◆ 自分の好みを知るところから始まる、「読活」。
ある日、滅多に図書館へ来ない子に、「本はあまり読まないの?」と尋ねると、なんとも嫌そうな顔をして「漫画は読むけど、本は読まん。」「活字は嫌い。」と話してくれたことがありました。「なんで漫画は読むん?」と更に聞いてみると、「絵で、すぐ読めるし・・・。面白い話が多いから。」だそうです。確かに、漫画ならではの面白さってありますよね。例えば、学校図書館で漫画を置くことが禁止だからと、変わりとして漫画のノベライズ本を置くところがあったりしますが、漫画大好きな私としては、それでは漫画の良さが損なわれているように感じてなりません。漫画は、ストーリーと同じくらい作画が重要であるだけに、その漫画の変わりをノベライズ小説に全て託してしまうのは見当違いです。つまりは、漫画には漫画の良さがあって、小説には小説の良さがあるのです。
では、漫画は漫画で堪能しつつ、漫画好きの情熱を少しだけ小説にも向けてもらうことは出来ないのでしょうか。
これは、学校司書の永遠のテーマであり、課題なのかも知れません・・・。
これまで、読書とは無縁の生活を送ってきて、小説を小難しいものだと認識してしまっている中学生の固定観念を覆すには、「漫画ばかり読まんと、本を読め!」ではなく、「漫画って面白いよね~!いいよね~。」と、まず、漫画を肯定することにあると私は思います。嘘でもなんでもなく、実際に漫画は面白いのですから。
「どんなの読むん?何系?」と漫画トークに花を咲かせ、相手の好みを聞き出せたら、してやったり。心の中で私はガッツポーズをします。「この漫画のここが好きなんよ。」と、キラキラした瞳で語ってくれる子どもたちに癒されながら、頭の中では、同じジャンルの小説を、無い脳みそをフル回転させて探します。
そして、「その漫画が好きなら、絶対この本ハマるわ~。だまされたと思って読んでごらん。」と、一冊の本を手渡し、何なら、大まかなストーリーや見どころを漫画トークと同じ熱量で、子どもたちと同じキラキラの瞳で語ってしまいます。
本選びは、絵本も小説も、自分の好みを知っておくことがとても大事です。
読書初心者で、その物差しとなる「好み」がわからないのであれば、好きな漫画をその代わりとして、小説選びの基準にしてみてはどうでしょうか。小説の面白さに気づき、新しい扉が開けるかも知れません・・・。
◆ この漫画が好きな人は、あの小説にハマる?!
前置きが長くなってしまいましたが、それでは、実際に、漫画と小説を紐づけて、お勧めの小説を紹介していきます。小説初心者にしては、少し長い本もありますが、ハマれば長さは関係ないということで載せておきましたので、ぜひ、挑戦してみてください。
★あの疾走感を小説でも味わいたいなら・・・
『スラムダンク』井上 雄彦 集英社
こちらの漫画が好きな人に、お勧めしたい小説はこちら!
『風が強く吹いている』三浦 しをん/著 新潮社
★得体の知れないものから恐怖を味わいたい人には・・・
『うしおととら』藤田 和日郎 小学館
こちらの漫画が好きな人に、お勧めしたい小説はこちら!
『ぼぎわんが、来る』澤村 伊智/著 KADOKAWA
『心霊探偵八雲』神永 学/著 KADOKAWA
★痛快な青春エンターテインメント!ハマったならば・・・
『今日から俺は!!』西森 博之 小学館
こちらの漫画が好きな人に、お勧めしたい小説はこちら!
『レヴォリューションNo.3』金城 一紀/著 KADOKAWA
★仲間っていいよね!人生は冒険だ!カッコイイ生き方がしたいなら・・・
『ワンピース』尾田 栄一郎 小学館
こちらの漫画が好きな人に、お勧めしたい小説はこちら!
『英国情報局秘密組織チェラブ』ロバート・マカモア/著 ほるぷ出版
『ぼくらのシリーズ』宗田 理/著 ポプラ社
★爽やかな少女漫画好きには、極上な青春モノを・・・
『君に届け』椎名 軽穂 集英社
こちらの漫画が好きな人に、お勧めしたい小説はこちら!
『夜のピクニック』恩田 陸/著 新潮社
★物語のヒロインらしからぬ主人公は、小説にも!
『ヒロイン失格』幸田 もも子 集英社
こちらの漫画が好きな人に、お勧めしたい小説はこちら!
『勝手にふるえてろ』綿矢 りさ/著 新潮社
◆ きっかけは何だっていい。「読活」のすすめ
いかがでしたか?漫画、小説ともに、まだまだ紹介したい本があったので、いつかまた、第二弾もやれたら・・・と思います。
漫画で描かれた伝記モノ、映画のノベライズ本、アイドルが書いた私小説・・・読書をするきっかけは、何だっていいのです。そこがスタートとなって、守備範囲を広げていけば、自ずと、自分が面白いと思える小説にたどり着けるのではないでしょうか。
冒頭にも書きましたが、まずは、自分の好みを知っておくこと。自分がどのようなジャンルが好きで、どういった作品を読みやすく感じるのか知っておくことが大切です。又、読活を続けていけば、「この作家さんの書く小説が好き」と、更なる気づきがあるかも知れません。
そこまでいけば、「ちょっと冒険してみよう」と、普段は手に取らないジャンルに挑戦し、新たな発見を楽しむ余裕も生まれていることでしょう。
本を毛嫌いしている子どもたちが、少しでも、読書の楽しさ、小説の面白さに気づいてくれればいいな~と、心から思います。