今年の干支を絵本で読もう。
十二支の中の”丑(うし)”
2021年の干支は、丑(うし)年です。
十二支の中で順番は二番目ですが、ねずみのように姑息な手を使っていない分、実質、一番早く神様の御殿に到着したと言ってもいいウシ。
中国では、昔から方位をこの十二支の並びで表していて、牛と寅の場所は鬼門にあたる「北東」になります。
そのため、鬼の姿は昔から、寅模様のパンツを履いていて、頭にはウシのツノがあるそうですよ。
鬼のツノが干支と関係していたなんて、面白いですね。
人とウシとのかかわり
ウシは、ことわざや慣用句に多く使われていることからも分かるように、ねずみ同様、昔から人間との関わりが濃い動物です。
しかし、家畜として人間の生活に役立ち、人間が生きていく上でとても大切な存在であったことから、人間の意図しないところで関わってきたねずみとは、当然、その価値は大きく違っていたようです。
絵本においても、悪く描かれている印象の少ないウシ。今回は、そんなウシさんが出てくるお話を15冊選りすぐって集めてみましたので、ぜひ、この機会に、お子さんに読み聞かせてあげてください。
ウシが出てくるおすすめの絵本 15選
『うし』内田 麟太郎/詩 高畠 純/絵 教育画劇
うしの後ろにうしがいて、そのまた後ろにもうしがいて、最後は・・・という、文にすると何とも単純なお話ですが、この内田麟太郎さんのシンプルな詩に、高畠純さんの個性的な絵が旨い具合に合わさって、素敵な一つの作品になっています。高畠さんの描くうしは表情が面白くて、これが淡々とした詩と合わさると無性に笑えてくるのです。
この絵本は私が読むより、絵本を読みなれていない人に淡々と読んでもらった方が、絶対子どもにウケる!と思い、主人に読んでもらったところ、子どもたちは大笑い。
その後も、子ども二人で何度も読み返していました。
うししか出てこないのに、なんでこんなに面白いの~。
またお父さんに読んでほしいっ!
→3,4歳児におすすめの絵本20冊
『うしのもーさん』風木 一人/作 西村 敏雄/絵 教育画劇
大きくて力持ちの、うしのもーさんは、「せなかに のっけてよ」と言われれば、すぐに誰でも背中にのせてあげます。
もーさんの背中は沢山の動物たちでいっぱいになりますが、そんな中、もーさんはある願いをぼそっとつぶやくのです。
「ぼくも……のってみたいなあ」
見たことある絵だな~と思っていたら、我が家にある絵本『うんこ!』(サトシン/作 文溪堂)の絵を担当されていた西村さんが絵を描かれていました。
最初に紹介した『うし』(内田 麟太郎/詩 教育画劇)や、『おおきなかぶ』(A・トルストイ/再話 福音館書店)や『てぶくろ』(エウゲーニー・M・ラチョフ/絵 福音館書店)などにも見られる、”繰り返し”が子どもたちは大好きですよね。決して、続きが気になってページを捲る手が止まらないわけでも、大きなオチがあるわけでもなく、終始のんびりと続いていくお話ですが、最後はどうなるのかというわくわくした気持ちや、ちょっぴり予想外の展開に思わずニヤッと笑ってしまうぐらいが、子どもたちにちょうど良い安心感を与え、飽きずに何度も読まれていくのではないでしょうか。
必死な表情の動物たちがかわいかった!
もーさんの背中に乗ってみたい。まだ乗れるかな・・・。
『ウシバス』スズキコージ/作・絵 あかね書房
人々がウシバス停で待っていると、定刻にウシバスがやってきて乗車しますが、このウシバス、なかなか一筋縄ではいかないようで、乗っている人は振り飛ばされそうになるやら、海に沈むやら、踏んだり蹴ったり。
説明書きは一切なく、「グルグル」や「バシバシ」など理解しがたいセリフが続くので、読み聞かせにはけっこう難易度高めです。例えば読み聞かせを始める前に、「何人がウシバスにずっと乗っていることができるかな?」なんてクイズを出してお子さんを引き付けておくのも一つの手かもしれませんね。
色使いがアーティスティックで、現代アートを思わせるような、不思議な世界に触れられる作品です。
乗ってる人おかまいなしのウシが面白い。
必死につかまっている人たちは、ウシバスの恐ろしさを知ってて乗ってきたのかな。笑
ウシバスこわい。ぜったい乗りたくない。
『こたつうし』かわまた ねね/さく 長谷川 善史/絵 世界文化社
寒くてこたつから出なくなったうし。その名も”こたつ”と”うし”で、”こたつうし”となったうしのお話です。
こたつうし母さんの温かいこたつを求めて、子どもたちが一人、また一人と入ってきて、こたつはぎゅうぎゅう。
そのうちケンカが始まって、こたつうしは立ち上がり・・・。
この絵本を読んでいて、思い浮かぶのは、布団の中で起きるのを渋る娘の顔。
お兄ちゃんは6時ピッタリに目覚ましで起きれるのに、妹ちゃんは布団をはぎ取ってもはぎ取っても、引っ張って潜り込む。眠り姫というか、ふとん虫。
本作を読みながら、「こたつうしは妹ちゃんみたいだね~」と、お兄ちゃんと笑いました。
このこたつうしのように、こたつに入ったまま動けたら、
どんなに幸せか・・・。
こたつうしに、なりたい。
『まめうし』あきやま ただし/作・絵 PHP研究所
こちらは、まめうしくんの一日を絵本にした作品です。
豆粒ほどの小さい子うしですが、冒険が好きだったり、ぶたさんの背中をかいてあげたりと何かと頼もしい、まめうしくん。読んでいると、心がほっこりとしてきます。
とりさんやありさんを助けてあげる、優しいまめうしくんに子どもたちはニコニコして聞いていましたが、物語後半に出てくる、まめうしくんの夢には、声を出して笑っていました。
子どもたちは、まめうしに興味津々です。
小さくても毎日が楽しそう。
途中に迷路みたいなページがあって、面白かった。
まめうしくん、かわいいっ!!(ハート)
『くいしんぼうのはなこさん』石井 桃子/作 中谷 千代子/絵 福音館
おひゃくしょうの家の牛、はなこは、食いしん坊でわがままな牛です。干し草をあげれば「ほしくさは いや」、とうもろこしの粉をやれば「それはいや、あおい クローバーが ほしい」と言います。そんなはなこも大きくなり、春がやって来ると牧場へ連れていかれるのですが、牧場生活でわがままが直るどころか、ますますやりたい放題で、その風貌はまるで大きなアドバルーンのようになってしまいました。そしてとうとう、獣医さんがやってきて・・・。
このお話は、牛の話には珍しく、どうしようもなくわがままな牛が出てくるお話です。
この牛のわがままっぷりときたら、読み聞かせをしていると、横から「ほかの牛がかわいそうだね・・・。」と、はなこ以外の牛を同情する言葉が聞こえてくるくらい、酷いもの。
このわがままな牛がどうなっていくのか、子どもたちは最後まで真剣に耳を傾けてくれました。
自分の事しか考えないで、わがままばっかり言ってると、いいことない。
このうし、いじわるでイヤ。
『おかあさん牛からのおくりもの』松岩 達/文 冨田 美穂/絵 北海道新聞社
こちらは酪農家の一日を通して、私たちの手元に牛乳などの乳製品が届くまでの流れを知ることが出来る絵本です。
とても詳しく教えてくれているので、物語の絵本しか読んでもらったことのないお子さんには少し難しいと感じられるかもしれませんが、わかりやすい絵で描かれた解説があるのでそちらを見ながら読み聞かせてあげると理解を深めることが出来るのではないでしょうか。
牛のお乳やお肉が私たちの手元に届くまでには、酪農家さん、獣医さん、授精師さん、酪農ヘルパーさん、牛乳を運ぶローリーの運転手さん、牛乳工場やお肉の工場で働く方々、ほかにも多くの皆さんが関わっていることがこの絵本を読めばわかります。この後に紹介させていただく『いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』(坂本 義喜/原案 講談社)と合わせて読めば、牛と関わる仕事をしている方が普段どういう気持ちで牛と関わっているのかも良くわかって感慨深いです。
うしが草を食べてウンチをして、そのウンチを肥料にして草が生えてうしがその草を食べて、ウンチをして・・・。
なんか、すごいな~!ムダがない!
牛におっぱいが4つもあるって!
ねこには8つっ!!!
『いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』坂本 義喜/原案 内田 美智子/作 講談社
前半は、食肉センターに勤める坂本さんの息子さんの参観日エピソードが中心となっていて、坂本さんの「牛を解く(牛を殺す)」仕事への葛藤が描かれています。後半は、牛農家の女の子と、大切に育てられたみいちゃん(牛)のエピソードから、「この牛だけは解きたくない」と坂本さんが葛藤する気持ちが描かれています。
どちらも「牛を解く」食肉センターでの仕事への葛藤がメインに描かれていますが、この絵本を読んでいると、ご飯を食べる前にこれまで形式的に言っていた「いただきます。」という言葉の意味が、改めて心に響きます。子どもたちに「命をいただいて、命を繋いでいる」ということを知ってもらえる良い機会なのではないでしょうか。
これからはもっと、「いただきます」をちゃんと言おう!
残さず食べよう!
うしも泣くんだね・・・。
『きみの家にも牛がいる』小森 香折/著 中川 洋典/絵 解放出版社
まず表紙の絵を見ただけで、子どもたちに読む前から質問の嵐だったこの絵本。
私たちの身の回りにある、牛が原料となっているものにはどんなものがあるか、それらを作る為には牛から命をもらっているのだというメッセージがたくさん詰まっていて、子どもたちは興味津々で最後まで聞いてくれました。
ページ配分としては、牛を解体する、食肉市場での作業についての説明がやや多めなので、乳牛というより肉牛の話が中心です。
最後のページには、家族で朝ごはんを食べている2・3ページの絵に、牛が原料のものがどれだけあったかがわかる絵が載っているので、子どもにクイズを出すことも出来そうですね。
食べ物以外にも身近なものに牛が使われていることが、子どもたちには衝撃だったようです。
グミにも牛が使われていることに驚いた。接着剤にも・・・。
知らないことばかりだった!
『うしさんおっぱいしぼりましょ』穂高 順也/作 竹内 通雅/絵 ポプラ社
現実的な絵本の紹介が続いたので、次は思いっきりメルヘンな絵本の紹介をしたいと思います。
こちらは、とびきり美味しい牛乳を搾ってくれる、ちょっと不思議な「まきばのぎゅうにゅうやさん」の物語です。
「まきばのぎゅうにゅうやさん」の、牛のお乳が飲みたい人は、お金を払わなくていい代わりに牛になにか食べ物をあげることが条件です。みんなは、イチゴをあげたり、バナナをあげたり、豆をあげたり、いろいろなものを牛に食べさせるのですが、ついにはあんなもの、こんなものまで食べだして・・・。
お次はなにを??と、次に牛が食べるものを想像しながら読み進めていける一冊です。
それを食べた牛のお乳から何が出てくるのかを、親子で当てっこするのが楽しいですね。
「♪うしさん おっぱい しぼりましょ♪」のフレーズに子どもたちはすっかりハマったようです。
うしさん おっぱい しぼりましょ~♪
ぼくなら氷を食べさせるわ~。
うしさん おっぱい しぼりましょ~♪
わたしならイチゴと氷~。
『ノロウェイの黒牛』中川 千尋/文 さとう ゆうすけ/絵 BL出版
こちらは、ノロウェイの黒牛に魅入られた娘の物語です。
身の毛もよだつ怪物と言われるノロウェイの黒牛と結婚してもいいと姉たちに語っていた娘の前に、ある朝、その発言通り、本当にノロウェイの黒牛が娘を迎えにやってきてしまいました。娘は黒牛の背に乗り、果てしない旅に出ることになりますが、やがて、黒牛にかけられた呪いを知ってしまい・・・。
さとうゆうすけさんの絵がとても美しいので、子どもたちはすぐにこの絵本を気に入ったようです。特に下の娘は、この絵本を読んでからと言うもの、髪をくくる時にはこの絵本を持ってきて、「このお姫様と一緒の髪型がいい~。」と言うようになりました。「恐ろしい黒牛は、実は呪いをかけられている・・・」というよくある設定も乙女心をくすぐったようで、保育園児が読むには字も小さく、ページ数も多いにも関わらず、一生懸命自分で読んでいました。
日本以外のほかの国にも、いろんな昔話があるんだ~。
もっといろんな国の昔話が聞いて見たくなった!
お姫様が可愛かった~。
最後がよかったねぇ!
『はなのすきなうし』マンロー・リーフ/さく ロバート・ローソン/絵 岩波書店
こちらは、花の匂いを嗅いでいるのが大好きな、フェルジナンドという子牛のお話です。
他の牛たちのように飛んだり跳ねたりするよりも、草の上に座って静かに花の匂いを嗅いでいるほうが好きなフェルジナンドは、大きくなっても、他の牛たちのように角でつつき合ったり、頭をぶつけあったりせず、変わらず花の匂いを嗅ぐのが好きでした。
そんなある日、闘牛に出す一番大きな気性の荒い牛を探しに牛飼いたちがやってくるのですが、ひょんなことからフェルジナンドが牛飼いたちの目に留まってしまい・・・。
本来ならカタカナ表記であるべき、国の名前や牛の名前がひらがなで書かれていたり、文の並びが独特で、読む側は少し読みづらさを感じるかも知れませんが、子どもたちは最後まで楽しんで聞いてくれました。
闘牛場へ連れていかれるフェルジナンドを見て、「かわいそうだね・・・。」としんみりしている我が子に、こういう気持ちがわかるようになったのかと、親としてしんみり。
花が好きな牛がいてもいいし、仮面ライダーが好きな女の子がいてもいい、ラブパトリーナが好きな男の子がいてもいいよね~なんて読んだ後、親子で話しました。
最後のページの「大闘牛フェルジナンド」と書かれたポスターの絵が面白かった。
本当はあんなのじゃないのにね。笑
フェルジナンドが、もとの場所に帰れてよかったね~。
よかったぁ・・・。
『わらのうし』ワレンチン・ゴルディチューク/作 内田 莉莎子/訳 福音館
こちらは、貧乏なおじいさんとおばあさんの、ウクライナ版わらしべ長者のようなお話です。
タールづくりと糸を紡いでなんとか生計を立てていた貧乏な老夫婦は、ある日、おばあさんの提案でわらの牛を作ることにしました。わらで体を作り、横っ腹にたっぷりとタールを塗った、わらの牛です。
翌朝、おばあさんは、このわらの牛と丘に登りますが、おばあさんが居眠りをしているすきにクマがやってきて・・・。
この絵本を読んでいると、「タールってなに?」と子どもからの質問。
そうですよね。大人の私もよくわかっていないのだから、子どもがイメージできるわけがありませんよね。絵によると、なにやら黒く、くっつくものらしいことはわかるのですが・・・。よく見ると、絵本のページの右下の方にちゃんと説明して下さっていました。この説明から、さらにイメージしやすくなったようで、無事に物語に入り込むことが出来たようです。
ストーリーの面白さはもちろんのこと、『おおきなかぶ』や『てぶくろ』などの名訳で知られる内田莉莎子さんが翻訳を担当され、ウクライナの代表的な画家であるワレンチン・ゴルディチュークさんが長い時間を費やして丁寧に作品にしていった絵本なので、子どもたちに媚びない昔話の面白さがこの絵本には詰まっています。
動物たちがおじいさんを裏切るんじゃないかと思ったけど、
そうじゃなくてホッとしたよ。
キツネだけ、なんかかわいそうだった。(←この発言の真意は不明。)
でも最後はみんなよかったね。
『おばあさんのひっこし』エドナ・ベッカー/作・絵 神沢 利子/訳 福音館
ある日、おばあさんは古くなった自分の家を引っ越すことを決心します。
そうと決まれば、二匹のねこと、ろばと、牝牛を引き連れて、さっそく、すてきな新居探しに出かけました。
「わたしゃ、ここに すみたいね」すぐにすてきな空き家が見つかりましたが、ここで少々困ったことが・・・。
動物たちの意見もしっかりと聞き入れる、おばあさんの新居探しが気になって仕方がない物語です。
読んだ後に、「意味わかった?」と子どもたちに聞いてみたところ、上のお兄ちゃんはすぐにわかったようでニヤニヤ笑っていました。下の子は、お兄ちゃんの説明を聞いて「そういうことか!」とようやく納得。意味がわかるとこの話の面白さに気づいたようで、その後、何回も自分で読んでいましたよ。
ちょっとした旅行だ!笑
この話、面白かったね~。
この話大好き!
『おりこうなアニカ』エルサ・ベスコフ/作・絵 福音館
ある日、アニカは、壊れた牧場の柵から牝牛のマイロスが逃げ出してしまわないように、牧場でマイロスの見張りをすることになりました。ところが、見張っていた甲斐もなく、マイロスはあっという間に壊れた柵から抜け出してクローバー畑へ飛び出して行ってしまい・・・。
いぬに協力してもらったり、小人たちの手を借りたり、みんなに助けてもらいながら困難を潜り抜けるこのお話は、誰かを思う温もりに溢れ、優しさに包まれています。エルサ・ベスコフさんの描く絵からも温かみが伝わってくるようで、子どもたちは描き込まれた絵に釘付けになってみていました。特に、しっかり者のアニカが小人の子どもたちに囲まれて、「パンケーキを一緒に食べよう」と誘われて困っているシーンを微笑ましそうに眺めていましたよ。
別の話にも出てきたけど、うしがクローバー好物だって、今回はじめて知ったよ!
アニカには友達がたくさんいるね!
ウシが出てくる絵本
いかがでしたか?
ウシが出てくるお話は、大胆な絵柄でインパクトのあるものが多く、お子さんの好奇心をくすぐりますが、中には、『いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』や『きみの家にも牛がいる』のように、大事なことに気づかせてくれたり、『ノロウェイの黒牛』や『わらのうし』のように、昔話として人々の心に残り、愛され続けた名作もあり、読み聞かせにはピッタリです。
この機会に、ぜひ、お子さんにウシが出てくるお話を読み聞かせてあげてください。