身近なユニバーサルデザインを見つめて
今回は、障害や福祉のお薦めな絵本や読み物を紹介していきたいと思います。
その前に、福祉の点で切っても切り離せないユニバーサルデザインのことについて少し触れておきます。ユニバーサルとは、「普遍的な」、「全体の」という意味で、これに「設計」の意味の「デザイン」を付けて「ユニバーサルデザイン」と呼んでいますが、要は、国籍や年齢、性別等の違いであったり、障害の有無等を問わずに、全ての人の為に考えられたデザイン(設計)をそのように呼んでいるわけです。学校の授業では、こうした自分たちの身近にあるユニバーサルデザインを見つめ、生活に生かすことを通して生徒が積極的に社会に参画していくことまでを目標としているようです。
小学校や中学校でユニバーサルデザインの授業が行われている昨今、私自身、学校現場や公共図書館で仕事をしてきて、福祉について考えたり、様々な障害についての理解を深める授業を行なっている学校が増えてきたように感じています。そこで、今回は障害や福祉のお薦め本を細かいカテゴリーごとに分けて紹介することにしました。絵本も沢山紹介していますので、様々な障害や福祉の事について、この機会に知識を深めてみてはどうでしょうか。
視覚障害
『もうどう犬べぇべ』 セアまり/さく 平澤 朋子/え ほるぷ社
セアまり/平澤朋子 ほるぷ出版 2018年07月25日
最初にご紹介する絵本は、盲導犬のべぇべと視覚障がい者であるメグの物語です。
メグは目がどんどん見えなくなっていく病気になり、部屋に引きこもりがちになっていました。そんなメグの笑顔を取り戻してくれたのは、いつも困り顔の盲導犬べぇべでした。べぇべの動きからメグは周りの様子を理解できるようになり、ハーネスを外した時のべぇべのおかしなしぐさによってメグに再び笑顔も戻るようになります。やがて2人(1匹と1人)は、外出中に起こってしまった事故から、困ったときには遠慮せずに周囲の人に手助けをしてもらっても良いのだと気づき、これを機に前向きに色々なことに挑戦していくのです。
この絵本の作者である、セアまりさん自身、メグと同じ視覚障がい者です。だからこそ、絵本の最後に載っている作者の言葉には、伝えたいメッセージが沢山散りばめられているように感じます。町で盲導犬を見かけた時に気を付けてほしいこと、目の不自由な人が困っている場面に遭遇したらどうしてほしいか等、この絵本から沢山感じ取ることが出来るのではないでしょうか。
こまっている人がいたら、声をかけてあげようと思ったよ。(息子談)
視覚障害
『6この点 点字を発明したルイ・ブライユのおはなし』 ジェン・ブライアント/著 ボリス・クリコフ/絵 岩崎書店
ジェン・ブライアント/ボリス・クリコフ 岩崎書店 2017年08月10日
こちらは、点字を発明したルイ・ブライユの物語です。わずか15歳の少年がたった一人で完成させた点字が、現在でも図書館や空港、銀行のATM等で使われているって凄いことですよね。
どうやって点字が生まれたのか、点字を生んだ少年の人生とはどういったものだったのか、この絵本を読めば、この少年のひた向きな努力と諦めない気持ちを感じ取ることが出来ます。ルイの周りには、目の見えないルイに対して「きのどくだ・・・」と声を掛ける人たちが多くいました。けれども、ルイはただ、ほかの子と同じように、自分で読んだり書いたりしたいだけであって、「かわいそうなルイ・ブライユ」と同情されることに違和感を覚えていたことでしょう。目が見えない自分を悲観することなく、どうすれば良い状況になるのか、先だけを見つめて努力を怠らない、この絵本の通りのルイ・ブライユを想像すると、「きのどく」や「かわいそう」等という言葉は違和感のほかありません。目が見えないけれど本が読みたいから、目が見えない人でも読むことの出来る本を作ろうと考える精神は、とても前向きなのですから。
目が見えなくても、本が読めることにビックリした。(息子談)
視覚障害
『雨のにおい 星の声』 赤座 憲久/著 鈴木 義治/絵 小峰書店
こちらは、盲目の子どもたちの心を写した絵本です。雨のにおい、星の声、風のうごき、足の裏からもあたりの景色がひろがっています。普段、私たちが目で見て、当たり前に過ごしていることが、この子たちの心を通して感じれば全くの別世界へと姿を変えるのです。見えないことで分からないこともありますが、見えないことをハンデとせず、研ぎ澄まされる感性から得られるものも沢山あるのだということに気づかされる一冊です。
いろいろな障害
『どんなかんじかなあ』 中山 千夏/さく 和田 誠/絵 自由国民社
中山 千夏/和田 誠 自由国民社 2005年07月
「みえないって」、「きこえないって」、どんなかんじかなあ・・・。ひろくんは目を閉じてみたり、耳を塞いでみたりして、友達がどんなかんじか考えてみます。ひろくんの様に自分以外の人のことを考えて、歩み寄ってみることで、これまで全く気が付かなかったことに気づくことが出来るのかも知れません。
誰かと繋がりたければ、その人のことを知ることにつきます。その人に自分のことを知ってもらいたい場合も同様に、相手のことを知ろうとすることで互いの壁がなくなるのです。又、誰かのことを知ろうとすればするほど見えてくるのが、普段何てことなく過ごしている「自分自身」だったりします。同じ人間でも、誰一人として、同じ身体や考えの人はいないわけで、自分以外の誰かを知ろうとすることは、これまで自分が見落としてきた自分自身の良いところや凄いところをも気づかせてくれることだってあるのですよね。
聴覚障害
『ローラのすてきな耳』 エルフィ・ネイセ/著 エリーネ・ファンリンデハウゼ/絵 朝日学生新聞社
エルフィ・ネイセ/エリーネ・ファン・リンデハウゼ 朝日学生新聞社 2011年12月
このお話は、幼少期の頃に耳が聞こえにくかった作者の実体験に基づいて書かれたものです。自分のせいではないのに、耳が聞こえにくいが故に起こってしまう様々なこと・・・この絵本には、そんな少女のつらさや苦しさが語られていると共に、後半からは補聴器を着けたことによって彼女の前に広がった新たな世界のことが、希望に満ちた様子で描かれています。耳が聞こえづらい人にとって、補聴器がただの「機器」ではなく、いかに重要な「耳」となりえるのか・・・「私にもようやく居場所が見つかったの!」この絵本の最後で少女の口から出た言葉が、全てを物語っているような気がします。
聴覚障害
『ぼくのだいじな あおいふね』 ピーター=ジョーンズ/著 ディック=ブルーナ/絵 偕成社
ディック・ブルーナ/ピーター・ジョーンズ 偕成社 1986年11月
こちらは、耳が聞こえづらい男の子の毎日がディック・ブルーナの絵で分かりやすく語られています。聴覚障害児をもつお母さんや先生方の助言から誕生した絵本ということで、外見だけでは分かりにくい聴覚障害の悩みや不安が小さな男の子の目線で丁寧に描かれています。ブルーナの明るい色調とシンプルにまとめられた文は、とても暖かく、愛情をもって理解を示してくれる人達の存在がどれほど心強いか、気づかせてくれます。
聴覚障害
『わたしたち手で話します』 フランツ=ヨーゼフ・ファイニク/著 フェレーナ・バルハウス/絵 あかね書房
フランツ・ヨーゼフ・ファイニク/ヴェレーナ・バルハウス あかね書房 2006年01月
生まれつき耳が聞こえないリーザという女の子と、手話が得意なトーマスという男の子の出会いが微笑ましいお話です。リーザは同い年くらいの子どもたちとなかなか仲良くなることができませんでした。リーザにとって、声を出して話をすることは、自分が話す声も聞くことができないのでとても難しいのです。リーザが耳が聞こえないことを手話でいくら話しても、子どもたちには通じません。そんな一人ぼっちのリーザに手で話しかけてくれたのがトーマスでした。トーマスの両親も耳が聞こえないので、トーマスの家では手話が日常で使われていたのです。そして、リーザとトーマス、二人の出会いは他の子どもたちにも素敵な効果をもたらすことになりました。
読んでいて、心にふっと暖かい灯りがともる、そんな絵本です。この絵本によって、思わず手話を覚えたくなる、そんな子供たちもきっと出てくるのではないでしょうか。
学校で、手話の本を借りてきたよ! 「手伝いましょうか?」を覚えたんだ。(息子談)
聴覚障害
『わたしの妹は 耳がきこえません 』 ジーン=W=ピーターソン/著 デボラ=レイ/絵 偕成社
ジョアンナ・ホワイトハウス・ピーターソン/デボラフ・レイ 偕成社 1982年11月
こちらは、耳の聞こえない妹を持つ作者が、詩のような優しい文で妹について書き綴っている絵本です。友達に「耳がきこえないって、耳がいたいの?」と聞かれて、”わたし”は「耳はいたくないの。でも、むねがいたくなるの。みんなに自分の気持ちをわかってもらえないときにね。」と答えます。妹のことを本当によく見ているお姉さんで、妹のことがとても大切で可愛いのだろうなあ、と、読んでいて愛情が伝わってきます。例え耳が聞こえていなくても、誰かに愛されているだけで、世界はこんなにも光に満ちてみえるのだということがよくわかる一冊です。
染色体異常
『わたしたちのトビアス』 セシリア・スベドベリ/さく 偕成社
セシリア・スベドベリ/山内清子 偕成社 1978年09月
こちらは、子どもたちの無邪気な絵と文で、障害児である弟のトビアスのことが書き綴られている絵本です。トビアスが産まれた時にちっとも嬉しそうではなかったママの声や、周囲の反応・・・それらを目の当たりにして、トビアスの兄弟たちは「とくべつ」や「ふつう」について考えます。パパとママは、トビアスを施設へ預けることを検討しますが、兄弟は大反対。「トビアスに手がかかるなら、わたしたちみんなで、てつだうのがあたりまえ」とかんかんに怒るのです。ある時、ママが言いました。「みんな、いっしょにくらさないから、おたがいに、わかりあったり、すきになったりできないんだわ。」そこで兄弟たちはこう考えます。「わたしたちに、ふつうでない弟がいてよかった」、「わたしたちは、ふつうでない人といっしょにくらすことをおぼえるし、ふつうでないとはどういうことかが、わかるようになるから」と。
弟への愛にあふれた絵本であり、社会全体で”知ること”が”支援に繋がる”ということをこの絵本は教えてくれます。
染色体異常
『わたしのおとうと、へん・・・かなあ』 マリ=エレーヌ・ドルバル/さく スーザン・バーレイ/え 評論社
マリ・エレーヌ・ドルバル/岡田好惠 評論社 2001年09月
こちらは、フランスの≪幼年期と染色体異常を考える21世紀の会≫の提唱で創られた絵本です。
うさぎのリリには、どんなときでも、にこにこ笑顔のドードという弟がいます。「目は、どろーん」、「耳は、だらーん」、「口から、よだれが、だらだらだら」そんなドードを見て、「わたしの、おとうと、へん……かなあ。」と、リリは時々心配しています。そして、ドードがスープを零しても、床にお漏らしをしても、ちっともドードを怒らないパパとママのせいで、このままではドードが赤ちゃんのままだと心配が止まりません。「いくら、しんぱいでも、きみがひとりで、なにから、なにまで、してあげることはできないよ。」とリリに助言をしてくれるふくろうのおじさんや、大風の日に家を建てた野ネズミの話を聞いて、リリは一番大切なことを思い出すのです。スーザン・バーレイさんの温かい絵のタッチが素敵な一冊です。
肢体不自由(両足麻痺)
『わたしの足は車いす』 フランツ=ヨーゼフ・ファイニク/著 フェレーナ・バルハウス/絵 あかね書房
フランツ・ヨーゼフ・ファイニク/ヴェレーナ・バルハウス あかね書房 2004年10月
アンナは、生まれた時から両足が麻痺している女の子です。自分の足では動くことが出来ないので、車いすがアンナの足となって行きたい場所へ連れて行ってくれます。ある日、お母さんにお使いを頼まれたアンナは、初めて自分一人で外へ出かけることになりますが、なかなか思うようには行きません。じろじろ見てくる人がいたり、「気のどくだね。」と言われたり、お店の店員に変に気を使われたり・・・そんなアンナに対して声を掛ける男の子、ジギーの優しい言葉は、アンナの張りつめた気持ちをどんなに楽にしてくれたことでしょう。「ふつうとはちがってる」、「ちがってもいいのさ。ちがってるのって、ほんとうは、とくべつなことなんだから。」よく考えてみれば、”ふつう”って何を基準に言っているのかわからないですよね。大多数の人が”ふつう”で、少数派の人が”ちがう”と弾かれているのであるならば、ジギーの言葉は的を得ているようにも思えます。この絵本から、ぜひ、いろいろなことを感じ取ってみてください。
車いすに、ちょっとだけ乗ってみたいな。 アンナに友達が出来て良かった。(息子談)
肢体不自由(脳性麻痺)
『ぼくたちのコンニャク先生』 星川 ひろ子/著 小学館
「幼い子に向けて障害をメッセージする本を作りたい———」こちらは、母であり写真家である著者がずっと温め続けてきた思いによって生まれた写真絵本です。保育園に勤めだして直ぐに「コンニャク」と言うあだ名を付けられて、園児たちから洗礼を受けた近藤先生と純真無垢な園児たちの日常を垣間見ることが出来ます。生後8か月の時に脳性まひと診断された近藤先生は、ごはんの時に手が震えたり、話すことが苦手だったり、手先ならぬ足先を器用に使って折り紙を折ったり・・・子どもたちの目には、それら全てが新鮮に映って、興味の対象となるのです。「偏見」など微塵も持たず、近藤先生の色々なことを純粋に「知りたい」と思う、この園児たちのように、”いろんな人がいて、あたりまえ”なのだと、多くの子どもたちがこの絵本から感じ取っていくのではないでしょうか。
足の指でいろんなことが出来るのがすごい!ぼくにも出来るかな・・・。(息子談)
肢体不自由(先天性四肢欠損)
『さっちゃんのまほうのて』 たばた せいいち/さく 偕成社
田畑精一/先天性四肢障害児父母の会 偕成社 2010年09月
田畑精一さんと先天性四肢障害児父母の会によって作られた、生まれつき右手の指がない女の子のお話です。ままごとあそびでお母さんになりたいさっちゃんは、お母さんに訊ねます。「しょうがくせいになったら、さっちゃんのゆび、みんなみたいに はえてくる?」お母さんはさっちゃんが期待通りの答えはしてくれませんでした。「さっちゃんは おかあさんには なれないよ!だって、てのないおかあさんなんて へんだもん」友達から言われた、こんな心ない言葉もあって、やがて、さっちゃんは幼稚園を休むようになってしまいました。
子供は純粋であるが故に、その言葉によって人が傷ついてしまうということを深く考えずに、言葉を発してしまうことがあります。一度、口から出てしまった言葉は「無し」にすることは出来ません。でも、その言葉が正しくなかったと気づいた時、その言葉を違う言葉や態度で上書きすることは出来ると思います。さっちゃんの友達は、ハートの形をしたチョコレートを渡すことで、さっちゃんに対して謝りたい気持ちを態度で表しました。さっちゃんにとっては、それだけで、「なんだか ふうーっと おかしくなって」前向きになれるのです。自分と違う体の人を、つい、ジロジロ見てしまうこともあるとは思います。無知ほど残酷なものは無いのかも知れません。この絵本は、先天異常と子どもたちを取り巻く問題をこれからも広く社会に語りかけていくことでしょう。
指がない人だけじゃなくて、指の数が多い人もいるって聞いてビックリした。 いろんな人がいるんだな~。(息子談)
自閉症
『ふしぎなともだち』 たじま ゆきひこ/さく くもん出版
続いてご紹介する絵本は、転校先の小学校で、自閉症の男の子と初めて出会う少年の目線で描かれている絵本です。先ほど、「無知ほど残酷なものは無いのかも」と言いましたが、こちらは「知っていること」の大切さがよく描かれているように思います。初めて自閉症の子と出会い、その行動や、それを当然として日々を過ごす子どもたちに衝撃を受けたおおたくん。おおたくんにとって、初めのうちは、自閉症のやっくんは「きんちょう」の対象だったり、一緒にいると「いらいら」してしまう、近づきたくない相手だったりします。ですが、長い年月を共に重ねていく中で、やっくんの存在はおおたくんにとって、心でわかりあえる、不思議な友達となるのです。
このお話には、実は実在するモデルとなった二人がいるようで、作者である田島さんが淡路島の自閉症の青年とその同級生に取材を重ねて絵本になったのだそうです。その為か、読んでいて周囲の反応もとてもリアルに感じました。私が小学生の時にも同じような子がいて、よくクラスでからかわれていましたが、彼も今思えば、なんらかの障害を持っていたのだと思います。当時の自分にこの絵本を読ませたい・・・「知っている」からこそ、見えてくることって、本当に沢山あるのではないでしょうか。
学習障害
『ありがとう、フォルカーせんせい』 パトリシア・ポラッコ/著 岩崎書店
パトリシア・ポラッコ/香咲弥須子 岩崎書店 2001年12月
知的発達に目立った遅れがないのにも関わらず、学習面で、読み書きが出来なかったり、算数が苦手だったりと、つまずきや習得の困難さを示す子どもを「学習障害」と言いますが、この絵本の主人公であるトリシャも、字をくねくねした形としか捉えることが出来ず、読み書きが一切できません。トリシャが、隣の子の読んでいることを丸暗記して本を読めるふりをしたり、先生が読んだ後に同じことを繰り返して読めるふりをしていたことで、先生たちには気づかれないまま、学校生活は過ぎていきます。子供たちはその点敏感で、自分たちとは違うトリシャを笑ってばかにし、からかいます。そんなトリシャの苦しみにいち早く気が付いたのが、フォルカー先生でした。「きみには 字や すうじが みんなとは ちがってみえるのに、らくだいしないで ここまで きた」、「きみは かしこくて、それに とっても ゆうかんだ」フォルカー先生はトリシャに優しく言葉を投げかけます。
これは、作者の自伝的な物語であり、30年後、トリシャがフォルカー先生と再び会った時に、どんな仕事をしているのか尋ねられ、彼女は先生にこう言うのです。「しんじられますか?こどもの本を かいているんですよ。」学習障害を持っている子どもたちにとって、これほど勇気をもらえる絵本はないのではないでしょうか。トリシャにとって、フォルカー先生との出会いが人生を変えたのです。この絵本は、個性にあった教育の大切さを再認識させてくれます。
学習障害
『算数の天才なのに計算ができない男の子のはなし 算数障害を知ってますか?』 バーバラ・エシャム/著 マイク・ゴードン/絵 岩崎書店
バーバラエシャム/マイク&カールゴードン 岩崎書店 2013年05月15日
まず、このタイトルを見て、「どういうこと??」と疑問に思う人は少なくないかも知れません。算数が得意ならば、計算も簡単に出来るのでは?と。これが、算数障害の誤解を招きやすい部分で、この絵本ではこういった分かりづらいケースをウィットに富んだ絵と文で、分かりやすく伝えてくれています。算数障害の子どもにとって、この絵本のマックスの様に、数の概念を理解出来ても、九九を機械的に覚えることは出来ません。また、その反対に、計算が出来ても、計算の意味が理解出来ないというケースもあるそうです。傍から見ると大変分かりづらいですが、当の本人にしてみれば、「どうして自分は出来ないのだろう」と自暴自棄になる、とても深刻な状況です。障害を認識されることなく、間違った方法での指導が続くことになれば、ますます悪い方向へ進んでしまいます。教師も親も、子どもたちをよく観察して、その子に寄り添った支援をすることが大切なのだということをこの絵本を読んで改めて実感しました。
発達障害
『ボクはじっとできない』 バーバラ・エシャム/文 小学館
バーバラ・エシャム/マイク&カール・ゴードン 岩崎書店 2014年11月17日
表紙にも小さく書かれてある通り、こちらは、自分で解決法をみつけたADHDの男の子のお話です。この絵本の素晴らしいところは、なんといっても、デイヴィッド自身が自分の特性のどこが問題であるかに気づき、解決方法を探って、解決策を先生に提案したことでしょう。昨今、日本では社会に出ていく上で問題解決能力が重要視されていますが、デイヴィッドに備わっていたのは、まさしく、この問題解決する力であったのです。ADHDの特性として、落ち着きがなかったり、モノをすぐ失くしてしまったりと、ネガティブな面だけがクローズアップされがちですが、頭の回転の速さや、アイデアの豊富さなど、強みとなる部分もこちらでは頼もしく描かれています。
自分でいろいろ考えて、デヴィッドって凄い。(息子談)
障害や福祉関係のおすすめな読み物
続いて、障害や福祉関係のおすすめな読み物についてご紹介します。
視覚障害
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(新書) 伊藤 亜紗/著 光文社
こちらは、生物学者を目指していた著者によって書かれた本です。視覚障害者やその関係者達に対して行ったインタビュー、その人達とともに行ったワークショップ、日々の何気ないおしゃべり等から「世界の別の顔」の姿を柔らかな読みやすい文体でまとめています。「世界の別の顔」とは、見えない世界しか知らない人から言えば、「見える世界」のことで、見える人から言えば、逆に「見えない世界」のことです。本文にも書かれてありますが、実はこの本は、「いわゆる福祉関係の問題を扱った書物ではなく、あくまで身体論であり、見える人と見えない人の違いを丁寧に確認しようとするもの」(p.7)です。「視覚障害者がどんなふうに世界を認識しているのかを理解すること」(p.23)がこの本の大きなテーマとなっています。決して支援の観点から書かれている本ではありません。もちろん、必要とされた時に、差し伸べる手は大切ですが、この本を読めば、きっと全く違った印象を持つはずです。著者である伊藤さんの解説がとても丁寧で分かりやすく、どの話もストンと入ってきて読んでいて心地良かったです。
そして、余談ですが、この本を基にして描かれた絵本があります。こちらは未就学児に見せても楽しむことが出来ますし、小学生に物事を違う視点で見たり考えたりするきっかけを与えられる絵本だと思います。絵本作家のヨシタケシンスケさんがストーリーを考え、伊藤亜紗さんに相談しながら作ったそうですよ。こちらもお勧めです。
ヨシタケシンスケ/伊藤亜紗 アリス館 2018年07月
視覚障害
『暗やみの中のきらめき 点字をつくったルイ・ブライユ』 マイヤリーサ・ディークマン/著 汐文社
マイヤリーサ・ディークマン/古市真由美 汐文社 2013年04月
こちらは、ルイ・ブライユのただの伝記ものではなく、現代のフィンランドに住む盲目のレオ少年の話と、まだ幼いながらも200年前に点字を発明したルイ・ブライユの話が交互に進んでいきます。よくある伝記ものは、事実を語ることに忠実になりすぎて内容が浅くなってしまいがちですが、二人の人生が交互に語られることで、ルイがやり遂げたことが如何に凄いことであるのかがよくわかり、物語に厚みが加わっています。当時のフランスの時代背景や、フィンランドの学校での様子なども物語の端々に描かれているところも興味深い作品です。「そこに書いてあることを知りたい、物語を聞きたい」熱い思いを抱いていた幼い盲目の少年が点字を発明するまでを、現代のフィンランドの男の子レオの目を通して見つめている、とても読み応えのある一冊です。
聴覚障害
『ろう者の祈り 心の声に気づいてほしい』 中島 隆/著 朝日新聞出版
こちらは、新聞での連載が加筆されて本になったものだそうで、インタビューのような形で話が進んでいきます。聴覚障害者の方が悩んでいることや、どのような助けを必要としているのかがよくわかる本です。手話は、聴覚障害者の方にとって言語の一つですが、私自身、お恥ずかしながら、この本を読むまで手話と日本語がこれほどまでに違う言語であるとは思っていませんでした。こういった聴者の認識のズレが聴覚障害の方に対する誤解を生み、聴覚障害者の方を苦しめているのかも知れません。聴覚障害について知るきっかけとして良い一冊です。
聴覚障害
『犬たちがくれた音 聴導犬誕生物語』 高橋 うらら/著 金の星者
高橋うらら/MAYUMI 金の星社 2015年08月01日
こちらは、小学校高学年ぐらいから読める児童書です。捨てられたり、震災などで帰る場所を失った犬がどのようにして聴導犬となるのかがこの本を読めばよくわかります。聴導犬は聴覚障害者にとって、生活に必要な音を伝える大切な存在です。しかし、中には、聴導犬がいなくても、機械を使えば音を知らせることは可能だと考える人もいるでしょう。この本は、そういった声に対して疑問を感じた著者が、動物保護や聴導犬の育成に取り組んでいる団体へ取材を重ねていく上で出会った、ある一頭の犬と、その犬を育てた人たちを主人公にしたお話です。日本で認定されている聴導犬はまだ数少なく、盲導犬に比べてあまり世間に知られてはいません。この本によれば、アメリカやイギリスでは沢山の聴導犬が活躍していますが、聴導犬の歴史の浅い日本では(この本が出版された2007年時点で、)約数十頭しかいないそうです。
この本を読めば、聴導犬がもっと社会に浸透してほしいと願わずにはいられません。
聴覚障害
『あなたの声がききたい―聴覚障害の両親に育てられて』 岸川 悦子/著 岡本 順/絵 佼成出版社
こちらもノンフェクションの一冊です。著者の岸川悦子さんが入院先の病院で出会った、看護師の加奈子さんのこれまでの人生が丁寧に描かれています。加奈子さんのご両親は聴覚障害者で、幼いころから加奈子さんは友達の親と自分の親との違いにもどかしさを感じながら育ったそうです。心無い人たちからの偏見や差別が、読んでいて何とも言えない気持ちにさせますが、加奈子さんのご両親の前向きな生き方や、「将来は、弱い立場の人たちのために、なにか役立つ仕事をしよう」という、加奈子さん自身の気持ちの変化は読んでいてとても「強さ」を感じました。加奈子さんのご両親がまだ若かった頃、日本は今よりもっと、障害者に対して偏見や差別があったこと、手話が禁止され、ほとんどの聾学校で「口話法」が教育されていたこと・・・この本から知った事実が沢山ありました。そして、「手話」が聴者と聴覚障害者を繋ぐ重要な手段であることを改めて認識させられました。感動だけではない、色々なことを、ぜひ、この本から感じていただければと思います。
肢体不自由(難病ALS)
『わたしは目で話します』 たかお まゆみ/著 偕成社
こちらは、難病ALS患者である著者が「言葉の力」について書いた本で、全篇、文字盤を使って目で書かれています。言葉を発することは奇跡であり、孤独の中で言葉は育たず、言葉が人を人間にする・・・この本の中に散りばめられている言葉の数々は、どれも核心的で、読んでいて、はっとさせられます。第一章でALSという病気についての説明が詳しくなされていますが、ここで、著者にとって「身体が動かなくなるより、おいしいものが食べられなくなるより、言葉をうしなっていくことのほうが、十倍も百倍もつらかった」 (p.53)ことが書かれています。普段何も考えずに、ごく自然に使っている言葉ですが、失って初めてわかる、言葉の可能性や力をこの本から感じられるのではないでしょうか。話すことさえ出来れば、あらゆる困難を解決できることだってあるでしょう。最後に、人と話すことに悩みを抱えている人へ、著者からメッセージが書かれていました。その中の一つに、「友だちの言葉を大切に。」という内容のものがあります。私は、闘病生活や話せない苦しみだけを綴った本ではなく、この本がコミュニケーションできる喜びがどんなに深いものなのか、人と言葉を交わすことの尊さについて書かれている本であることが、このメッセージに凝縮されているように思いました。難病ALSについてはもちろんのこと、普段の何気ない言葉のやり取りに対しても考えることの出来る良書です。
肢体不自由(両下肢弛緩性マヒ)
『車イスから見た街 』(岩波ジュニア新書) 村田 稔/著 岩波書店
こちらは、生まれて一年半で、せき髄性小児マヒで両足が動かなくなり、車いす生活を余儀なくされた著者の目線から見た、日本の街や社会についてのことが書かれた本です。この本は今から約25年前に書かれたものなので、この頃から言えば、日本は随分変わりましたが、「福祉の視点で街を見る」きっかけに良い本ということで、今回選ばせていただきました。今でこそ、商業施設のトイレには必ずと言っていいほど障害者用トイレがありますが、この本によると、これが書かれた頃の日本には、まだあまりメジャーではなかったようです。又、歩けないからという理由で高校側から入学を拒否された話なども載っていて幾分内容に古さも感じますが、著者が25年前に、車イスの目線で「おやっ」と思っていたことが、残念なことに令和になった現代の街でもまだ見られる光景であることを私たちは知っておかなければならないと思います。例えば、車イスマークのついた駐車区間に、平気で止める一般車や、同じく車イスマークのついた駐車区間に設けられた、鎖の付いた柵、これは現代でも見かける光景です。歩道橋、駅の階段、地下鉄の入り口、バス、電車・・・誰にとっても使いやすい街になるために、誰かの目線で物事を見たり、考えたりすることはとても大切ですね。
発達障害
『拝啓、アスペルガー先生』 奥田 健次/著 飛鳥新社
タイトルに小さく「支援記録」とありますが、小難しい話は一切なく、とても読みやすい一冊です。こちらは、臨床心理士、行動分析学者で知られる奥田健次先生が書いた支援記録で、過去の支援から著者が思い出に残っている子どもたちのエピソードが紹介されています。著者が20年間の中で出会った子どもや家族たちで、実際に出会ったその時々の問題と乗り越えた記録に基づいて書かれていて、発達障害の子どもはこんなに変わることが出来るんだという事実を、読み物として楽しみながら、多くの人に知ってもらうことを目的として書かれたそうです。色々なケースで著者の所に訪れる子どもとその家族たちの様子や、課題を乗り越えて成長する子どもたちの姿に心揺さぶられ、この本から、子育てのアドバイスを沢山いただきました。正直、この先生の本を読み漁りたい・・・そんな衝動に駆られました。発達障害があるなしに関わらず、子どもたちの一人一人の特性を見極めて、それぞれに合わせた適切な教育の必要性を改めて感じた一冊でした。
自閉症
『自閉症の僕が跳びはねる理由』 東田 直樹/著 角川学芸出版
東田 直樹/よん KADOKAWA 2017年06月15日
こちらは、自閉症者である13歳の少年が、自閉症者の心の中を誰にでも理解できるように、自分自身の言葉でわかりやすく説明したものです。言葉についてや、感覚の違いについて等、様々な「謎」に一つ一つ丁寧に答えていくことで、自閉症者やその家族の助けになることが出来たらという願いを込めて、執筆されたのだそうです。本書の中の「僕たちの世界を旅してください」という一文にその思いが込められているのではないでしょうか。著者はこの本の中で、コミュニケーション手段の一つである筆談について、「書いて伝えることではなく、自分の本当の言葉を分かってもらうための手段」(p.15)であると述べ、「自分の気持ちを相手に伝えられるということは、自分が人としてこの世界に存在していると自覚できること」(p.31)だと説明しています。心と行動がイコールでないこと、その行動には全て理由があるということ・・・自閉症者の苦しさや心の声に気づかされる一冊です。
最後に、ユニバーサルデザインについて書かれてある本でお薦めの本をご紹介します。 今や、学校の授業自体もユニバーサルデザインを唱える時代です。当事者でなければ、その障害を「理解する」ことは出来ないかも知れませんが、「知らない」より「知っている」だけで、誰かが救われることだってあるかも知れません。どうすれば、全ての人々にとって、この世の中が生きやすくなるのか・・・「知っている」だけで、イメージしやすくなり、それはやがて、行動を起こすことに繋がるのではないでしょうか。自分さえ良ければいいという自己中心的な考えではなく、人のことを思いやれる優しい心を持ちたいものですね。
ユニバーサルデザインにおすすめな本
車イスが必要な生活を知ろう
『ドラえもんの車いすの本 (バリアフリーブック―体の不自由な人の生活を知る本)』 共用品推進機構/編集 小学館
共用品推進機構/町田ヒューマンネットワーク 小学館 1999年11月
こちらの本の構成は、前半は、四肢機能障害で歩行困難となり、車イス生活を余儀なくされた北斗君という男の子の小学校での様子が沢山の実際の写真と共に紹介されていて、後半は、車いすに乗ったまりちゃんという転校生が出てくる漫画、『ドラえもんの空飛ぶ車いす』がメインとなっています。どちらの話も、読んでいる側に、「誰もが”不便さ”や”危険”を感じずに生活をするには、どうすれば良いのか」を考えさせてくれる内容になっていて、普段気が付かないことに目を向けられるきっかけとなる一冊です。自分の住む街や学校は、誰もが住みやすい、通いやすい場所となっているのか、この本をきっかけとして、身の回りのバリア(障壁)の有無をチェックしてみてはどうでしょうか。
自分以外の人の視点で見ることの大切さ
『弱視の人に出会う本 (バリアフリーブック―見えにくいってどんなこと?)』 共用品推進機構/編集 小学館
こちらは、『弱視のおばあちゃん まちを行く』という漫画がメインとなっていて、最後の方に少し弱視について理解を深めることの出来るコラム等が載っています。漫画部分では、弱視であるおばあちゃんから見た社会が描かれていて、おばあちゃんと一日一緒に街を歩いた孫は、誘導ブロックの上に止められた自転車や、見えにくい料金表、ふちがはっきり見えない階段などを初めて危険なものだと認識します。そして、帰宅後、みんなのことを考えて工夫をしていけば、もっとよくなると思うことがいっぱいあったと両親に伝えるのです。障害のある人にとって住みやすい街は、障害のない人にとっても住みやすい街であるのだと気づくことができ、このお話は終わります。自分以外の別の人の視点に立ってみることで、「あれ?」と、何気ない光景を疑問に感じ、気づける人になりたいという気持ちが芽生えることが出来る本です。
バリアフリーを考える
『新しい 心のバリアフリーずかん きみの「あたりまえ」見直そう! (見る知る考えるずかん)』 中野 泰志/監修 ほるぷ出版
タイトルにもなっている「心のバリアフリー」とは、「私たちのなかにある、”気づかない”という心のバリアを取りはらい、バリアフリーの社会を実現するために行動すること」(p.4)を言い、この本には、そういった「心のバリアフリー」によって、みんなが同じようにいきいきと活動できる社会を目指していくためのヒントが沢山載っています。町の中の色々なシーンを切り取って、そこからそれぞれのシーンに見られる問題点や解決策を探っていき、周囲の人はどのようなアクションを起こすことが出来るのかまでも詳しく書かれています。又、外からは分かりづらい、発達障害についても沢山触れられていて、学校の中での「心のバリアフリー」についても理解を深めることが出来る内容になっています。絵も豊富で、小学生にも十分理解できる、バリアフリーの知識を深められる図鑑です。
ユニバーサルデザインを分かりやすく解説!
『トコトンやさしいユニバーサルデザインの本(第2版) (今日からモノ知りシリーズ)』 宮入 賢一郎/著 日刊工業新聞社
宮入賢一郎/実利用者研究機構 日刊工業新聞社 2014年12月
中学生や高校生が、ユニバーサルデザインについて調べるときに、必ず読んでいただきたい本がこちらです。今日からモノ知りシリーズは、どの本も、とても詳しく一つのことについて調べ上げて書かれてあるので、調べ学習に最適です。内容としては、バリアフリーとの違いについてや、「障がい」への誤解と理解、導入のプロセスと開発手法、各機関・各企業の取組み事例などが載っています。ユニバーサルデザインに対して、正しい理解と豊富な実例を沢山紹介してくれているので、これを基にして自分たちの身近にあるユニバーサルデザインを見つめて生活に生かすことへと繋げられるのではないでしょうか。
日常の中から考えよう!
『くらしのユニバーサルデザイン (知る! 見る! 考える! ユニバーサルデザインがほんとうにわかる本)』 小石 新八/監修 六耀社
こちらは、シリーズ全3巻で、「もののユニバーサルデザイン」、「まち・施設のユニバーサルデザイン」、「くらしのユニバーサルデザイン」と、様々な場面でのユニバーサルデザインについて考えられる作りになっています。ただUD製品を紹介するだけではなく、ユニバーサルデザインについて色々な角度からみることで、今後の課題を考えようというわけです。又、頁の最後の方には、ユニバーサルデザインを調べて学ぶことの意味についても触れていて、日本人も福祉の心をもっともっと高めていかなければならないと、再認識させられました。
考え方から社会への広がりまで!
『よくわかるユニバーサルデザイン (楽しい調べ学習シリーズ)』 柏原士郎/監修 PHP研究所
こちらの本では、まずはユニバーサルデザインを知るところから始まり、暮らしの中や、街の中のユニバーサルデザインについて知って知識を深めていけるようになっています。最後の章では、心とコミュニケーションのユニバーサルデザインについても触れられており、「考え方から社会への広がりまで」、しっかりと書かれています。
2020年のオリンピック・パラリンピック開催国として、社会全体で、ユニバーサルデザインの考え方を根付かせようとしている日本・・・誰もがわかるピクトグラムや、UDトークなど、誰にとっても理解しやすく、全ての人のために考えられたものは、例え言葉が通じなくてもコミュニケーション出来る大切なアイテムとなることでしょう。
4つのテーマに分けて、ユニバーサルデザインを紐解く!
『ユニバーサルデザインがわかる事典』 柏原 士郎/監修 PHP研究所
どりむ社/柏原士郎 PHP研究所 2009年05月
こちらも先ほど紹介した本と同じく、「ユニバーサルデザインとは何ぞや」から始まり、次の章から、より詳しく、「いろいろなかたちのユニバーサルデザイン」、「いろいろな使い方のユニバーサルデザイン」、「まちのユニバーサルデザイン」、「サービス・情報のユニバーサルデザイン」と、4つに分けて説明されています。かたちを少し変えるだけで、使い勝手が断然に良くなったもの、機能やかたちを工夫することで、身体に障害がある人にも利用しやすくなったもの等、ユニバーサルデザインの製品は、実は、私たちの身の回りにさりげなくあるのです。これからの社会は、色々な人の立場に立って、「利用しづらい場所」や「使いづらいもの」を見つけ、みんなの声からユニバーサルデザインに作り替えていかなければいけませんね。
みんなが利用するからこそ、誰もが安全安心に使える建物を!
『みんながつかうたてものだから』(絵本) サジ ヒロミ/著 偕成社
最後は、ユニバーサルデザインの建物を物語仕立てで解説している、絵本をご紹介したいと思います。市民合唱団の発表会へ行くことになった、まあちゃんは、その会場となっている建物で、お父さんからいろいろなことを教えてもらいます。車イスマークの話、みんなが使えるスロープのこと、点字ブロックを必要とする人がいることなど、まあくんにとって、それらは初めて聞くことばかりでした。障害がある人、無い人、様々な年代の人・・・みんなが使う建物だからこそ、誰もが便利で安全であることを意識して建てられたのだということが丁寧に描かれており、ユニバーサルデザインの考え方がよくわかる絵本です。
まとめ ~障害を知ることからユニバーサルデザインを考える~
いかがでしたか?この中で、気になる本はありましたか?
障害について書かれていて、小学生でも理解しやすい本は沢山あります。
中学生や高校生が知識を深めるために活用できる、ユニバーサルデザインの本も、意識して探せば沢山見つけることが出来ます。
少しでも気になった方は、書店や図書館で、ぜひ、現物を開いて内容をご確認してみてください。私がこれらの本から得た”気づき”以外にも、きっと、様々なメッセージを作品から感じ取って頂けるのではないかと思います。
この記事が、本を必要としている全ての人にとって、役立つものとなりますように・・・。