いくら親が絵本をたくさん読んであげたいと思っていても、子どもが興味を示さないことってありますよね。乳児の頃ならば「赤ちゃんだから、仕方がない」ですむ話も、3,4歳ぐらいになってくると他人の子どもと比べて「なんでうちの子は・・・」と、焦ってしまうこともあるかも知れません。子どもは無理強いすればするほど嫌がり、それが親子のストレスになってしまっては本末転倒です。外あそびが好きだったり、工作が好きだったり、歌を歌うことが好きだったり、興味を示すものはきっとどの子もそれぞれ違っていて、その中に、絵本を読んでもらうことが好きな子もいることでしょう。そんな絵本好きな子と自分の子どもを比べる必要はこれっぽっちもありません。ですが、少しでも絵本に振り向いてほしい・・・絵本の温かさを伝えたい・・・幼い頃に親に読み聞かせをしてもらった経験をお持ちのお父さんお母さんだからこそ、子どもに絵本と出会ってほしいと願わずにはいられないものです。
絵本に全く興味を示さない子には、少しばかりの仕掛けが必要だと私は思っています。興味がないのであれば、興味が行くところまで持って行ってあげればいいのです。外あそび好きは、わくわくする絵本が好きだったり、工作好きは何かを作る絵本が好きだったり、やはり、興味を示す絵本もそれぞれ違うわけですよね。
今回は、そういった細かい分野分けはしていませんが、どの子も興味を示すであろう、視覚や嗅覚、触覚などを刺激する絵本を集めてみました。絵本に全く興味を示さない子には、こういった少しばかりの仕掛けで、「絵本とは楽しいもの」であるということを発見させてあげてください。それが絵本に愛着が湧く”きっかけ”であり、スタートラインです。そこから、ぜひ、その子にあった絵本とめぐり合わせてあげて欲しいと思います。
絵本に興味を示さない子に、おすすめな絵本
『まるまるまるのほん』エルヴェ・テュレ/さく 谷川 俊太郎/やく ポプラ社
こちらは「まる」がひたすら出てくる参加型の絵本です。「きいろいまるを おして つぎへ いこう」絵本の書いてある指示通りに聞き手を誘導して、まるで仕掛け絵本であるかのような不思議な世界へ引き込むことが出来ます。絵本を傾けると、次のページでは傾けた方へ「まる」が傾いていたり、手を叩くと「まる」がどんどん大きくなったり・・・子どもが目を輝かせて絵本に食いつくこと間違いなしです。
大勢の子どもたちを前にして読み聞かせをしなければならない時でも、大活躍する一冊ですよ。
絵が動いているみたい!(娘談)
『どんないろがすき』100%ORANGE/え フレーベル館
この歌をご存知な方であれば、ぜひ、リズムを付けて、お子さんと一緒に歌って頂きたいと思います。歌って絵本を指さしながら、ゆっくりとページを捲ってみてください。ノリノリのお父さん、お母さんに食いつかないはずがありません。慣れてくると、リズムはそのままに「♪ どんないろが すき?」とお子さんに尋ねてみるのも楽しいですね。お子さんが「♪ 〇〇いろが すき!」と返すようになる頃には、きっと「絵本は楽しいものだ」と、絵本に愛着が湧いていることでしょう。
ノリノリのお母さんが面白い。(息子談)
赤色のページが好き!(娘談)
『あっちこっちすすめの本』ユーフラテス/さく 小学館
こちらは、イルカとモグラが合わさった「いぐら」なる生物が、どんどん道を進んでいく絵本です。道はやがて二手に分かれ、どちらの道を通るべきか選択を迫られます。「どっちにする?」と選ばせて、いろいろな展開を楽しませてあげてください。字が読めなくても、慣れれば自分で、指で道をたどって楽しみ始めます。
友だちと、違う道を選んで遊ぶと面白いよ。(息子談)
『おともだちカレー』木村 祐一/さく 世界文化社
こちらは、絵本のカレーから、スパイシーな本物のカレーの匂いがする絵本です。美味しそうな絵を見て「美味しそうだね。」と言ってはみても、食いつきがいまいちだったお子さんには、実際に匂いのする絵本はどうでしょうか。
絵本から匂いがするなんて、荒業と思われるかもしれませんが、この不思議な体験により子どもたちの好奇心が絵本に向けば、願ったり叶ったりですよね。
『ポッキーのびっくりピクニック』柳沢 幸子/さく 世界文化社
匂いが嗅げる絵本をもう一冊ご紹介します。先ほどがカレーならば、こちらは甘いクッキーの香りです。
ポッキーが友達とピクニックに出かける道中、いろいろなびっくりすることに出会うという、絵と共にほんわかと温まるストーリーですが、先に述べた通り、こちらも香料印刷の絵本なので、香料の付いた部分を指で擦ってポッキーたちと一緒に美味しそうなクッキーの匂いを嗅がせてあげてください。
『かがみのえほん きょうのおやつは』わたなべ ちなつ/さく 福音館書店
こちらは、視覚効果により、お菓子作りをしている気分が味わえる絵本です。鏡のようにテカテカと反射する紙に両側のページの絵が映り込むことで、平坦な絵が奥行きのある絵に大変身します。ぜひ、絵本の中でお子さんとお菓子作りに挑戦してみてください。
『こわめっこしましょ』tupera tupera/さく 絵本館
表紙の一つ目小僧の表情に、大部分のお子さんが最初は騙されることでしょう。こちらは、「こわめっこ しましょ・・・」の掛け声と共に油断してページを捲ると次ページには恐ろしくデフォルメされた妖怪たちの姿が待っています。私の娘は、鬼とゾンビのページを怖いもの見たさで何度も捲って見ていました。わりと怖がりなはずの娘に「怖くないの?」と聞くと、「面白い!」と意外な答えが返ってきました。上の兄は「その本をこっちに向けないで!」と拒否反応。食いつく子は大いに食いつくこの絵本、皆さんのお子様はどうでしょうか。
けっこう怖い!ぼくのそばで見ないでほしい・・・。(息子談)
いろんな顔のおばけが面白かった!(娘談)
『あーん あーん あーん』たちもとみちこ/さく コクヨ
こちらは、貼って剥がせるシールが144枚付いた絵本です。一頁一頁が分厚いので破かれる心配もなく、小さなお子さんにも、ぜひ、絵本に触らせてあげてください。絵本に苦手意識がある最初のうちは、読み聞かせをすることよりも、「あーん」と言いながらシールを可愛らしい動物たちの口の中へ一緒に貼って興味を絵本へ向かせてあげるところからスタートしてみるのはどうでしょうか。いろいろなところから、絵本に興味を持ってもらえるといいですね。
何度もはがして、貼り直せるのがいいね!(息子談)
シール大好き!ケーキをシールで作るのが楽しかった!(娘談)
『ゆうれい惑星のなぞ』A.J.ウッド/さく 偕成社
ホログラム絵本とは、光の干渉作用を利用して絵を立体的に映し出す絵本のことです。明るい場所で見ると、きらきらと煌めく光の中に、絵が見え隠れして見えます。最近ではホログラムの折り紙も売られているのを目にしますが、子供の関心は平面よりも立体にやはり向きやすいのですね。
おじいちゃんと孫のマックスとルーシーが宇宙船に乗って宇宙旅行へ、そして愛犬ソープも隠れて搭乗・・・。宇宙船の窓がホログラムになっていて怪物(?)の絵が浮かび上がって見えます。ホログラム絵本は他にも沢山面白い作品があるので、ぜひ、お子さんと一緒に不思議な絵をいろいろな角度から楽しんでみてください。
『光の杖 不思議な国を大冒険』香川 元太郎/さく 河出書房新社
書店で見かけて、私自身釘付けになってしまったのがこちらの絵本です。いわゆる「さがし絵本」ですが、ブラックライトで手がかりを見つけながら進むという大人の私ですらもワクワクが隠せない作りとなっています。ここからどうストーリー性のある絵本に引き込んでいくかが難しいところでもありますが、この絵本で謎解きにはまればしてやったりです。5,6歳ならば『おしりたんてい』や『かいけつぞろり』にはまるのも時間の問題かもしれません。謎解き絵本好きは、その後の導き方次第で、意外(?)にも児童文学から小説へ進みやすかったりもします。兎にも角にも、絵本から「ワクワク」を感じてもらえたら嬉しいですよね。
『とうさんまいご』五味 太郎/さく 偕成社
いかがでしたか?
ある一定の年齢になればストーリー性のある絵本を読み聞かせたい気持ちもあるとは思いますが、苦手意識を持っている子にとってはこの頃の無理強いで更に本嫌いとなり、行く行くは頭の中で「読書=苦痛」の方程式が出来上がってしまうことにもなり兼ねません。こうしたお子さんには、肩の力を抜いて、まずは絵本を楽しむこと、絵本は娯楽であることに気づけるような絵本から、ぜひ、スタートさせてあげてください。