステリーなど、全てのジャンルが詰まった名作!

『ボッコちゃん』星 新一/著 新潮社

短編集といえば、星 新一さん。「エヌ氏は・・・」と、物語の中に固有名詞は一切出てきません。出てくる登場人物はイニシャルで書かれています。一つ一つの話は5~6ページ程度でとても短いのですが、この短い話の中に起承転結がちゃんと収まっていて、大人になって読んで改めて凄いな~と思いました。最近は、「意外な結末」ブームで、少ないページで「そうきたかっ!」と思わず声が漏れてしまうような小説を店頭でよく目にしますが、星 新一さんの作品はそれの元祖といえるのではないでしょうか。

そういえば、一昔前にどこかのテレビ局で『東京ストーリーランド』という、面白いストーリーを募集して優れている作品はアニメにして採用する素人参加型の番組をやっていて、その番組にしょっちゅう星 新一さんの作品が採用されていたような…。『ボッコちゃん』の中にも収められている『殺し屋ですのよ』なども採用されていて…あれって、著作権とかどうだったのでしょうね。

せいとさんの声
せいとさんの声

意外に読みやすかった。小説をあまり読まない自分でも読めた。(生徒さん談)

 
 
いろんな登場人物の視点から物語が見えてくる!

『きみの友だち』重松 清/著 新潮社

この小説は、最後まで読むとその構成の素晴らしさにもう一度読み返したくなる作品です。恵美という少女とその周りの子どもたちを主人公に10の話に分けられていて、章ごとに主人公が違うので短い朝読の時間に読みやすく、内容も中学生にドンピシャです。「いなくなっても一生忘れない友だちが一人いればいい」というフレーズが印象的で、心揺さぶられます。いろいろな「友だち」の形があっていいんですよね…。

重松さんの小説は、堅苦しくない、とても読みやすい文体なので、分厚く見えても一度その世界に入ってしまえばサクッと読めてしまうものが殆どです。朝読の時間に『きみの友だち』を読破して、他の作品にもチャレンジしてみると良いかも知れません。

 

まるで「現代版アラビアンナイト」のような隠れた名作!

『不思議を売る男』ジェラルディン・マコーリアン/著 偕成社

エイルサは母親と二人で暮らしていますが、図書館で出会った男がひょんなことから母親の古道具店で働くことになり、生活は一変します。最初は怪しいこの男を不審に思っていたエイルサ達ですが、この男の巧みな話術が、客を古道具店にある品物のとりこにする様子を目の当たりにして、エイルサ達自身も男の話に引き込まれていきます。

連作短編小説であり、古道具店の品物の名前がそれぞれの章についています。

男が語るそれぞれの品物にまつわる物語は、嘘か真か…。品物によって、ファンタジーな話であったり、ホラーな話であったりと、章ごとの印象はがらりと変わります。世間では、この小説を『アラビアンナイト』の現代版と言われているとかいないとか。

 

美しい言葉が随所に散りばめられたファンタジーの世界!

『雨ふる本屋(シリーズ)』日向 理恵子/著 童心社

ルウ子が雨に降られてやってきた図書館で出会った不思議なカタツムリ。その動きはどこかルウ子を道案内しているようで…。

2018年11月現在、シリーズ4作品が出ているファンタジー小説です。これまで紹介してきた作品のように章ごとに話の内容が区切られているわけではありませんが、柔らかな文体で、頭の中でこの世界を想像しやすく、短い時間でも物語に入り込みやすい作品です。また、全シリーズ、吉田 尚令さんが挿絵を担当されていて、物語ととても合っていて可愛らしいです。

 

手短に騙されたい人はこのシリーズ!

『5分後に意外な結末(シリーズ)』学研プラス ※著者はシリーズにより異なる

この『5分後に・・・』から始まり、『5秒後に・・・』や『5億年後に・・・』なんていうシリーズまで出てしまっている人気シリーズです。タイトルの『意外な結末』の部分もシリーズによっては『恋の結末』であったりします。5分後という、そのタイトルからして朝読にはもってこいな匂いがプンプンしますが、ゴシック体のような自体で書かれているので明朝体で書かれた小説に読み慣れている人は若干読みづらさがあるかも知れません。どの話もちゃんとオチが付いていて、騙されたと感じる人もいるでしょう。手短に騙されたい人は、このシリーズを読むことをおすすめします。

 

読みだしたら癖になる、不思議な世界の入り口!

『ショートショート千夜一夜』田丸 雅智/著 小学館

現実世界から引き離されたい人にはこちらがおすすめ。

多魔坂神社で開かれるお祭りは、不思議なことだらけ。欲しいと念じたものが出てくる「ヒモくじ屋」、夜店ですくった人魚がどんどん成長していく「人魚すくい」、降り注ぐ雨を自分のものにする「雨ドーム」等、現実世界を一歩踏み外した先にある妖の不思議な世界の入り口。全20編のショートストーリーが収められています。

作者の田丸雅智さんは、2012年に『海酒』で樹立社ショートショートコンテスト最優秀賞を受賞している新世代ショートショートの旗手です。現在ではショートショート大賞の審査員長を務めるなどの活動もされている凄い方なのです。ショートショートでありながら、読み始めた途端に、魅惑的であり幻想的な世界に連れて行ってくれる作品ってそう無いと思います。この世界、読み出したら癖になります。

 

絵本では語り切れなかった二人の心情に涙!

『小説 あらしのよるに』きむら ゆういち/著 小学館

幼い頃読んだ絵本って、大人になってもずっと思い出の中にあって、大人になってからその絵本に出会ってページを捲ると、幼少の頃の思い出だったり、読んでもらった時のくすぐったい様な温もりだったり、その頃の空気感のようなものが一緒に思い出されたりしませんか?そんな絵本の小説版が出たとしたら、きっと一度は読んでみたいですよね。

絵本は絵で情報が伝わるので、文で多くを語る必要は無いですが(むしろ多く語ると面白くなさそう)、小説は語らなければ読み手に何も伝わりません。そんな、絵本ではあえて語らなかったエピソードであったりガブとメイの心情であったりがこの作品には溢れています。絵本を小説にした必要性に納得の一冊です。元が絵本なので、とても読みやすいです。

せいとさんの声
せいとさんの声

表紙に魅かれて借りました。まさか、動物が主人公の話とは思わず・・・。
絵本が基なので、文章がとても読みやすかった。(生徒さん談)

 
 
小説で読むことの良さにも気づいてほしい!

『小説 注文の多い料理店』宮沢 賢治/著 新潮社

都会から来た若い紳士が、山奥で一軒の西洋料理店を見つけます。その名も「山猫件」。彼らはそこで休憩をすることにしますが、何やらこの店様子がおかしいのです。やたらめったら、札で客に対して注文ごとが書いてあるのです。

『注文の多い料理店』は、宮沢賢治が生前に刊行した唯一の童話集です。絵本でも様々な出版社から多くの絵師によって描かれてきた作品ですが、中学生の方にはぜひ小説で読んでほしいです。絵本には絵によって感じ方が変わるところが面白かったりしますが、小説で読むと色々な気づきがあります。例えば、「色」。「い瀬戸の煉瓦で・・・」、「文字でこう・・・」、「いろのペンキ・・・」、「すぐ横にい台が・・・」、「い瀬戸の塩壺・・・」、「いろのフォークと・・・」この物語には沢山の色が出てきます。この作品における、この「色」の効果は絶大で、文字だけを追って読み進める小説だからこそ、この「色」を読み手それぞれが想像でき、物語にぐっと奥行きが生まれるのではないでしょうか。都会から来た若い紳士が滑稽に見えて笑えて、でも、この作品を通して実は宮沢賢治が伝えたいことがあるんですよね。

ぜひ、小説にチャレンジしてみてください。

せいとさんの声
せいとさんの声

先生に絵本と一緒に勧められた。小説はちょっと読みづらかった・・・。(生徒さん談)

 
 
読後感が良い!日常の中のミステリー

『晴れた日は図書館へいこう』緑川 聖司/著 ポプラ社

読書が大好きなしおりは、憧れのいとこである美弥子さんの働く図書館へ通うことが日課です。その図書館で起こる、本が絡んだ様々な事件が章ごとに綴られているこの作品。それらは大きな事件ではなく、日常の中に潜む謎ですが、どの話も本を通して人の温かさが伝わってきます。特に、60年も前に貸し出されていた本を少年が返却に来る話が、本と人のつながり、人と人のつながりを感じられて素敵でした。「どういうことかな?」と読み進めていくうちに、気づけば暖かな木漏れ日の中にいる。そんな作品です。近所にこんな図書館があったらいいのにな~なんて、読書後思いました。

せいとさんの声
せいとさんの声

図書館が好きなので、図書館が舞台の、この物語の柔らかい雰囲気そのものが好き。(生徒さん談)

 
 
昔話のあの人が法廷で裁かれる?!

『昔話法廷』NHK Eテレ「昔話法廷」制作班/編 金の星社

こんな裁判が未だかつてあったでしょうか。この物語の裁判で今まさに裁かれようとしているのは、三匹の子ブタの三男であるトン三郎です。裁判員の目線で話は進み、彼が有罪か無罪か現代の法律で裁きが下されようとしています。争点は正当防衛かどうか―・・・。章ごとに裁かれる被告人が変わりますが、昔話の登場人物が被告人であることはどの章も同じです。

NHKのEテレの人気番組が小説になったものですが、出てくる登場人物たちにププッと笑いながら、裁判員制度について理解を深めることが出来る、なかなか他にない小説です。朝読書の短い10分という時間で知識が深まればこの上ないですよね。2018年11月現在、シリーズは3巻まで出版されています。どの巻から見ても楽しめるので、目次を見て好きな昔話から選んでみるのも面白いかも知れません。

せいとさんの声
せいとさんの声

ブックトークで聞いて、借りてみた。視点を変えて見ることって大事!(生徒さん談)

 
 
まるで、味わい深い寓話集を読んでいるよう?!

『キノの旅』時雨沢 恵一/著 KADOKAWA

ライトノベルの中で一番朝読向けなのがこの作品ではないでしょうか。

キノと喋る二輪車エルメスの旅の物語です。一人と一台(?)は旅の途中で摩訶不思議ないろいろな国に立ち寄ります。「人の痛みが分かる国」、「多数決の国」、「大人の国」、「平和な国」など、それぞれ国名と呼べるものは無く、国の持つ性質で「〇〇の国」と表現されています。これらの中には、社会風刺したものなどもあり時にドキリとさせられますが、どの国でもキノが深入りすることなく次の国へと旅を続けているので、読み手側も色々な感情を持ったまま次の話(章)へ進むことになります。国と国の間には貿易や繋がりは一切なく、国の周りは城壁で覆われていて、先にも述べた通り、国はそれぞれ独自の性質を持っています。その為、例え前章の気持ちを引きずったまま、次の章へ進んでも、次が全くタイプの違った国だったりするので、いつの間にか先程の気持ちは払拭し新たな話(章)にのめり込んでいけるわけです。一話完結型なので何話から(何巻から)読んでも楽しめる作品です。

せいとさんの声
せいとさんの声

この世界観が好き!挿絵も可愛い。(生徒さん談)

 
 
3分間に一回、騙されよう!

『ラストで君は「まさか!」と言う(シリーズ)』PHP研究所/編集 PHP研究所

朝読書のために作られた?と思うほど短時間で読めるのがこちら。30話収まっていて、1話が3分程度で読み切れるように作られています。内容はゾクッと来る話があったかと思うとユーモアのきいたものやSF物もあり、この一冊でいろいろなジャンルの話が楽しめます。2018年11月現在、このシリーズは6巻まで出ていて、それぞれ収められている作品のタイトルがそのままサブタイトルになっています。自分の好きなジャンルがまだよくわかっていなかったり、短い時間で物語のオチを知ってスッキリしたい方におすすめです。自称「読書嫌い」の方は、小学校高学年や中学一年生の間にこういった、オチのあるショートストーリーからスタートして、中学三年生になる頃にはもっと深みのある作品を読められるようになるのが理想かな~と思います。

短編集なのでこちらも、どの話、どの巻から読んでも楽しめます。

 

児童書だと侮れない!全ての物語に、深みのある短編集

『タイムストーリー(シリーズ)』日本児童文学者協会/編 偕成社

5分間、1時間、1日、1週間といった、どの巻も時間にまつわる物語で構成されています。「どの時間にしようかな~」などと、中身を見ないで選んでも楽しいですね。先に紹介した『意外な結末』シリーズや『ラストで君は・・・』シリーズで書かれている字体(ゴシック体?)が慣れなくて読みづらい方は、明朝体なのでこちらの方が読みやすいかも知れません。一巻に5話程度物語が収められていますが、どの話もストーリーがちゃんとしていて、昨今の「衝撃的なオチばかりを求め過ぎている学生」にいい意味で媚びていない短編集だな~と感じました。最後の著者紹介ページを確認したところ納得致しました…書き手の方々、なかなかすごい方が揃っていらっしゃいます。どうりで・・・。

巻によって、表紙の絵は描いた方が異なるので、印象がガラリと違いますよ。

 

読むときっと胸が熱くなる!

『心に響く小さな5つの物語』藤尾 秀昭/著 致知出版社

泣けます。淡々と実話を綴っている文体が、なぜでしょう、余計じわっときます。本の薄さや1ページの字数から言って10分程度で読み切れる作品ですが、何度も読み返したくなる為、10分では読めません。特に5話目の小学生とその担任の物語である「縁を生かす」は、読んでいて心が洗われるようでした。イチローが小学生の時に書いた作文、一話の「夢を実現する」も、本気になることってこういうことを言うんだな…と読後、何とも言えない感情になりました。同著者の『小さな人生論』シリーズの中から、選りすぐって選び抜いた5話がこの中に収められているので、他の話もとても胸が熱くなる実話ばかりです。

 

一話ごとでも楽しめて、全話通して読めば、じんわり余韻も楽しめる!

『死神の精度』伊坂 幸太郎/著 文藝春秋

最後はがっつり小説です。近々死ぬ予定の人を「可」(予定通り死亡させる)であるか「見送り」(予定を変更して天命を全うさせる)であるか判断していく死神(千葉)の物語です。連作短編集ということで、どの話も一貫して「死神が死神という事実を隠して、死ぬ予定の人に接触する」という点は変わらないのですが、一話ごとに、恋愛要素がはらんでいたり、まるで推理小説を読んでいるかのような回があったり、話の軸は変わっていないのに全く別の物語を読んでいるような感覚にさせてくれます。しかし、そこは伊坂さんの作品。この作品も最後の「死神対老女」を読んで驚かせてもらいました。あまり言うとネタバレになってしまうので控えますが、「死神」だけに、時間の流れが人間と違うのです…。

この作品をきっかけに、他の伊坂作品にもチャレンジしてみてはどうでしょう。伊坂さんの作品は、Aの作品の重要人物がBの作品ではちょい役だったり、「あれ?この人、あれにも出てた!」なんて身内にあったような感覚になれて楽しいですよ。(この作品の主人公である死神、千葉も別の作品に出てきます。ぜひ、他の作品の中から見つけてみてください。)



この中に気になる作品はあったでしょうか?興味を持った本があれば、学校の図書室や近隣の図書館で、ぜひ、探してみてください。

(※記事を書きながら、あれもこれもと思い浮かんだこともあり、紹介した順番は特に意味ありません。)

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司書が選んだ読書感想文におすすめの25冊

読書感想文におすすめ25冊記事のタイトル画像

読書感想文が一番書きやすい本は? 

夏休み前になると「助けてくれ~」と言わんばかりに、図書館に駆け込んでくる子供たち。「なんか面白い本ないですか?」「泣ける本ないですか?」「一日で読める本ないですか?」待って、待って。何をそんなに慌てているの?聞けば、読書感想文を書く為に、本を探しに来たと言います。思い起こせば、自分が学生の頃は夏休みの宿題の中で一番、読書感想文が好きでした。なぜなら、読書感想文を書くことを口実に、好きな本を買ってもらえたり、読んだ感想を誰かに伝えられることが嬉しかったからです。

読書感想文が一番書きやすい本って、やはり一番は、そういう、自分自身でワクワクしながら選んだ(買ってもらった)本ではないかと私は思います。

もちろん、携帯小説やラノベは向かない、などの縛りはあります。これらは、作品にもよりけりですが、読書感想文向けとは言えません。(理由は後程説明します)

 

 

普段、本を読む習慣のない人へ

普段、本を全く読まない人にも試練はやってきます。冒頭で言ったような、ギリギリに図書館に駆け込んでくる子たちですよね。自分の中に読みたい本がない人、そもそもどんな本が自分に合うか分からない人たち。そんな人たちに向けて、読書感想文に合う本について、少しお話しておきます。

◆読書感想文を書くことに向いている本の条件

  • 著者が伝えたいことが明確なもの
  • 戦争もの
  • 世界で広く読まれてきた名作
  • 主人公の歳が自分に近い
  • 「生きること」を題材にした小説   など

上に挙げたような点が、一つでも当てはまる本であれば、読書感想文に最適と言えます。また、読書感想文に合わない本というものも一緒に挙げておきます。

◆読書感想文を書くことに向いていない本

  • ページ数が極端に少ない本
  • 携帯小説(主人公の恋愛事だけがダラダラ書いてあるようなもの、文章がおかしい、素人が書いたようなもの)
  • ライトノベル(転生したりゲームの世界に入ったりする類)  など

携帯小説やラノベが好きで好きでどうしても書きたい作品がある!ということなら仕方がありませんが、少女漫画やゲームの延長にあるような作品(※文学的に優れたものもあるかも知れませんが、学校側のイメージです。)を、わざわざ読書感想文を書く為の本として選ぶことはお勧めできません。

では、先ほど挙げた「読書感想文に合う条件」に、当てはまる本を具体的に紹介していきたいと思います。今回は25冊の本を選んでみました。

 

 

読書感想文におすすめの25冊

 

進路について考えながら、生き方の参考になる!

『いつかすべてが君の力になる』梶 裕貴/著 河出書房

数々のアニメ主人公吹き替えを担当してきた、人気声優である著者が、自らの苦悩した下積み時代の経験や仕事に対する思いを綴っています。特に「こうしなさい!」という押しつけがましい感じではなく、なりたいものを探していたり、夢に向かっている14歳へ優しく語りかける一冊です。自分の夢について真剣に向き合って、これからを考えていきたい人は参考になると思います。読書感想文を書くにあたっては、自分の夢や進路と絡めて書くと独自性のあるものになっていいかも知れませんね。

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いろいろ進路とか考えている時期に、梶さんファンじゃない人にも読んでほしい!(生徒さん談)

 

教科書を読むより、ヒトラーの恐ろしさがわかる本!

『ヒトラーと暮らした少年』ジョン・ボイン/著 あすなろ書房

純真無垢であった優しい少年が、どんどんヒトラーに心酔していく様子が何とも恐ろしく、悲しい小説です。

7歳の少年ピエロは、暴力を嫌い、近所のユダヤ人で耳が聞こえない少年と遊ぶことが好きな、とても優しい少年でした。しかし、ある時父親が失踪、その後母親も病気で死んでしまい、父親の妹に引き取られることになり、ピエロの人生は一変します。引き取り先の父親の妹が働く別荘がある、オーバーザルツベルクの山で日々を過ごすことになるのですが、ここであのヒトラーと出会い、可愛がられ、いつしかヒトラーに憧れを抱くようになっていきます。教科書でヒトラーを知るより、身近なこととして捉えられる小説です。読書感想文では、閉鎖された環境故に無知であることの怖さや、ピエロを変えてしまった力がどういったものなのかに注意を置いて、「現代の社会では?」と自分のことに置き換えて考えてみるといいかも知れません。

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せいとさんの声

分厚い本で、貸し出し延長してもらって読み切った!
この時代の日本に生まれて良かった~と、読んだ後、平和な日常に幸せを感じた。(生徒さん談)

 

人生において、人には分岐点となる瞬間がある!

『本当にあった15の心あたたまる物語』キャサリン・バーンズ/編 東洋経済新報社 

ニューヨークを拠点にした「ザ・モス」は、著名人や一般人が聴衆を前にして自らの体験を物語の一つのように語り聞かせるトークイベントです。本作にはその中から選りすぐりの15の話が収められています。聴衆を惹きつけてやまないトークイベントであるだけに、どの話も自分の弱さや過ちをさらけ出していて、それ故に心打たれます。彼らが語っているのは、自分の人生で一番の出来事、つまり、自分の人生において、分岐点となった部分です。「自分の分岐点はいつだったろう?」、「いつだろう?」と考えながら、「ザ・モス」の聴衆になったつもりで物語を読んでみてください。また、聴衆を魅了する話術とはどんなものであるか、読書感想文で触れてみるのも面白いですね。

同年代の人とは違う生き方を選んだ、少年の物語

『15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることからぼくにしかできないことへ』岩野 響/著 KADOKAWA

アスペルガー症候群と診断を受けた少年が、中学に通えなくなったことをきっかけに自分の生き方と向き合い、家族で出した答えは、「ぼくができること」ではなく、「ぼくにしかできないこと」をすることでした。彼が選んだ道は高校進学ではなく、自ら焙煎したコーヒー豆を販売すること。この本は、この少年のことを誰よりも考えてきた両親の目線でも語られていて、発達障害の子どもが社会でどういう苦労を背負うことになるのか、周りは何がしてあげられるのか、考えを深めることが出来る一冊です。又、自分自身のこれからを一生懸命考えて、それを行動に移すことがいかに大切であるかも気づくことが出来るので、読書感想文の中でも、ぜひ、自分のこれからと真摯な姿勢で向き合って考えてみてください。

主人公と一緒に命の重みについて考えよう

『小説 透明なゆりかご』橘 もも/著(沖田×華/原作) 講談社 

高校三年生の看護師見習いアオイの目(経験)を通して、命についてのこれまで意識してこなかった部分に改めて気づかされます。人の死因第一位は「癌」ではなく、「中絶」であるという事実を知った上でアオイが臨む中絶の現場や、生まれて一度も光を見ることなく業務的に片付けられていく赤ちゃんたち…。一方、感動する出産の現場も沢山描かれています。これらは全て産婦人科という同じ場所で起きることなのですよね。性に興味を持ち始めた10代の若い子はこれを見てどう感じるのでしょうか。出産は命懸けだということ、「中絶」は一人の命を絶つということが本当によく分かる小説です。

読めばきっと、大切な人を抱きしめたくなる

『そして、バトンは渡された』瀬尾 まいこ/著 文藝春秋

主人公は、度重なる離婚再婚により五人の父と母がいる17歳の優子ですが、親がコロコロと変わっても真っ直ぐで明るいその性格は、その全員から大事にされ、愛情をいっぱい注がれているからではないでしょうか。「家族の絆」が必ずしも「血縁」だけを指さないことや、自分にとっての大切な人について考えさせられます。暖かな優しい気持ちになれる作品ですが、特に最後の父親である森宮さんとのやり取りは読んでいて楽しく、自然と笑顔になりますよ。最後まで読んで、読書感想文では、ぜひ、タイトルの「バトン」とは、何を言っているのか、考えてみてください。

離れていても互いを思い合う、少年とキツネの物語

『キツネのパックス 愛をさがして』サラ・ペニーパッカー/著 評論社

戦争によって引き裂かれたキツネのパックスと少年ピーターの物語です。家出をしてパックスを探す旅に出たピーターと、ピーターが絶対に迎えに来てくれると信じているパックス、彼らは離れても常にお互いのことを考えています。再会までいろいろな出来事が起こり、そんな中で二人(一人と一匹)はそれぞれ成長していき、パックスに至っては同じキツネの仲間も出来ました。この物語の面白いところは、キツネの視点と少年の視点で物事がそれぞれ語られている点です。その為、パックスとピーター、両方の思いを読み手は知ることが出来るので、感情移入しやすかったです。戦争や誰かによって引き裂かれるのではなく、成長した自分たちの意思で決断した最後は、涙なしでは読むことが出来ません。

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せいとさんの声

動物好きは、泣いてしまう。(生徒さん談)

 

16歳が語る、あの日の記憶

『16歳の語り部』雁部 那由多(ほか)/著 ポプラ社

東日本大震災当時、小学五年生であった子どもたちが五年経って語る、生々しい悲劇。身近な友だちが次の日には忽然といなくなったことの悲しみや、あの時、手を指し伸ばせなかった自分への後悔等、そこで見てきたものをありありと語っています。思い出すのも辛いはずの出来事を今起こっていることであるかのように語るのは、彼らの持つ生き残ったものの「使命感」のようなものでしょうか。同じ悲劇が繰り返されない為にも、経験したことを一つの記録として後世に伝えていく為に、彼らは語っているのです。読後、とても複雑な気持ちになりました。子どもたちの目線で書かれた避難所の様子や大人たちの行動は、ニュースで見たものよりリアルで、被災した子供たちの心情を知ることが出来るとても価値ある一冊だと思います。

戦争が奪うものの大きさを改めて感じる物語

『だれにも話さなかった祖父のこと』マイケル・モーパーゴ/著 あすなろ書房 

第二次世界大戦中に、顔に大やけどを負って一命を取り留めた祖父と、「おじいちゃんの顔をじっとみてはいけない」と言う母の言葉を信じて祖父の顔を見ようとしなかった孫が心を通わせる物語です。孫である主人公は夏休みに島へ遊びに行き、そこで祖父から淡々と戦争での体験を打ち明けられることになります。それは耳を覆いたくなるほどの、辛く、とても悲しい物語でした。戦争によって奪われるものの大きさを思う、大人向け絵本です。戦争で大事な人を亡くして傷ついて戻ってきても、帰還後の周囲の反応で更に心に深い傷を負う…戦争が人を変え、孤独にする様子がよくわかる一冊です。

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せいとさんの声

絵本で読みやすかった。戦争は終わってからも、悲劇を生み続けているのだと、改めて感じた。(生徒さん談)

 

80年間、語り継がれてきた歴史的名著!

『君たちはどう生きるか』吉野 源三郎/著 マガジンハウス

主人公コペル君とおじさんの対話によって話が進んでいきます。どういう生き方がしたいか考えさせられる哲学書のような本です。コペルくんと一緒になって様々な視点から自分はどう生きるか考えてみてください。なんとこの本が出版されたのは1937年で今から80年も前のことなんですよね。これ程昔の作品が、新装版や漫画版も出て、現代でも読み継がれてきているのは、生き方のヒントがこの本の中に散りばめられているからではないでしょうか。ぜひ、この機会に名作を読んでみましょう。

せいとさんアイコン
せいとさんの声

思った以上に、話が難しかった・・・。漫画版を読んだ後に、もう一度チャレンジしようと思う。(生徒さん談)

 

生きづらさを抱える人たちの優しい物語

『曲がり木たち』小手鞠 るい/著 原書房

事故などで体や心に障害を負った人たちの人生が、小さな公園で交差する連作短編小説です。「人の幸・不幸は、それを見ている人の幸・不幸の反映」とあるように、人は自分の鏡であって、心の中のわだかまり等がそのまま誰かに投影されているのではないか、ふとそんな風に思いました。収録されている5話全て、生きづらさを抱える人たちへの讃歌のように感じられます。読書感想文ではタイトルの「曲がり木」の意味することが何にあたるのか、自分なりの考えをぜひ書いてみてください。

もしも隣に難民が引っ越して来たら、あなたはどうしますか?

『ようこそ、難民!-100万人の難民がやってきたドイツで起きたこと―』今泉 みね子/著 合同出版 

ドイツ在住の著者が、多くの難民を受け入れているドイツで実際に起こったことを見聞きし、物語仕立てにまとめた作品です。とても読みやすいので、現代の「難民問題」について理解することが出来、ドイツが難民をなぜ受け入れるのかがよくわかります。もし、隣の家に難民が引っ越して来たら、様々な問題を前に自分だったらどうするか、自分さえよければいいのか、手を差し伸べられるのか・・・正しい知識や価値観を持つことはとても大切だと感じられる一冊です。

せいとさんのアイコン
せいとさんの声

ニュースでよく耳にする難民問題が、少しだけわかった気がする。
物語になっているので、とても読みやすかった。(生徒さん談)

 

少年と老人のかけがえのない夏休みを描いた物語

『夏の庭 the friend』湯本 香樹実/著 新潮社

死んだ人を見たいという好奇心に駆られた少年たちは、町外れに住む老人の観察を始めます。全ては老人の死ぬ瞬間に立ち会うために。ところが老人は少年たちと出会って日に日に元気になっていき、老人も少年たちも共に過ごす時間を心地よく感じ始めます。いつしか少年たちの老人観察は老人との深い交流へと形を変えていき、それはやがて、少年と老人のかけがえのない夏休みとなっていきました。

少年と老人の関係が素敵で、最後は胸が熱くなります。大人になっても夏はやって来るけれど、子ども時代は基調で、いろいろなことが吸収出来る「学び」の夏ですよね。この夏、少年たちが学んだことは、とても大きいものであったのだと思います。

膨大な年月をかけて辞書を作る人たちの「本気」が見える作品

『舟を編む』三浦 しをん/著 光文社

「大渡海」という国語辞典が完成するまでの物語です。

名前の通りいかにも真面目そうで、どこか頼りなさそうな主人公の「馬締さん」を筆頭に、この辞書に携わる人たちは皆一癖も二癖もある個性的な人たちで、読んでいて「ふふふ…」と笑えるところもあったりします。タイトルにある「舟を編む」とは「辞書を作る」という意味がありますが、辞書を作る作業ってとても根気のいるものなのですね。とても長い年月をかけて沢山の人達の思いも乗せて、ようやく一つの辞書が完成するのです。この本を読むと、自分の手元にある国語辞典がきっと愛おしく、宝物に思えてくるのではないでしょうか。

自分の道は自分で切り開く、アニーの強さにぐいぐい惹かれる作品!

『アニー』トーマス・ミーハン/著 あすなろ書房

赤ん坊の時に自分と一緒に孤児院の前に置かれていた「すぐにむかえにまいります」という手紙を信じて、アニーは日々を孤児院で過ごしていました。その手紙の言葉はアニーにとって、辛い時、悲しい時の心の支えでした。そして、待って待って11年間。ついにアニーは自分から両親を探し出すと決心し、孤児院を抜け出します。どんな時でも真っ直ぐで強くて明るいアニーの魅力がいっぱい詰まった作品です。ミュージカルを基にした小説ですが、こちらはミュージカルの脚本家が、ミュージカルでは入りきらなかったエピソードを入れて完全版として出版されています。アニーのようなポジティブな人間になりたいものですね。

正しいことって、「正義」って、何だろう?

『ヒーロー HERO』白岩 玄/著 河出書房新社

「面白いことがあれば、みんなそっちに注目する」という考えから、いじめゼロを目指して、ヒーローバカの男子とひねくれ女子が休み時間ごとに大仏マスクを被ってパフォーマンスショーを始めます。チアダンス部や校長先生をも巻き込んで、学校中の「いじめ」の基となる負の関心を断ち切ろうと奮闘する青春小説です。この物語を通して、「正しいこと」がどういうことか、「正義」について考えるきっかけになればいいですよね。校長先生が放った、「生徒ひとりひとりの居場所があることが学校という社会で一番大切だ」という言葉がいじめを無くす条件の一つのように私は思います。この本を通して、自分が思うところの「正義」や、いじめを無くす条件や方法を考えられるといいですね。

前を向いて生きることの大切さ、人生の希望が見えてくる!

『ワンダー』R.J.パラシオ/著 ほるぷ出版

主人公オーガストは十歳の普通の男の子です。ただし、生まれつき顔に「頭蓋顔面異常」という障害を持っていて、そのせいでいじめの対象になってしまいます。「病気がうつる」と罵ったり、顔をじろじろ見て悲鳴を上げたり、避けられたり、周囲はオーガストにとって冷たいものでした。しかし、家族から愛され、ユーモアと賢さの備わっているオーガストの話は面白くて、やがて、周囲にも変化が訪れます。

この本の良いところは、物語がオーガストだけの視点で進んでいくのではなく、章ごとに語り手が変わるところにあると思います。オーガストを取り巻く子どもたちの気持ちがわかることで、いじめている側の問題(家庭環境など)がよくわかり、彼らの心の成長も見ることが出来ます。希望をもって生きることの大切さを学べる作品です。

爽やかで心が洗われる青春物語!

『くちびるに歌を』中田 永一/著 小学館

中学校合唱部の青春物語です。合唱部の顧問である先生が産休に入ってしまい、一年間の期限付きで代わりにやってきたピアニストの柏木先生は、少し風変わりな美人でした。この新顧問に魅せられて不純な動機で入部する男子たちと、女子部員たちとの間に生まれる溝により、事態はどんどん悪化してしまいます。

一方で柏木先生は部員たちにNコン(NHK全国学校音楽コンクール)の課題曲にちなみ、15年後の自分へ手紙を書くという宿題を課していました…。

少しずつ部が一つにまとまっていく様子が、これぞ青春という感じで爽やかな作品です。大人になって読んでも良いと思えますが、ぜひ、青春真っただ中で読んで何か熱いものを感じてもらいたいです。

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せいとさんの声

アンジェラ・アキの歌が、頭から離れなくなった。
読んでいた時、自分も合唱部メンバーのうちのひとり。(生徒さん談)

 

本当の強さとは何かを考えられる作品!

『風が強く吹いている』三浦 しをん/著 新潮社 

素人10人が箱根駅伝を目指す、こちらも青春ストーリーです。厚みのある本で「読めるかな?」と心配になるかも知れませんが、大丈夫です。心配ご無用です。とても疾走感のあるお話で、駅伝本番の盛り上がりは、一つの少年漫画を見ているようでした。物語前半は主人公を中心に進み、後半は他の登場人物たちの話も入ってきて、それぞれの思いや姿勢に込み上げてくるものがあります。「速くではなく強くなれ。」という、物語にしばしば出てくるメッセージは、この作品全体の一つのテーマなのではないでしょうか。箱根駅伝のシーンは走る情景が浮かんできて、とても爽やかな読後感でした。なにかスポーツをやっている人であれば、この小説の持つワクワク感に共感できるでしょうし、文科系の人でも小説で共にスポーツの感動を味わえるなんて素敵ですね。

全ては一つに繋がっている、時の流れが感じられる美しい物語。

『100年の木の下で』杉本 りえ/著 ポプラ社

樹齢100年の栗の木とお地蔵さんがある農家で育った五人の少女たちの物語です。この物語に大きな山場と言えるものはなく、終始穏やかな雰囲気で田舎の日常が語られていますが、100年という長い年月を一冊に収める中で、「なぜ家の前にお地蔵さんがあるのか?」、「屋根裏にあったブローチにはどんな物語があるのか?」など、話がどんどん昔に遡っていくことで少しずつ明らかになっていきます。読み手側からしてみると、タイムマシーンに乗って時間の旅をしてきたような感覚です。時代が後退していることに気づくまでは頭がこんがらがってしまうかも知れませんが、読んでいるうちに5人の少女たちがそれぞれ別の時代で一生懸命生きていることに気づくと思います。自分という存在のバックグラウンドについて、ふと考えてみたくなる、そんな小説です。

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表紙が綺麗で惹かれた。
時代が変わったりするので、最初は少し読みづらかったけど、話が繋がっていることに気づいてからは楽しく読めました。(生徒さん談)

 

どんな困難にぶつかっても、ひとつひとつ乗り越えていく。

『見えないから見えたもの』竹内 昌彦/著 

※こちらの本はhttps://masahikonohon.stores.jpで購入が可能です。学校図書館に寄贈されている場合もあるので学校司書さんに尋ねてみてください。

こちらは著者である竹内さんが、幼少期から現在に至るまでの自らの体験を綴った手記です。竹内さんは小学二年生の頃に網膜剥離で両目ともに失明をしました。全盲となった自分を見守ってくれた家族や友人への思いや、ひとつひとつ困難を乗り越えてきた波乱の人生について、綴られています。読書感想文では、盲学校の元教頭でもあった著者の言う「見えないから見えたもの」がなんであるのか、ぜひ、考えてみてほしいと思います。

 

 

 

善悪がはっきりしない世の中だから・・・

『こんとんじいちゃんの裏庭』村上 しいこ/著 小学館

ある日、認知症のおじいちゃんが交通事故に巻き込まれて意識不明となり、損害賠償を請求される事態になってしまいます。主人公は中3で反抗期真っただ中、現在不登校を決め込む悠斗という少年。この事態に納得がいかない少年は真実を突き止めるべく立ち上がります。事件を調べるためにあちらこちらへ走り回る中、いろいろな大人と出会い、やがて少年は、世の中は一方的に誰かが正しい世界ではないということを知ることになります。きれいごとだけではない大人の世界が、多感な時期の少年の目にどう映り、やりきれない現実とどう向き合っていくのかが丁寧に描かれている作品です。この本を読むと、視野を広げて物事が見られるようになる為には、先生や親のような限られた大人だけに留まらず、もっと様々な大人と出会って色々な意見に触れることが大切なのだと気づかされます。教科書や学校の授業だけでは得られないことって沢山ありますよね。

あなたは、どんな親になりたいですか?

『笑顔でいたい 子どもは親を選べない』川浪 唯/著 文芸者

子を持つ親として、読んでいて気持ちがズンと重くなる小説です。正直、涙なしでは読めません。

真由子という少女が幼少時代から社会人になるまでの出来事を、ただつらつらと書き綴っている小説ですが、そのエピソード一つ一つがあまりにも苦しく、重く、「子どもは親の所有物ではないぞっ!」と読みながら何度も心の中で叫びました。この作品の大きなテーマは作者があとがきに二、三行で書いた、「子どもは親の持ちものではない。子どもには子どもの人生がある」ということであり、作者からの「子どもの心を大切に受け止めてほしい」というメッセージがひしひしと伝わってきます。小さな子どもが「自分は望まれて産まれてきたのか…」と悩んでいるなんて、読んでいて本当に胸が痛いです。真由子にはお兄ちゃんがいて、それが幼い頃の真由子にとっては唯一の希望でした。幸せになろうと兄妹で近い合う、その姿に、あなたは何を思いますか?ぜひ、読書感想文に思いのたけをぶつけてください。

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せいとさんの声

生い立ちが過酷過ぎて、読んでいて辛かった。(生徒さん談)

 

アメリカの純文学を読んでみよう。

『老人と海』ヘミングウェイ/著 新潮社 

老人と大魚との84日間の海での死闘を描いたアメリカの純文学です。この物語は(老人に寄り添う)少年と、老人の関係も温かくていいですし、何と言っても、広い海で大魚を吊り上げようと静かに孤独な闘いを繰り広げる老人サンチャゴの”強さ”に魅かれる作品です。サンチャゴがこれまでどういう人生を歩んできたのか、多くを語らない物語だけに想像が膨らんでしまいます。例え過去に捕らわれたとしても、先の見えない未来が怖いと感じたとしても、サンチャゴのように、今、この時を懸命に生きることが大事だとこの物語は教えてくれます。老いや性別等を理由に諦めるのではなく、今生きているこの時を大事にしていきたいですね。

不登校の少女と西の魔女(祖母)の物語

『西の魔女が死んだ』梨木 香歩/著 新潮社

中学を不登校になってしまった女の子が、「魔女」こと、祖母の元でひと月あまりを過ごす様子が暖かく描かれた物語です。自分が魔女の家系だと知って祖母から魔女修行を受けることになりますが、祖母からの教えは、自然と共存する、規則正しい生活を送る等、全て丁寧に日々を過ごすことと繋がっていました。季節は初夏・・・読書感想文を書く少し前から読み始めると時期的にも調度良くて、涼しい木陰や、外の空気に触れられるデッキ等に出て、どっぷり物語の世界に浸かって読んで頂きたい作品です。日々の喧騒から離れて、ぜひ、穏やかな気持ちで読書をしてください。

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せいとさんの声

タイトルからファンタジーかと思っていたので、最初はがっかりしたけど、諦めずに読んだらいい話だった。(生徒さん談)

 


さて、いかがだったでしょうか?

戦争物、青春物、語り継がれる名作・・・なるべく色々な角度から本を集めてみたつもりですが、この中に手に取ってみたいと思える本はありましたか?読書は心の安らぎです。あなたが「出会えた」と思える本と、巡り合えますように・・・。