目次
- 1 達成感を味わえる作品やミステリーに挑戦してみよう。
- 2 高学年に司書がおすすめする、児童書10選
- 2.0.1 『都会のトム&ソーヤ』はやみねかおる/作 にし けいこ/イラスト 講談社
- 2.0.2 『暗号クラブ』ペニーワーナー/作 ヒョーゴノスケ/イラストKADOKAWA
- 2.0.3 『ヤング・シャーロックホームズ』アンドリュー・レーン/作 田村 義進/翻訳 静山社
- 2.0.4 『ぼくらの七日館戦争』宗田 理/作 ポプラ社
- 2.0.5 『ハリー・ポッターと賢者の石』J・K・ローリング/著 松岡 佑子 /翻訳 静山社
- 2.0.6 『二分間の冒険』岡田 淳/作 太田 大八/イラスト 偕成社
- 2.0.7 『モモ』ミヒャエル・エンデ/作・絵 大島 かおり/翻訳 岩波書店
- 2.0.8 『十五少年漂流記』ジュール・ヴェルヌ/作 波多野 完治/翻訳 新潮社
- 2.0.9 『十年屋』廣嶋 玲子/作 佐竹 美保/イラスト 静山社
- 2.0.10 『ジュニア空想科学読本シリーズ』柳田 理科雄/著 KADOKAWA/メディアファクトリー
- 3 読み応えのある本に出会えた時の喜びを感じて。
達成感を味わえる作品やミステリーに挑戦してみよう。
高学年は、いよいよ中学生になるための準備をしなければいけません。
勉強はもちろんのこと、精神面も、大きな成長が期待される学年です。
最上級生として、今一度、自信をつけさせてあげたいものですが、デリケートな年齢ということもあり、なかなか親の思う通りにいかないのが、もどかしいところですよね。
この記事でご紹介している10冊の児童書の中には、小学生には少し読み切るのが大変なものもあえて含めています。
これらに挑戦してみて、最後まで読めた時の達成感を、ぜひ、味わってほしいという思いを込めて、今回、10冊の中に入れることにしました。高学年ともなれば、謎解き、ミステリー物も挑戦してみると良いかも知れません。
読み切ったことが自信となって、読書をする時間が、もっと特別で、有意義な時間となりますように・・・。
高学年に司書がおすすめする、児童書10選
『都会のトム&ソーヤ』はやみねかおる/作 にし けいこ/イラスト 講談社
ある日、同じクラスの創也の秘密を知ってしまった内人。それから彼の単調で退屈だった毎日は、劇的に変わり・・・。
この作品を初めて読んだ時、子どもの頃「スタンド・バイ・ミー」(原作はスティーヴン・キング著)の映画を見て、心の底から、得体の知れない感情がぶわっと溢れてきた時のことを思い出しました。
大人になった今だからこそわかることですが、あれは、本音でぶつかり合える、男の子たちの友情と、退屈な日常とは真逆の冒険に対する「憧れ」の感情だったのだと思います。
口を開けばTVゲームの話ばかり、隙あらばYouTubeを見ようとする、そんな我が子には、もっともっとこういうワクワクできる作品と出会って心動かされてほしいな~と、感じずにはいられません。
中学生コンビが大活躍する、爽快な青春冒険譚に、誰しもがきっと憧れを抱くはず。
『暗号クラブ』ペニーワーナー/作 ヒョーゴノスケ/イラストKADOKAWA
クイズや謎解きが好きな子にお勧めなのがこちら。
物語上に出てくる暗号を、読者も一緒になって解くことが出来るので、楽しみながら読み進めていくことが出来ます。
ストーリーは、暗号クラブの仲間たちが事件に遭遇し、そこに残されていた暗号を解読して事件を解決に導いていくといったものですが、この暗号が、結構、難易度高めです。
ミステリー物としてもしっかりしていて、楽しめる作品なので、子どもたちはさくさくとテンポよく読んでしまえるようですよ。
『ヤング・シャーロックホームズ』アンドリュー・レーン/作 田村 義進/翻訳 静山社
こちらは、あのシャーロック・ホームズの少年時代を描いた<コナン・ドイル財団>も公認の作品です。
著者であるアンドリュー・レーンは、自他ともに認めるコナン・ドイルマニアだそうで、そんな事前情報を受けて、少し期待をし過ぎて読んでしまいました・・・。
ここに出てくるのは、あくまでも14歳の頃のホームズであり、頭脳明晰なホームズを思い描く原作ファンには、幾分か物足りないかも知れません。
14歳のホームズは、好奇心旺盛で、考えるより体が先に動いてしまうタイプ。
それ故に、アクションシーンが多く、推理ものというよりは、まるで少年漫画を見ているような、ハラハラドキドキ感が楽しめるストーリー運びとなっているので、小学生にわかりやすく、あっという間に読み終えてしまう一冊です。
『ぼくらの七日館戦争』宗田 理/作 ポプラ社
こちらは、中学一年生の同じクラスの子どもたちが、大人たちに対して本気でぶつかっていく痛快エンターテイメント作品です。
テレビや警察、市長選挙汚職事件まで絡んできて、話はどんどん大ごとになっていきますが、話の根底にあるのは、「子どもを管理下に置きたがる大人たちVS個々として認めてもらいたい子どもたち」という構図。
現代に置き換えるとスマートフォンの存在が邪魔をして、話に無理が生じてしまいますが、この頃ならではのアナログな作戦が読んでいるとなんともワクワクします。
『ハリー・ポッターと賢者の石』J・K・ローリング/著 松岡 佑子 /翻訳 静山社
亡き母親の姉夫婦であるダーズリー家に育てられて、11歳の誕生日まで、肩身の狭い思いをしながら生きてきたハリー・ポッター。
11歳の誕生日、ハリーの元に届いた一通の手紙から物語は動き出します。その手紙は、なんと、魔法学校への入学許可書だったのです。本当の自分を見つけるために、魔法学校ホグワーツへ行くことに決めたハリーを待ち受けていたものとは・・・。
映画化のおかげで、本を読まない子にもすっかり有名になったハリー・ポッターシリーズですが、本はまた映画とは違うワクワク感がありますね。
その厚みから、読み始めることに躊躇してしまいがちですが、一度読みだすと、魔法学校の歓迎会や、温かなクリスマスのシーンなど、ファンタジーの魅力がいっぱいで、いっきにその世界に引き込まれていきます。
特に、一巻は、シリーズの中でも、この魔法学校の様子が一番詳しく描かれていて、想像力を掻き立てられます。
『二分間の冒険』岡田 淳/作 太田 大八/イラスト 偕成社
ある日、小学6年生の悟は、しゃべる猫”ダレカ”の<見えないとげ>を抜いたことから、そのお礼として異世界へ飛ばされてしまいます。そこで、時間にすれば「たった2分間」の壮大な冒険をすることになるのですが・・・。
とにかくテーマが深い、こちらの作品。
大人はいろいろ考え始めると止まらなくなってしまいそうなので、小学校高学年くらいの子が読むのが、一番純粋に物語そのものを楽しめるのではないかと思います。
どこか哲学的で、物語を通して何らかのメッセージを読者に投げかけているようにすら感じますが、子どもの目線で読むと、「伝説の剣」だったり、「竜との戦い」だったりが描かれていたりと、これはまぎれもない冒険ファンタジーです。
「たかが2分間」だけれど、「されど2分間」の冒険劇に、今の子どもたちも、ぜひ、酔いしれてもらいたいものです。
『モモ』ミヒャエル・エンデ/作・絵 大島 かおり/翻訳 岩波書店
町はずれの円形劇場には、「モモ」という名前の女の子が住んでいました。
モモと話すと、不思議なことに、なんとも幸福な心持になれるので、町の人たちはモモと過ごす時間が大好きでした。
ところが、<灰色の男たち>の手によって、そんな幸福な<時間>が盗まれてしまうという事態になって・・・。
”今の社会は、効率や結果ばかりを追い求め過ぎて、何か大切なことが失われていないか?”
そんな、エンデの声が聞こえてきそうな作品です。
大人になって、時間に追われる毎日を送るようになった今、この作品を改めて読むと、一番大切なことを思い出すことが出来ました。
大切なのは、出勤時間に遅れないように子どもを急かすのではなくて、
子どもと一緒にいられる時間を、大切に過ごすこと。
誰が読んでも、この本は、その人にとって、大切なことは何かを思い出させてくれるはずです。
『十五少年漂流記』ジュール・ヴェルヌ/作 波多野 完治/翻訳 新潮社
こちらは、ひょんなことから漂流してしまい、子どもたちだけで無人島生活をすることになってしまった壮絶な物語で、1888年に刊行されてから、長きに渡り、少年少女に読み継がれてきた名作です。
大統領制度を作ったり、役割分担を考えたりと、とても頼もしい子どもたちですが、時に仲間割れが勃発したり、いざこざも起きつつ、互いに励ましあって生き延びていきます。
この話を面白くしているのは、何と言っても、彼らのスペックの高さ。
持っている知識を最大限に生かして、生活水準を保つ姿は、大人顔負けです。
登場人物と同じ年くらいの子どもたちに、ぜひ、読んでいただいて、
ピンチから切り抜けるために、いざという時に大切な、思慮深さだったり、勤勉さだったりを、この作品から学んでもらいたいものですね。
とは言っても、私は無人島で生活なんて、2日と持ちませんが・・・。
『十年屋』廣嶋 玲子/作 佐竹 美保/イラスト 静山社
十年屋では、大切で壊したくなかったり、捨てられなかったりするモノを、10年間だけ、自分の寿命1年と引き換えに預かってくれます。一巻のサブタイトルに、「時の魔法はいかがでしょう?」と、あるように、そこは魔法が存在する世界。どこか謎めいた物語の雰囲気は、同じ作者さんの以前紹介した『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』と似たものを感じます。
十年屋を訪れた6人のお客さんが、それぞれ全く異なるストーリー展開なので、結末を楽しみに読み進められることが出来ますよ。
短編5作品なので、長編を読みなれていない小学生にも読みやすい一冊です。
『ジュニア空想科学読本シリーズ』柳田 理科雄/著 KADOKAWA/メディアファクトリー
あのアニメや、漫画の少し気になる部分を、科学的に、くそ真面目に検証したら、とっても笑える結果になるのです。
この本では、空想で考えられて誕生した、アニメや漫画のあれやこれやが、現実は可能なのかを、とことん突き詰めて、頭の中だけで検証しています。
空想世界の話を無理やり現実に持ってくるわけですから、なかなか思うようにはいきません。
けれども、これまで人類は、空想したことを「ああでもない、こうでもない」と検証を重ねてきたことで、二足歩行のロボットを作り出し、携帯一つでの買い物を可能にし、飛行機で空を飛べるようになったのです。
そう考えると、ぷぷっと笑いながら読んでいるだけで、子どもたちの「知ろうとする気持ち」を育てている本作は、子どもたちにとって、科学を身近に感じられるきっかけに大いになると思いませんか?
「科学する心は、空想する心から」。なるほど、奥が深いです。
読み応えのある本に出会えた時の喜びを感じて。
いかがでしたか?
厚みのある本に尻込みしたり、うちの子に読めるかしらと、消極的になった親御さんも、中にはいらっしゃるかもしれませんね。
では、そんな時は、こう考え方を変えてみてはどうでしょうか。
「これらの本を読み終えた時、自分(もしくは自分の子)は、これを読んでいない人の、数倍成長を遂げている。」
これは大げさでも何でもなくて、事実なのです。
達成感は、人を強くします。達成感を味わった人は、またその高揚を味わいたくて、高みを目指すようになり、結果として大きく成長していくのです。
読み応えのある本に出会えた時、
「読み切ってやるぜ!」とほくそ笑んだり、「成長できるチャンス!」と喜んだり出来るようになれば、
読書家であると名乗ってもいいかも知れませんね。
兎にも角にも、面白い本であれば、さくさくと読めるので、ページ数は、さほど気にもならなくなりますよ。